ILOブログ:障害者と新型コロナウイルス

障害者を含んだ、より良い「新たな日常」へ

 新型コロナウイルス(COVID-19)危機は障害者に特別の課題を提示していますが、コロナ後における経済・社会制度の改革は、より良い日常、そしてより包摂的な未来を構築する機会を提供しています。

ILOインターンのフィレヒウォット・タデセさん

 エチオピアの首都アディスアベバ出身のフィレヒウォット・タデセさんは、ILOジェンダー・平等・多様性及びHIV/エイズと仕事の世界部で障害者包摂担当のインターンとして働いていましたが、他の多くの人々同様、母国から遠く離れ、新型コロナウイルス(COVID-19)による都市封鎖が行われているジュネーブで暮らしています。シラキュース大学で障害学を学び、教育文化学の修士号を取得しているタデセさんは免疫系抑制の問題を抱えるため、危機の期間に健康を保つには自己隔離が必須です。

 母国エチオピアにいれば社会的支援のネットワークなど多くの利点があったはずですが、スイスのILO本部で働いていることにも利点はあります。途上国と先進国の双方における新型コロナ危機時の障害者の状況、そしてその気になれば、危機が終結した時に私たち皆にとって状況がより良いものとなるようにするにはどうすべきか考えるようになりました。

 一つにはテレワークがあります。科学技術が一部の障害者にアクセスの可能性と包摂を現実のものとしたのは素晴らしいことです。でもこの「一部の人々」は少数派に過ぎません。エチオピアにいたならば、科学技術やインターネットへのアクセスが限られるためにテレワークはできなかったでしょう。実際、科学技術のアクセスという点で言うと、障害者の8割以上が暮らす南側諸国はほとんどが置き去りにされています。

 ジュネーブではオンラインで食料雑貨を購入できますが、アディスアベバではそれも不可能だったでしょう。実際、危機前から公共交通システムがあまり得られなかったため、買い物に行くのも困難だったことでしょう。タデセさんはバスの乗り降りに人の手を借り、階段では手すりを使う必要があり、こういった行為は全てウイルス感染の危険を高めるため、新型コロナウイルスによって状況は悪くなったことでしょう。

 もう一つの恩恵は仕事があることで、タデセさんはこれに情熱を傾けています。世界全体で10億人を数える障害者のほとんどが仕事をしておらず、していたとしても働く場は非公式(インフォーマル)経済の場合が多くなっています。オンライン購入の心配どころか、食卓に食べ物を載せられるか否かの方が心配です。

 障害を持つ女性として、タデセさんは性別と障害の二つの要因によって差別と排除がいかに起こるかを直に体験しています。世界中で労働市場における障壁は男性障害者よりも女性障害者の方に高くなっています。現下の危機が障害者雇用にどんな影響を与えているかまだはっきりとは分かりませんが、過去の危機の場合には障害者、とりわけ女性障害者は真っ先に仕事を失う人々の中に含まれていました。

障害者は危機時における解決策の提供者であり、共同クリエーターです、と説く障害者の権利についての活動家でもある米国の女優マーリー・マトリンさん(1分44秒・英語字幕付)

 その上、標準的な社会的保護措置は通常、障害者を十分に保護していません。障害者特定の社会給付の場合、低所得国では重度障害者のわずか1%にしか得られません。

 ILOから新たに出された概説資料『COVID-19 and the world of work: Ensuring the inclusion of persons with disabilities at all stages of the response(新型コロナウイルスと仕事の世界:対応のあらゆる段階における障害者の包摂の確保・英語)』は、障害者が以前から直面していた不平等が新型コロナウイルスの提示する生命と生活の糧に対する脅威を増す方法に光を当てています。同時に、ウイルスがこれを変える機会を開く可能性があることも指摘しています。コロナ禍後の新たな日常は先進国でも途上国でもより良い日常となる可能性を秘めています。しかし、それは障害者の意見、ニーズ、権利を完全に取り込み、尊重した場合に限られます。「これは障害者の権利を強化し、社会・経済生活へのそれらの人々の包摂を後押しする機会です。より包摂的な仕事の未来は誰にとっても可能なのです」と概説資料は説いています。

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 以上はILOジェンダー・平等・多様性及びHIV/エイズと仕事の世界部で障害者包摂担当のインターンとして働くフィレヒウォット・タデセさんによるILOのブログ「Work in progress(進行中の仕事)」への2020年6月4日付の英文投稿記事の抄訳です。