ILO統計データを活用してみよう

ILOデータベース初心者が陥りがちな5つの間違いを避ける方法

ニュース記事 | 2021/02/19
1億以上のデータ点を公表するILOの労働統計ポータルサイト(ILOSTAT)は、経験豊富なデータサイエンティストにとってはまさに宝の山ですが、経験の浅い人にとっては使いこなすのが難しいかもしれません。ここでは、初心者によくある5つの間違いを紹介します。これを読めば、ミスの防止につながるでしょう。

よくある間違いその1:似たような言葉に惑わされる

日常的な言葉では同義語のように見える言葉でも、労働統計では異なる概念を指すことがあり、その結果、ILO のデータベースでは異なる指標を指すことがあります。

以前、ILO統計局のブログで、労働統計では労働と雇用は同義語ではないことをお伝えしました。「雇用」は、賃金や利益と引き換えに商品を生産したり、サービスを提供したりするために行われるあらゆる活動を指すのに対し、「労働」は、雇用に加えて、ボランティアの仕事、自家用の生産的労働、その他の様々な形態の労働を含む、より広い概念となります。

他にも紛らわしい労働市場に関する用語はたくさんあります。例えば、employee「従業員」とemployed「就業者」という言葉を考えてみましょう。すべての被雇用者が従業員であるわけではありません。被雇用者は、有給雇用であり、雇用契約を結んでおり、基本的な報酬を受けることができます。一方、就業者には、従業員だけでなく、自営業者も含まれ、その報酬は、彼らが生産、あるいは提供した商品やサービスから得られる利益次第です。

場合によっては、二つの用語の間に概念的な違いがあることは明らかですが、両者を明確に定義することは非常に難しいことです。例えば、ほとんどのデータ利用者は、earnings「収入」、compensation「給与」、labour costs「人件費」の間の類似点と相違点をすべてリストアップすることはできないでしょう。あなたはできますか?

疑問がある場合は、ILOSTATウェブサイトのConcepts and definitions 概念と定義のページを参照して、類似した用語を混同しないようにしましょう。このページには、Glossary 用語集から詳細なGuides and manuals ガイド・マニュアルまで、労働統計をよりよく理解するのに役立つ幅広いリソースを紹介しています。


よくある間違いその2:すべてのデータが等しく作成されているという思い込み

統計基準やガイドラインに基づいて、ILOはデータ構造の作成に取り組んでいますが、すべてのデータが比較可能なわけではありません。

ここで、標準的な失業の定義について詳しく見てみましょう。定義では、(a)就労していない、(b)すぐに就職することが可能、(c)求職活動中である生産年齢人口を失業者と分類しています。一部の国では、この定義の一部のみを適用し、3 つの基準のうち 2 つだけを満たしていれば失業者とみなされるとしています。これは必然的に国別比較を歪曲させてしまいます。

失業の定義から求職活動を行っているという基準を外すと、失業率が大幅に上昇することになります。国によっては、公式に報告されている失業率が、3つの基準をすべて使用した場合の失業率に比べて2~3倍高くなっている可能性もあります。

一方、すぐに就職することが可能という基準を外すと、通常は失業率がわずかながら上昇することにつながります。なぜなら、積極的に仕事を探している人は、仕事が見つかった場合には仕事に就くことが多いためです。

この例は、指標の定義や測定方法に関する注意点を考慮に入れることの重要性を浮き彫りにしています。各国のアプローチの違いは、ほぼ確実に国際比較に影響を与えます。

ただILOデータベースのデータのほとんどは、国際基準が一貫して適用されている統計局のマイクロデータ処理から得られているため、このような注意事項の数は限られているということは、朗報です。

よくある間違いその3:目立ったエラーを見落とす

どこか正しく見えない場合、それはおそらく間違いです。ILOSTATポータル上のすべてのデータは、加盟国から報告されたものであれ、ILOが作成したものであれ、広範な検証を受けています。しかし、毎年何百万もの新しいデータ点がポータル上で公開されていることを考えると、いくつかの誤りは時折すり抜けてしまうかもしれません。疑問がある場合は、いつでもこちらのフォーマットから、私たちに確認してください。

よくある間違いその4:間違った測定基準に注目すること

失業率は、世界中のアナリストやジャーナリストが最も頻繁に使用している労働市場の指標です。しかし、この指標だけに頼っていても、労働市場の状況については限定的な情報しか得られません。これは特に、不十分な労働条件や社会的保護の欠如など、高い失業率以上にディーセント・ワークが不足している国ではそうであり、危機的状況にあるときにも一般的にそうであると言えます。

COVID-19 危機を例に挙げてみましょう。COVID-19 危機が労働市場にもたらした混乱の程度を評価する際には、失業率の推移だけに注目するだけでは十分ではありません。労働時間数が減少したり、一時的または恒久的な非労働力状態に移行した労働者は含まれていないからです。

COVID-19と仕事の世界に関するILOモニター・シリーズは、危機の影響を定量化・分析するために、職場閉鎖、労働時間の損失、非公式性、失業率、非労働力率に関する情報を活用しています。詳細については、ILOモニターの最新版(第7版)をご覧ください。

1億以上のデータ点を公開するILOSTATポータルサイトがカバーする400以上の指標を活用すれば、必ず分析の範囲が広がるでしょう。

よくある間違いその5:データエクスプローラを完全に活用していない

ユーザーの多くは、内蔵されたデータエクスプローラを使用してILOSTATポータル上のデータを最大限に活用することができます。この対話型ツールは多くの価値ある情報を提供していますが、その中のいくつかの使い方はすぐには分からないかもしれません。

ここでは、データエクスプローラの主な機能を紹介します。
  • Filter フィルター: 左側のフィルター(地域/国、期間、分類)または各列内のフィルターを使用します。
  • Pivot ピボット: "ピボット "として選択した変数を使用して、テーブルのレイアウトを変更します。
  • Notes メモ : メモが表示されるように、関連するチェックボックスにチェックを入れることを忘れないでください。
  • Indicator description 指標の説明 : 選択したデータセットの横にある情報("i")アイコンをクリックします。
  • Capture view 画面の保存:  チャートを素早く抽出して、作業中のドキュメントに直接貼り付けます。
  • Show/hide  表示/非表示 : よりユーザーがわかりやすい結果表示となるよう、表示されている列を操作することができます。
  • Export エクスポート: Excelを含む様々な形式でデータをダウンロードできます。
  • Map マップ: 指標のタイトルの横にあるマップアイコンをクリックすると、データがマップ表示されます。
  • Chart -チャート : マップ表示で国をクリックすると、その国のデータを示す折れ線グラフが表示されます。

おわりに

ILOの労働統計を使い始めたばかりの方も、ベテランのデータサイエンティストの方も、これらのヒントがお役に立てたのではないでしょうか。以下に、参考となるリンクをいくつか紹介します。ILOSTAT ポータルやデータベースの操作にまだ助けが必要な場合は、遠慮なく連絡してください。私があなたのお問い合わせにお答えすることになるかもしれません。
ILO統計局・データ作成・分析ユニットMabelin Villarreal-Fuentes統計専門家による解説~原文は>こちら