論説:児童労働

許容できないものをなくす時は今。一緒に取り組めば児童労働を終わらせることができる

 国際連合は2021年を児童労働撤廃国際年と宣言しました。麻田千穂子ILOアジア太平洋総局長は今こそ変化の時であると説明しています。

記事・論文 | 2021/05/17
麻田千穂子ILOアジア太平洋総局長

 アジア太平洋地域には6,200万人の児童労働者が住んでいます。と書くのは簡単ですが、理解するのははるかに困難です。6,200万人の子ども。この数の大きさをちょっと考えてみて下さい。フィリピン、ベトナム、日本の14歳未満の子どもを全て合わせた数にほぼ相当します。その上、そのうち2,800万人は鉱業や農林漁業、建設業といった産業部門において、危険で有害な労働に従事し、日々命や健康を危険にさらしています。

 しかし、くず翡翠を拾いつつ自分の家を買うことを夢見ているミンミン君、使用済みペットボトルを回収しつつ教育を望んでいるシャヒード君、ミシンを操作して長時間を過ごしつつも医師に憧れているビティちゃんといったように、この膨大な数の裏にいる一人ひとりの子どもは、それぞれが未来に向けた希望と夢を抱いています。

 児童労働はたとえどこで起ころうとも、子どもの教育、技能習得、そして貧困、不完全な教育、質の低い仕事の悪循環を克服する将来的な可能性に破壊的な影響を与えます。

 今日の世界になおも児童労働がしつこく存在することは許容できません。ガイ・ライダーILO事務局長が先般言っていたように、「社会に児童労働が存在する場所はない。これは子どもの未来を奪い、家族を貧困に留める」のです。

 良いニュースは、地球全体では過去20年間でほぼ1億人の子どもが児童労働から取り除かれ、世界の児童労働者数が現在1億5,200万人にまで減ったことです。

 数は減ったものの、この速度は大幅に鈍化し、新型コロナウイルスの世界的な大流行によって、達成された進歩の年月が逆戻りする恐れがあります。学校が休校になり、遠隔学習と経済危機の課題に阻まれ、多くの子どもが家計を支えるために児童労働に陥るかもしれません。

 国際連合は2021年を児童労働撤廃国際年に宣言しました。児童労働反対世界デー(6月12日)に合わせて6月10日には児童労働者数に関する新たな世界推計が発表されます。新型コロナウイルスの影響は続いているものの、下降傾向が続くことを切に願います。

 国際年の主目的は国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット8.7、つまり「子どもの徴兵及び子ども兵士の利用を含む最悪の形態の児童労働の禁止と撤廃を確保し、強制労働を根絶し、現代の奴隷制と人身取引に終止符を打つ即時の効果的な措置を講じ、2025年までにあらゆる形態の児童労働に終止符を打つ」という目標の達成に向けた政策対応を育み、イニシアチブを取ることです。

 2021年1月に開かれた国際年のグローバル開幕式典において、国連諸機関、各国政府、企業・市民団体が2021年中に取り組みのスピードアップを図り、児童労働はなくせるとの明確な信号を発することを公約しました。

 「児童労働の終結に向けて行動を起こそう」のスローガンの下、各国政府その他のパートナーらは2025年に至る道を開く行動の誓いを示しています。

 成功を収めるには、児童労働の根本原因に対処し、明確な決定を下し、予算を動員する必要があることを過去の経験から私たちは知っています。質の高い教育、社会的保護がすべての人に届き、親がディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を得られるよう確保する、より整合性のある行動が求められます。

 各国政府、企業、市民社会その他のパートナーは、児童労働根絶の重要性に関して世間の意識を高め、好事例と学んだ教訓を各国、地域、世界レベルで共有することが奨励されます。年間を通じて開かれる数々のハイレベルイベントは、政府や社会的パートナーである労使団体、市民社会に関与の可能性を与えるものとなるでしょう。

 この活動は児童労働、強制労働、人身取引、現代の奴隷制の終焉に向けた地球規模のパートナーシップである8.7連合が支援しています。8.7連合は、率先して取り組みを行う22の「草分け国」(ネパール、スリランカ、ベトナム、フィジーといったアジア太平洋諸国を含む)、そして200以上のパートナー団体と積極的に協働し、活動の加速化、知見共有、革新的な解決策の現地実践を進めています。子どもの声に耳を傾けつつ、学校や家族、地方公共団体、地元の組織などと協力してこれらの解決策を立案していくことが重要です。

 国際年はパートナーを集結させ、互いに学び合い、効果が立証された革新的な措置を実践して子どもの権利を保護するまたとない機会を提供しています。

 全ての状況に通用するたった一つの解決策というものは存在しないかもしれません。それぞれの対応策は児童労働がなおも起こっている非常に多様な環境に適応させる必要があります。一つ一つの行動は、それが政府によるものであろうと個人によるものであろうと、子どもが子ども時代を享受できる世界の基礎を築く助けになります。どうかこの活動に参加して、今、行動を起こし、皆の協力をもとに2025年までに児童労働に終止符を打とうではありませんか。


 以上は麻田千穂子ILOアジア太平洋総局長による2021年5月17日付のバンコク発英文論説の日本語版です。