新着資料:中南米・カリブの労働概観

新型コロナウイルスの世界的大流行の中で中南米・カリブで就業者が2,600万人減

記者発表 | 2021/04/08

 新型コロナウイルスの世界的大流行の結果、中南米・カリブ地域では就業者が2,600万人減り、2021年は感染拡大の新たな波と遅々としたワクチン接種の歩みによって悪化している複雑な雇用景観の中で年が明け、労働市場の回復の展望は不確実さを増していると、この度発表されたILOの新たな技術資料は記しています。

 ILO中南米・カリブ総局から出された2021年中南米・カリブ労働概観シリーズの技術資料『The employment crisis in the pandemic: Towards a human-centred job recovery(新型コロナウイルスの世界的大流行の中での雇用危機:人間を中心に据えた雇用回復へ・英語)』は、就業率と労働力率の指標が急落し、その後部分的に回復した2020年第2四半期に労働市場に破壊的な影響があったことを強調しています。2019年に57.4%であった地域の平均就業率は2020年末までに51.7%に急落しましたが、これは約2,600万人の就業者減に相当し、その8割に当たる2,000万人以上が労働市場を去っています。このような労働力人口の大幅な減少は前代未聞であり、2020年の特徴です。対して、失業率は2019年(8.3%)から2020年(10.6%)の間にわずか2ポイントしか上昇しておらず、地域の労働市場が直面している困難の規模が部分的にしか反映されていません。

 就業者減に加え、中南米・カリブは世界で最も労働時間が減少した地域であり、人々の所得の8割を占める勤労所得も低下しています。

 昨年の新型コロナウイルスの影響についての最新のデータを紹介する技術資料に言及して、ビニシウス・ピニェイロILO中南米・カリブ総局長は、「より良い日常の探求には、仕事の世界における後退から回復する野心的な行動を要するでしょう」と説き、「2021年がより多くのより良い仕事を伴った景気回復とワクチン接種の年」となるよう、逆風の中でも行動を起こし、合意を形成する必要性を強調し、「今こそコロナ禍によって失われた仕事を再建し、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の新たな機会を形成する時」と呼びかけています。しかしながら、ピニェイロ総局長は同時に、「回復の追求に当たり、地域に以前から存在していた状況に取り組むことが不可避になるでしょうし、その状況こそ、コロナ禍の雇用に対する影響がなぜこんなに強かったかを理解するカギを握っています。コロナ禍以前から存在していた課題の多くが依然として残っており」、今はその取り組みが「より一層急務」になっているとして、地域に存在する課題の一例として、「高い非公式(インフォーマル)就業者率、財政的余地の少なさ、なかなか解消されない不平等、低生産性、社会的保護の適用の弱さに加え、児童労働や強制労働といったなおも残る問題」を挙げています。

 危機の中で公式(フォーマル)就業者とインフォーマル就業者のどちらも非常に顕著な減少を示していますが、前者の方が激しく、したがって新型コロナウイルスの流行が開始された最初の数カ月間においては特に、労働需要の幅広い崩壊の中、インフォーマル就業者率は一時的に低下しました。しかし、状況は既に変わりつつあり、資料をまとめたロクサナ・マウリッツィオILO地域労働経済専門官はコロナ禍以前から各国に見られた高いインフォーマル就業者率に上乗せされるインフォーマル化率の高い危険が存在することを指摘しています。得られる7カ国のデータを見ると、2020年後半の雇用回復はほぼ完全にインフォーマル就業者の伸びによって引き起こされており、全体の6割以上を占めています。

 マウリッツィオ専門官は2021年には労働力から抜け落ちた数百万人が市場に復帰する中、就業率が急上昇する可能性を指摘していますが、伝統的にフォーマル就業の機会の点でより大きな困難を経験してきた若者や女性、保有する資格が低い成人など、特定の種類の労働者集団のフォーマル労働不足がより顕著になる可能性も挙げています。そして、マクロ経済の崩壊がこういった一部の人口集団に不均衡に大きな影響を与え、地域の特徴である労働、社会に見られる格差、とりわけ男女間格差を拡大したと指摘しています。

 2021年の景気回復の見通しはささやかなものであり、まだ大いに不確実であるため、労働市場の決定的に重要な状況の可能な回復の期待については「非常に慎重であるべき」と専門官は説いています。

 ILOは2020年にまとめた政策枠組みで、◇経済と雇用への刺激、◇企業、雇用、収入の支援、◇職場における労働者保護、◇社会対話に頼った解決策探求の四つの主な柱を基礎とした回復戦略の策定を提案していますが、技術資料は、現在のように複雑なシナリオの下で雇用の回復を進めるには、「社会対話及び新たな合意、協定、協約の構築がかつてないほどふさわしいであろう」と強調しています。


 以上はリマ発英文記者発表の抄訳です。