ILOブログ:仕事の未来

「いつも通りでないビジネス」:新型コロナウイルスが到来を早めた仕事の未来

 世界中で数百万の人々が新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的大流行を理由として遠隔勤務を行っています。この「いつも通りでないビジネス」が仕事の未来になるのでしょうか。

スーザン・ヘイターILO仕事の未来上級技術顧問

 新型コロナウイルス(COVID-19)の到来前から既に、科学技術が仕事の未来にとってもつ意味については大いに議論がなされていました。2019年のILO総会で採択された「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」は、仕事の未来は予め決まっているものではなく、どう形作るかは私たち次第と説いています。多くの国、企業、労働者が、新型コロナウイルスの感染抑制策として遠隔テレワークに移行する中、この未来は予想より早く到来し、今や遠隔バーチャル会合が一般的になり、一連のデジタル・プラットフォームにおける経済活動が増加しました。

 制限が解除される中、皆の心に浮かぶ問いはこの「いつも通りでないビジネス」が新たな常態になるか否かでしょう。

 既に先進国では2、3の大企業が、自宅を基盤とした遠隔テレワークという予定されていなかった大規模なパイロット・プロジェクトをやがて標準的な勤務形態とし、従業員は自ら選択しない限り、通勤に戻す必要はないと言明しています。これは人々や地球にとっては祝福すべき理由になるかもしれませんが、事務所の終焉という考えは当然に誇張され過ぎています。

 高所得国では労働者の27%が自宅で遠隔勤務が可能とILOでは見ています。これは遠隔勤務が可能な職種に就いており、それを可能にする科学技術や電気通信の基盤構造が利用できることを指すのであって、遠隔勤務を続けるであろうことを意味するわけではありません。

 各国が制限の緩和に踏み切る中、場としての仕事の社会的・経済的価値を失わずに、使用者と労働者がこの経験から利益を得る方法があるでしょうか。近い将来における適応の際に、この経験を糧にすることができるでしょうか。

 遠隔勤務には長所と短所があります。

 コロナ禍に主導された遠隔勤務への移行は、多くの企業に従業員の即時の安全と健康を確保しつつ、操業を継続することを可能にしました。これは事務所として機能する自宅、協同ツールへのアクセス、予測可能な定常業務といった、正しい条件の下では、遠隔勤務は職場における労働と同じくらい生産的になり得るというこれまでの研究が示してきた事項を確認させるに至りました。

 この健康危機の中で遠隔勤務に移行できた人々は家族と食卓を囲む機会を得、仕事はたちまち人間を中心にしたものとなり、自宅での学業や育児、高齢者介護のニーズに対応できるものになりました。

 しかしながら一方で、労働時間と私的時間の区別が曖昧になり、ストレスが増し、精神衛生上のリスクにさらされることにもなりました。健康危機の期間における遠隔テレワークへの移行はその上多くの人々に孤立感やアイデンティティー及び目的の喪失をもたらしました。バーチャルルームではたとえ服装がどれだけカジュアルであろうとも、仕事の社会的価値やそこから派生する尊厳及び帰属感に置き換わることはできません。

 景気下降と失業数値の上昇に直面し、こういった適応を最もよく活用して経費節減、生産性向上、雇用救済を達成する方法について話し合う機会が存在します。これは週労働時間の短縮、あるいは仕事が少ない時の一時帰休を避けるワークシェアリングの取り決めを意味するかもしれません。正しい均衡を達成するために労働組合がある場合にはその代表と新たなポリシーを交渉する必要もあります。

 仕事のデジタル変換と遠隔勤務の可能性はまた、新たな包摂の可能性を提示します。経験豊富な、より高齢の労働者が自分のペースに合わせて勤労生活を延長させることや、農山漁村や非都市圏域に住む人々が就労の機会を得て、地理条件が確定要素となっている所得の二極化を縮小することなどが可能になるでしょう。

 遠隔テレワークに関する最近の経験はまた同時に、深い断層線を露わにしました。所得階層上部の人々は将来的にも遠隔勤務を続ける選択をすることができるかもしれないのに対し、最下層の人々には選択肢がなく、通勤を続けなくてはならず、その結果として時間貧乏になる可能性がますます高まります。

 歴史的に経済ショック、疾病の大流行、戦争は不平等を拡大してきたことを認識すべきです。

 問題は今回が構造的な移行となって政治や社会の不安定性を高める方向に向かうか、それともこのショックに鼓舞されて、社会、労働市場、職場を平等の方向に動かす民主的な意思決定と連帯の原則及び公正な社会の基盤を強める方向に向かうかという点です。

 ILOは7月に新型コロナウイルスの影響、仕事の世界の対応、より良い仕事の未来を構築する方法を検討するために、新型コロナウイルスと仕事の世界に関するハイレベルのグローバルサミットをバーチャル形式で開催します。サミットは2部構成を取り、7月1~2日に地域別のイベントが開かれた後、7~9日にグローバルな討議が行われます。

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 以上はスーザン・ヘイターILO仕事の未来上級技術顧問によるILOのブログ「Work in progress(進行中の仕事)」への2020年6月22日付の英文投稿記事の抄訳です。