児童労働撤廃国際年

ILOとAUがアフリカで児童労働撤廃国際年を開始:利害関係者間の協働増強に向けた道を敷設

 2021年3月31日に開かれたアフリカ地域における児童労働撤廃国際年の開始記念イベントは、アフリカ連合のアジェンダ2063とSDGのターゲット8.7の達成に向けた公約を行動へと移す呼びかけを発しました。

記者発表 | 2021/04/01
アフリカにおける児童労働撤廃国際年開始記念イベント(2021年3月31日・3時間10分28秒)

 国連総会は2019年に決議72/327を採択することによって全会一致で2021年を児童労働撤廃国際年に定めました。持続可能な開発目標(SDGs)はそのターゲット8.7で、強制労働を根絶し、現代の奴隷制と人身取引に終止符を打ち、児童兵士の利用や子どもの徴兵を含み、最悪の形態の児童労働の禁止と撤廃を確保し、2025年までにあらゆる形態の児童労働をなくす即時の効果的な措置をとることを加盟国に求めています。国際年に際し、強制労働及び児童労働と闘う国際社会は新型コロナウイルスの提示する課題に取り組みつつ、SDGsの達成に向けた歩みの加速化を図ることになります。

 アフリカには最新の推計で1億5,200万人とされる児童労働者の約半分が暮らしています。ILOとアフリカ連合(AU)は、2021年3月31日に、3時間のバーチャルイベントをもって、この大陸で児童労働撤廃国際年を開始しました。式典はアフリカ及び多国間機関の利害関係者がこの大陸における児童労働との闘いにおいて達成された歩みと残るギャップについて話し合う場を提供しました。さらに、アフリカが2063年までの達成を目指す開発目標であるAUのアジェンダ2063とSDGのターゲット8.7の達成に向けた公約を行動へと移す呼びかけが発せられました。インタビューや動画、発表といった一連の手段を通じて、児童労働との闘いの最前線に立つパートナーらから、AUの行動計画の実施にいかに貢献するつもりであるか、それぞれの介入活動や計画が示されました。

 AUのアミーラ・アル=ファディル保健・人道問題・社会開発委員は、アフリカ連合の10年間の行動計画は「野心的ながら達成可能」であるとして、10年間(2020~30年)にわたり、児童労働に従事する子どもを含む全ての人の権利の保護に向けて一致団結して活動する予定であることを紹介し、「この大陸の未来の構築は私たちの手にかかっています」と説明しました。

 2016年時点で既にアフリカの子どもの5人に1人が働いていたわけですが、新型コロナウイルスの世界的大流行のこの大陸に対する影響は児童労働に陥る子どもを増やすことが予想されます。実際、貧困率が1ポイント上昇する毎に児童労働は最低0.7ポイント増加すると推定されています。全体的な状況はアフリカの世帯、労働者、使用者にとって大いに懸念されるものです。ガイ・ライダーILO事務局長は、「私たちは子どもの権利を守り、学校に戻るよう奨励しなくてはなりません。この大陸の開発を育み、子どもの権利を守るために、アフリカ連合の10年間の行動計画をあらゆるレベルで実施する必要があります」と指摘しています。

 パネル討議の参加者らはアフリカにおける問題の規模と複雑さを認め、質の高い教育の機会を全ての子どもに開くことや社会的保護の機会、大人のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会から基本的なサービスの対象範囲の拡大や啓発活動まで、既存のあるいは想定される様々な種類の解決策について話し合いました。

 シンシア・サミュエル=オロンジュオンILOアフリカ総局長(事務局長補)は、「本日のイベントはアフリカの児童労働根絶に向けて既に存在する政治的意思と真の公約の発表会」と評し、特定されたカギを握る政策優先事項の実行に必要な予算の割当を政府、社会的パートナーである労使、その他の団体に呼びかけて「これを経費と見るべきではありません。これは投資、全ての人により良い未来を築くための投資なのです」と訴えました。

 セネガルの児童労働活動家であるジブー・ファイエさんは、7歳から働き始めて一度も学校に通ったことがなく、13歳で結婚させられた自らの経験を語り、「今日、子どもが教育を受けられないことは、社会が進化していないことを意味します。児童労働は夢を壊し、才能を窒息させ、貧困を増大させます」と訴えて、より明るい未来のために地域社会における児童労働に取り組む努力を倍加させることを利害関係者らに呼びかけました。

 イベントには、アフリカ諸国の労働及び社会的保護を担当する大臣、地域経済委員会や、AU委員会、汎アフリカ議会といった大陸を代表する機関の代表者が参集し、西アフリカ諸国経済共同体に加え、コートジボワール、モロッコ、エチオピア、マラウイ、カメルーン、ルワンダといった国の代表がパイロット事業や様々な既存の介入活動、制度的仕組み、事業計画、重大な出来事などを紹介しました。政策対話に対するより良い取り組みや既存の仕組みを強化する方法に関して発言したライダーILO事務局長や8.7連合議長、国連児童基金(UNICEF)や国連食糧農業機関(FAO)の代表、ノーベル平和賞受賞者のカイラシュ・サティアルティ氏などの利害関係者はAUの行動計画を支持することの重要性を強調し、より強い公約を求めました。コンゴ民主共和国出身ミュージシャンのロクア・カンザ氏は、「今年、そしてそれ以降も行動することを公約することによって児童労働との闘いを手助け」してくれるよう呼びかけました。

このイベントは児童労働撤廃に向けた行動の加速化を目指し、幅広い様々な利害関係者の関与を招く機会となりました

 欧州連合(EU)の資金拠出を受けてマリとブルキナファソで実施されているILOの「クリア・コットン(きれいな木綿)プロジェクト」やオランダ外務省の任意資金協力を受けている「アフリカのサプライチェーン(供給網)における児童労働撤廃行動加速化(ACCELアフリカ)プロジェクト」など、資金拠出国・機関からもアフリカ全土で展開されている様々な介入活動や2021年及びそれ以降に向けて予定されている支援や誓約が紹介されました。米国労働省の代表は多数の国内プロジェクト、地域プロジェクト、グローバル・プロジェクトを通じてアフリカの児童労働撤廃に長く貢献してきたことを、日本の国際協力機構(JICA)の代表はガーナの児童労働プロジェクトと西アフリカのカカオ・サプライチェーンにおける児童労働撤廃に向けた取り組みを紹介しました。

 「幅広い経験と専門知識を有するILOは、何が機能するか分かっています。何が機能しないかも。今こそ行動の時です。今こそ、パイロット事業や介入活動を通じて達成されたもののスケールアップを図ろうではありませんか」とサミュエル=オロンジュオン総局長は訴えました。

 地域、各国、組織のレベルで個人及び利害関係者は児童労働に終止符を打つ助けになる、2021年12月までにとる具体的な行動を特定して誓約するよう奨励されています。国際年の特設ウェブサイトにこの誓約を提出する期限は2021年5月15日です。2021年のキャンペーンの下、リーダーらは動画やインタビュー、ブログ記事、影響を示す物語などを用いて自らの取り組みや進捗状況を年間を通じて記録するよう求められています。

 次の一歩の一つとして、南アフリカのテンベラニ・トゥラス・ヌクセシ労働大臣から2022年にアフリカ初の児童労働世界会議が南アフリカで開かれるとの発表が行われました。最後に南アフリカの児童労働活動家であるステイシー・フルさんから次のような訴えが行われました。「児童労働者について本日提示された数字は単なる統計ではなく、子どもの数であることに気付いていますか? この統計は私たちが話している正にこの時に、仕事に行く途中であったり、実際に働いていたり、数時間に及ぶ過酷な労働からの帰り道にある可能性が高い現実の子どもたちを表しているのです。皆さんが私たちの未来をどう決めるか、アフリカの子どもたち、そして世界の子どもたちが注視していますからね」。


 以上はILOアフリカ総局によるアビジャン発英文記者発表の抄訳です。