ILOアフリカ総局長論説:世界子どもの日

児童労働は私たち共通の価値に対する侮辱

 11月20日の世界子どもの日に際して発表した論説記事で、シンシア・サミュエル=オロンジュオンILOアフリカ総局長は、「1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号)」のILO全加盟国による批准は、アフリカの子どもにとってプラスの一歩であると説いています。

シンシア・サミュエル=オロンジュオンILOアフリカ総局長

 11月20日の世界子どもの日に際して発表した論説記事で、シンシア・サミュエル=オロンジュオンILOアフリカ総局長は、アフリカにおける児童労働に対する取り組みを紹介して以下のように説いています。

 今年8月、国際労働基準で初めて、最悪の形態の児童労働に関するILOの第182号条約の全加盟国による批准が達成されました。この歴史的な偉業は最悪の形態の児童労働は許容できず、私たち共通の価値に対する侮辱であるとの地球全体の合意を反映しています。つまり、子どもたちが奴隷や強制労働、人身取引に陥った場合、武力紛争への参加を強いられた場合、売春やポルノ製造、不正な活動に使用された場合、あるいは危険有害労働に従事している場合がそれに当たり、私たちはその権利を守り、子ども時代を回復するために速やかに行動を起こす必要があります。

 第182号条約の全加盟国による批准は、明確な法的枠組みの確立によってこの問題を撤廃に向けて大きく一押しするものの、諸国はなおも労働監督その他の手段を通じて効果的な実施を確保・執行し、大人と法定就労年齢を超えた若者にはディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を提供する必要があります。

 第182号条約はアフリカにとって極めて重要です。実際、1999年6月に当時174カ国であったILO加盟国によって全会一致でこの条約が採択されてからわずか数カ月後の同年9月28日にこの条約を最初に公式に批准したのはアフリカのセーシェルだったのです。アフリカ諸国が雪崩のようにこの条約を批准し、問題が政策策定に携わる人々や社会的パートナーである労使に政策課題として取り上げられるという進展が見られました。この問題とその影響をより良く理解するために各国調査や研究が実施され、アフリカの多くの国で際立った進展が見られました。例えば、児童労働撲滅に向けた国内部隊が設けられ、児童労働条約と国内の法的枠組みの整合が図られ、児童労働撤廃に向けた国内行動計画が策定され、児童労働案件の監視と報告を担当する地域監視委員会が設けられました。

 しかしながら、アフリカではなおも7,210万人の子どもが児童労働に従事しており、そのうち3,150万人は危険有害労働に就いているとみられます。2017年にILOが出した児童労働の世界推計によれば、全世界的に児童労働が減り続けている中で、サハラ以南アフリカだけが2012年から2016年にかけて児童労働の増加を目撃しています。

写真:アフリカの子どもたち
© ILO

 2025年までにあらゆる形態の児童労働をなくすことを目標に掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」のターゲット8.7を達成するためには、アフリカにおける反児童労働活動を加速させる必要があります。アフリカ諸国は非公式(インフォーマル)経済の問題に取り組み、社会的保護を全ての人に広げ、法の執行メカニズムを改善し、良質の無償基礎教育の機会を拡大し、社会対話を強化する必要があります。

 残念ながら、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)危機は経済の不安定性を増し、サプライチェーン(供給網)を混乱させ、製造業の深刻な活動低下を招きました。アフリカの就業者のほぼ85%がインフォーマル経済で働くことに鑑みると、休校やコロナ禍の中での親の大幅な収入減、基礎的な社会的保護の欠如、貧困増を理由として、児童労働が増えると予想されます。

 ILOは労働監督と法の執行における政府の能力、最悪の形態の児童労働との戦いにおける労使団体の能力の強化に向けた活動を促進し、「より良い立て直し」を公約に掲げ、コロナ禍後の経済がより強靱になるよう支援しています。

 今はより一層強力なパートナーシップを構築し、児童労働に対する活動の規模拡大を図らなくてはなりません。この点で、2020年2月にアフリカ連合(AU)の下でアフリカ諸国の国家元首がこの大陸における10年間の児童労働行動計画を採択したことは困難な状況を特徴とする実行期に向けた第一歩であると言えます。SDGsのターゲット8.7の達成を約す地球規模の包摂的なパートナーシップである8.7連合の下で率先して問題に取り組む草分け国22カ国中11カ国がアフリカ諸国(カメルーン、コートジボワール、エチオピア、ガーナ、マダガスカル、マラウイ、モーリタニア、モロッコ、ナイジェリア、チュニジア、ウガンダ)であることは喜ばしい事実です。これはアフリカ諸国の決然とした決意だけでなく、児童労働、強制労働、人身取引、現代の奴隷制をこの大陸からなくす活動を加速させようとの国際社会の固い公約を示すものであると言えます。

 オランダ政府の任意資金協力を得てILOが展開する地域プロジェクト「アフリカのサプライチェーンにおける児童労働撤廃活動加速化(ACCELアフリカ)プロジェクト」はアフリカの集団的な公約とパートナーシップの顕著な例の一つです。包括的な対応を要するサプライチェーンにおける児童労働の根本原因に対する持続可能な解決策をもたらすため、ACCELアフリカ・プロジェクトはILO加盟国の政府及び労使団体、アフリカ連合委員会、サプライチェーンの行動主体、市民団体、そして国連児童基金(UNICEF)などの国連内の姉妹機関と密接に協力し合っています。

 なすべきことはまだ多く残されているものの、2021年の児童労働撤廃国際年を前にした第182号条約の全加盟国による批准の達成は非常に時宜を得たものと言えます。この機運をつかみ損なうことなく、協力し合って私たちの子どもたちのための戦いに勝利し、全ての人により良い未来を確保しなくてはなりません。コフィー・アナン元国連事務総長の言葉によれば、「危険な状態にある子どもは待ったがきかない」のですから。

 最悪の形態の児童労働に対する即時の行動の動員を目指して採択された第182号条約は、緊急事項として、最悪の形態の児童労働をなくす効果的かつ期限を定めた措置を加速化することを批准国に求めています。子どもたちが誰も置き去りにされないことを確保するために、私たちは今、行動しなくてはなりません。


 以上はシンシア・サミュエル=オロンジュオンILOアフリカ総局長による2020年11月15日付の英文論説記事の抄訳です。