理事会
第340回ILO理事会閉幕
ILO史上初のバーチャル形式で2020年11月2~14日に開かれた第340回理事会は通常の会合とほぼ同じ数の議題を扱い、約20項目について通信手段を用いて決定を行い、同じく約20項目について実際に審議して決定を下しました。
理事会の書記を務めたフアン・ジョベラILO公式会議・文書・渉外局長は、このように困難な環境下でこれほど複雑なことを組織するのは容易な業務ではなかったものの、チームワーク、3月以来蓄積された新たな遠隔参加技術に関する経験、そして政労使の調整協力のおかげで全ての会合が非常に円滑に進められたとの感想を述べています。
会議の主な成果について局長は次のように報告しています。
理事会は新型コロナウイルス(COVID-19)と仕事の世界の問題を取り上げ、来年6月のILO総会で人を中心に据えた危機回復に向けた地球規模の対応策を採択することを目指し、協議を開始することを決定しました。理事会に提出された、ILOの対応をまとめた討議資料は、過去9カ月にわたり、ILOの通常の統治活動が中断したにもかかわらず、ILOは迅速に活動を調整し、目的をシフトさせたことを示しています。主な成果としては、7月に開かれた「新型コロナウイルスと仕事の世界ILOグローバル・サミット」、新型コロナウイルスの世界的大流行の労働市場に対する影響を概説したILOモニタリング資料シリーズの発表と普及努力、新型コロナウイルス情報ハブの開設などが挙げられています。4本柱の戦略に基づく、新型コロナウイルスの世界的大流行が経済及び社会に与えている影響に対処するためのILOの政策枠組みの実施状況についてもまとめられています。
2022~25年の次の4年間のILOの戦略計画に関する話し合いとその採択においても新型コロナウイルス危機が考慮に入れられました。理事会は次の4年間の開発協力戦略を承認しましたが、これは仕事の世界に対するコロナ禍の影響と国連改革の実施状況を考慮に入れ、「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」が掲げる人間を中心に据えた取り組みによって形作られています。
コロナ禍に照らし合わせると、若者の就労に関するILOの行動計画も重要事項であり、理事会は若者の就労に関するイニシアチブに資金を配分する際にこの戦略を考慮に入れるようILO事務局長に求めました。理事会はまた、気候変動とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に関するILOのグリーン・イニシアティブ戦略のさらなる促進と実施についても合意に達しました。さらに、2019年6月に発表された国連の障害者包摂戦略に従い、完全な障害者包摂機関になることを約すILOの公約を反映する障害者包摂政策及び戦略も承認しました。
国際労働基準関連では、理事会は2019年のILO総会で提起された2件の新たな苦情申立、すなわち、バングラデシュにおける結社の自由、団結権、労働監督に関する問題とチリにおける団結権と母性保護に関する問題の2件についても審議を行い、グアテマラの結社の自由、ミャンマーとカタールにおける強制労働に関連した古い案件の進捗状況を点検しました。結社の自由、最低賃金決定制度、政労使の三者協議に係わる苦情申立が提起され、審査委員会の報告書が出されたベネズエラの案件に関しては、委員会の報告書と提案を受諾しないとした政府の回答に対するILOの対応に関しては決定に至らず、2021年3月の次期理事会で再検討することになりました。
理事会の会期末直前に新型コロナウイルスを理由とした国境封鎖・移動制限によって現在船上に閉じこめられている40万人の船員の問題を取り上げた労使合同決議案が提出されました。決議案は加盟国に対し、安全な乗組員の交替と船員の移動を確保する測定可能な時限計画を定め、実施すること、そして船員を「基幹労働者」に指定することの検討を求めています。問題が複雑であることから、理事会は緊急事項として通信手段を用いて決議を採択することを目指し、海事産業の主要な関係者を含んだ協議を通じて本件の話し合いを継続することに合意しました。
以上は英文論説記事の抄訳です。