ILOキャリアセミナー Q&A

2021年1月22日に開催しましたILOキャリアセミナーに寄せられました参加者からのご質問と回答を掲載しています。

木村氏への質問

1.    道作りや整備の活動で、現地の人たちと一緒に働く際に気を付けていることはありますか。
-    道直しを行う前に事前に村に入って、村長さんなどと話し合い、色々なことを決めておく。村長さんの方から道直しをすることの意味や、賃金の払い方などを説明してもらう。事前のファシリテートに時間をかけることが重要。

2.    最近ニュースでコロナ禍の中SDGsの達成が益々厳しい状況だと目にしました。SDGsの達成に向けて先進国、日本の私たちが今できることは何だと思いますか。
-    先進国が発展途上国に対してすることと、先進国が先進国の中で行うことがある。前者だけでなく、意識的に後者を積極的に具体的な活動として行うことが必要である。

3.    NPOの理事長と大学の仕事の両立で忙しい毎日だと思います。世界中の途上国で道作りをされてきた、その原動力は何でしょうか。また一緒に働くスタッフのキャリア形成で留意していることは何かありますか。
-    道が雨季になると通れなくなって、市場や学校や病院に行けなくなる人の数を減らしたい。自分たちで簡単な方法でも道を直せて、生活を改善できるという意識を広め、自らの力で貧困から脱出してもらいたい。「人々の暮らしを守り豊かにする」という土木の原点を常に意識し、人の役に立ちたいというのが根本的な原動力です。働く人には活動に責任を持ってもらい、任せている。また適切な給料を払うことを大切にしている。私たちのNGOに所属し、意識やスキルを高めて、さらに飛躍してもらいたい。

4.    29か国で活動されてきた中で、地域ごとの違いはどのような点で特に感じられましたか。
-    地域によっても違うし、アフリカの隣国でも全く違う。労働に対する考え方や、自分たちの土地に対する考え方も違う。

坂本氏への質問

5.    立場や意見の異なる人々との交渉の際に心がけていることはなんですか?
-    基本的なことですが、まずは相手の状況、ニーズ等をよく聞き、理解に努めること、こちらから問題への解決策を提案するというより、一緒に問題への理解を深めながら、それに対する解決・対処方法を選択肢をあげながら考えていく、妥協点を探すというスタンスです。

-    木村氏:相手を思いやることや、難しいけれども相手の立場に立って考えることが重要である。先方に「手柄を取らせてあげる」ことが重要。

渡邊氏への質問

6.    私は専門調査員として派遣を控えているのですが、今までのご経験から、前もって準備したり学んだりしておいた方がいいことなどがあれば教えて下さい。
-    詳しくは、一般社団法人 国際交流サービス協会の寄稿記事をご覧ください。

7.    なぜ、JPOでILOを選ばれたのですか。
-    私は大学院で移民・難民政策を研究しました。その後、OECD政府代表部で開発協力政策に携わった後、難民業本部というところで日本の難民認定申請者の支援にも携わりました。これらの経験から、人の移動とそれに伴う労働に関わる開発協力に政策的見地から携わりたいと考え、ILOに希望を出しました。「雇用集約型投資プログラム(EIIP)」というと一見内容の異なる部署に聞こえますが、難民と現地コミュニティの仕事を通じた共存、非正規移民が発生しやすい地域での雇用創出など、様々な切り口から移民・難民の課題に取り組んでいます(JPOの応募・採用プロセスは年度によって異なる可能性があるので、詳細は国際機関人事センターのホームページを参照してください。)。


パネリストへの質問

8.    ILOでの勤務を志した理由と、人生において達成したい目標についてご教示いただけますと幸いです。
-    渡邊氏:ILOでの勤務を志した理由は先述のとおりです。人生の目標という1つの定まったゴールがあるわけではありませんし、今後ILOでどれだけ働くことになるかはわかりませんが、生涯の目標として、どの機関で開発協力に携わろうとも、一緒に働く相手を理解するよう努めたいと思っています。それは、自分が開発協力の業務を通じて誰のために働いているかという受益者に対する意識だけでなく、同僚や上司、あるいは部下とどのような勤務環境を作り上げていくかという自分自身の働き方にもつながるものだと考えています。

9.    現在労働市場や社会全体から必要とされる国際人材を育成するために、高等教育機関に求められることは何なのかについてとても興味があります。パネラーの皆さまのお考えを拝聴できることを楽しみにしております。
-    木村氏:現場に立ち、解決のための具体的な方法を、困っている人と一緒になって考えること。机の上で考えたことはほとんど役に立たないと思って、現場を尊重すること。
 
-    坂本氏:理論と実践の両方を。実際にあった問題をケースに、またはフィールドに足を運んで問題解決のためのプロポーザルを考えるようなアサイメントは実践的で使えると思います。
 
-    渡邊氏:専門知識を身に着けることはもちろんですが、パネル・ディスカッションでも申し上げたとおり、国際人材を育成するという観点からは、学んだ知識に基づいて、自分の考え・意見をロジックをもって組み立てる、そしてそれを発信するという訓練も非常に重要だと思います。

10.    コロナによる雇用環境の劣化が懸念される中、ILOの現在の取り組みの課題とどのようにそれらを乗り越えるのかについての展望をお伺いしたいです。特に、女性、外国人、障害者といったダイバーシティーや、地位向上に関して、どのような取り組みをされていきたいのかを伺えましたら幸いです。
-    坂本氏:いろいろありますので、ILOのコロナ禍における取組はILOのサイトを参照願います。

-    渡邊氏:紛争や自然災害などだけでなく、様々な要因で脆弱な状況に置かれた人たちが、コロナによる影響でさらに脆弱な環境に追いやられるという「二重の被害」が生じています。私の業務では、そうした最も脆弱な環境に置かれた人たちに機会が行き渡るような支援を目指しています。これには、災害等の被害地域等において、女性、難民・国内避難民、障がい者等に対する平等な雇用・技能実習機会の提供を明記し、広く周知し、実施することなどが含まれます。また、そうした配慮が様々な支援で広く適用されるよう、ILO全体でもジェンダーの主流化や脆弱性への配慮等に取り組んでいます。

11.    他の国際機関とILOの違いはどのような点にありますか?(活動分野、職場環境、必要とされる能力など)
-    坂本氏:ILOは労働・仕事の世界にかかわる様々な分野(労働基準、社会保障、労働行政、労使関係、ジェンダー・ダイバーシティー、環境と仕事、技能開発・人づくり、中小企業育成等)で組織だてされていることもあって専門家もしくはそれをめざす集団であるイメージが他の国際機関よりあるかもしれません。応募されるときはどの分野で興味があり、経験がある、積みたいと明記できると有利です。

-    渡邊氏:私自身、他の国際機関で勤務したことがないので職場環境や必要能力等については回答できませんが、私の担当する業務も含めて、ILOの活動の中心は、常に「人」であるという点かと思います。これは、仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言でも「人間中心のアプローチ」として反映されています。

12.    今までで最も印象に残っているお仕事を教えてください。
-    坂本氏:インド初のNational Skills Development Policy 策定(2009)への支援です。

-    渡邊氏:パネル・ディスカッションでもお話しましたが、ガンビアで、勤務経験も殆ど無く、失業中の若者が技能実習後に会社を立ち上げ、その後、自身の力で自治体からの契約を獲得した際は本当に嬉しかったです。

13.    現在大学生なのですが、皆さんは学生の頃から積極的に途上国支援やボランティア活動、留学といった活動に参加されていたのでしょうか。
-    木村氏:大学や大学院時代に国際協力のことを考えたことはありませんし、勉強したこともないです。33歳の時にJICAが造ったケニアのジョモケニアッタ農工大学に行って専門の講義をし、研究者の卵を育てなさいと言われ、3ケ月の短期専門家で派遣されたことがきっかけです。

-    渡邊氏:私は学部時代に交換留学を経験し、修士号は海外で取得しました。学部生時代に途上国支援を行った経験はありませんでしたが、学内では新入生や留学生の履修・学生生活をサポートするボランティア活動を行いました。開発協力に直接関係する活動ではありませんが、わかりやすく人に伝える、ということを学べた点ではとても良い経験だったと思います。関心のある活動があれば、それが何であれ、積極的に参加して、様々な経験をされると良いと思います。

14.    お二人の具体的な業務内容(関わられた政策やプロジェクトの内容)についてもっと詳しく教えてください。
-    渡邊氏:この欄だけでは書ききれないので、ぜひEIIPに関するウェブサイトを訪れてみてください。頻繁にアップデートするよう心掛けています。

-    ILO駐日事務所H Pでは、世界各地で働く日本人職員からの現場の声をご紹介しています。ぜひ、ご参照ください。

-    ILO駐日事務所インターンのブログでは、日本人職員の方へのインタビュー企画を通してILOでの具体的な業務、やりがいやキャリアパスを皆様にご紹介しています。(第5回は坂本氏へインタビューしました。)ぜひ、ご参照ください。

15.    現役職員の方の採用試験合格までの道のり。特に、大学院で学んだ内容やそれまでの職務経験と、現在の国際機関での仕事がどのようにつながっているか、選考時に関連性をどのようにアピールしたかについて時間があればお伺いしたかったです。
-    渡邊氏:あくまで私が現在のJPOのポストに応募した際の例ですが、1)大学院での研究や政府機関での勤務経験を通じて、国際的な開発協力の枠組みと、それに伴う各国の政策や課題に対する理解があること、2)そうした大きな枠組みの中で自分の希望する分野・ポストはどのように位置付けられており、どのような意義があるのか、そして3)具体例とともに、自分はどのような貢献ができるのか、という点をアピールするよう努めました。

外務省国際機関人事センターへの質問

16.    明日以降のJPOの説明会に参加したいと思っているのですが、どこから情報を見られるでしょうか?
-    「国際機関人事センター」のHPにてご案内を掲載しています。
(HP)こちらをご覧ください。(説明会ご案内)こちらをご覧ください。
また、当センターのTwitterFacebookでは、そういった当センターのイベントの案内だけでなく、各国際機関のセミナーや空席情報も随時発信しているので、ぜひフォローしてみてください。

17.    JPO試験に合格した際、勤務機関や勤務地の希望は出せるのでしょうか。
-    勤務機関や勤務地の希望は申し込み時に出すことになります。ただし、最終的な推薦先は当該希望や、国際機関のニーズ等様々な状況を勘案し外務省において決定することになるので、ご承知おきください。(なお、JPO試験の合格(派遣の決定)については、国際機関が受け入れを認めた時点が決定になるので、「合格後に」希望を出すということは基本的に想定されません。)

18.    JPO試験の際はどのような観点から評価がなされますか。
-    候補者がJPOが派遣されるInternational StaffのP2レベルの業務を遂行するに足るだけの能力や専門性を有するか、そしてその後国際機関の中でキャリアを築いていく意欲や資質があるかを、応募書類及び面接審査によって判断していくことになります。

19.    50代からの転職の場としての国際機関について、どのような方法や手段があるか教えてください。
-    お話ししました国際機関に就職する方法のうち、空席公募に該当するので、詳しくは国際機関人事センターのHPやパンフレットの該当部分をご参照ください。
HP:こちらをご覧ください。パンフ:こちらをご覧ください。
 
-    坂本氏:セミナーの第二部でもお話がでましたが、期間限定で行われるプロジェクトのスタッフとして即戦力として入る、またはポストに空席が出るたびにILOのサイトから公募がかかるいわゆるregualr-budget staffとしてこれまでのキャリアをいかしてシニアスタッフとして入るというルートがあります。
 
20.    JPO試験対策として、特にどのような点に気をつけた方が良いのでしょうか。
-    国際機関への応募書類の作成の仕方について解説されているものなどを参考に、効果的な応募書類の作り方・アピールの仕方をよく検討してください。どんなに素晴らしい経験を持ち、優秀な能力を持っていても、書類上でそれが示せていなければ審査する側も判断できません。

21.    JPO試験でILOを目指しております。JPOでの希望勤務地に関する質問です。専門は労使関係で現在はベターワーク等を研究しており、タイを含む東南アジアでの実務経験があるため、バンコクオフィスのベターワーク関連の部署で経験を積みたいと考えていますが、JPO後のポスト獲得を考慮すると本部で人脈を構築した方が良いなどといったことはございますでしょうか。その他、勤務地の選択に関してアドバイス等、共有頂けましたら幸いです。
-    組織やタイミングなどによるところも大きいので一概なお答えは難しいですが、本部のメリット、地域事務所のメリットいずれもあるので、その点は現在勤務している人などのお話を聞いてみていただければと思います。なお、JPO制度上、希望地に必ずしも推薦されるわけではない点はあらかじめご承知おきください。

22.    実際のJPO合格者の合格時の平均年齢、また若い場合だと何歳頃で合格されているのかをご教示いただきたいです。また実際にJPOに合格された方には説明して頂いた最低限の必要要件の他にどのような特徴がありますでしょうか。
-    2019年度の派遣者(52名)では平均31.4歳、25~27歳での派遣者も4名いました。特徴としては、自身が何ができるか(なんの専門性があるか)と、希望する組織やポストで求められる専門性をよく理解している方、そして、その二つを結びつけた力強いアピールができている方です。

23.    JPOの場合も、〇〇オフィサーといった括りで採用されるのでしょうか。
-    一口にJPOといっても、ポストごとの役割や職務内容は全く異なり、その職名も「オフィサー」に限られるものではありません。2/1以降、主なJPOポストの情報を公開しますので、ご覧になってみてください。

24.    職務記述書の書き方セミナーのようなものは、公式・非公式問わず、ありますか?あれば紹介してほしいです。よろしくお願いします。
-    応募書類の書き方セミナーなどは、各国際機関のキャリアイベントや国際機関人事センターでも時々実施しております。また、今後、応募書類・面接アドバイスの動画も配信予定です。関連情報は国際機関人事センターのSNSでも発信いたしますので、ぜひご登録ください。

ILOへの質問

25.    ILOにおいて、今最も予算・人員を充てて携わっている分野をご存知であれば教えてください。
-    ILOウェブサイトの Decent Work をご覧ください。
 
26.    ある国が拠出したプロジェクトにおいて、その拠出国出身者の関与(プロジェクト参画)はどのような形でILOとしては考慮されるのか?或いは、applyしてきたを平等に考慮し、国は考慮はせずに参画者を検討するのでしょうか。
-    坂本氏:殆どの場合は国は考慮せずにあくまでプロジェクトの目的達成のための知識、経験を持ち合わせているかというのが第一の選考の視点になります。
 
27.    大学教員からILOに転職してフィールドで働きたい場合、どのような職種が可能でしょうか?
-    ご専門によります。ウェブサイトでILOの活動領域を研究され、空席広告の「応募要件」の「教育」の所に、「アダルト・エデュケーションの経験」と記載されているものなどを参考になさって下さい。なお、アダルト・エデュケーションのご経験は、SKILLS(技能訓練・開発)や人材開発局の研修担当課でも通用すると思います。

28.    ILO職員の処遇について教えて下さい。具体的には給与、家族同伴の可否(可の場合、子供の教育費補助の有無)、一時帰国の可否や費用負担についてご教示いただけると幸いです。
-    各空席広告に詳細が載っていますので、そちらをご覧下さい。

29.    産業医として活動をしていますが、将来的には国際機関でより視座の高い業務に従事したいと考えています。英語・フランス語は問題ないのですが、博士号や研究所勤務等がなければ採用には至らないのでしょうか。臨床医、産業医からの国際機関へのキャリアパスにおいて、助言をいただけると大変ありがたいです。
-    博士号や研究所勤務等の経験は必須ではありません。詳細は、Labour Administration, Labour Inspection and Occupational Safety and Health Branch (LABADMIN/OSH) (をご覧下さい。

30.    わたくしは、現在文系の学部で環境のことを学んでいる者です。進路の多くは公務員ですが、わたくし自身国をまたいだ職を探しております。環境の学びを生かせる部署はあるでしょうか?
-    是非、EIIPや、ILO Green Jobs などのウェブサイトをご覧ください。

31.    デジタルの時代ですが、IT分野の募集枠にはどのようなものがありますか?またそのような募集枠は増えてきていますか?
- ILO本部IT部署から回答があり次第、掲載します。

32.    インターンの応募は年2回ということですが、今年はいつになるのでしょうか?コロナの影響で未定ということでしたら、例年の例をご教示いただけますと幸いです。
-    セミナー中にも説明した通り、今年の募集時期は未定です。外務省国際機関人事センターのメーリングリストや、ILO Jobs の自動でお知らせを受け取れる機能に登録されて、最新情報をキャッチしてください。

33.    実際に必要とされている具体的なコンピテンシーはどのようなものかの説明がもっと聞きたかったです。
-    誠実さと透明性、多様性への理解、 学習と知識共有志向、顧客志向、 コミュニケーション力、変革志向、 任務への責任感、品質志向、 協力志向

-    木村氏:(開発協力人材に求められる資質は)難しいことを難しく考えずに、常に前向きな姿勢で行動すること。途上国の人々と同じ目線で物事に取り組むこと。常に冗談を言いながらユーモアーをもって仕事に取り組むこと。