ビジネスと人権に関する国別行動計画

ビジネスと人権に関する国別行動計画を受けて、ILO、労使を含むステークホルダーが合同コメントを発表

 2020年11月9日、ILO駐日事務所が委員として参画する「ビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)」の諮問委員会及び策定部会を構成するステークホルダーは、10月に日本政府から公表された2020~25年の日本版NAPについてのコメントを発表しました。

記者発表 | 2020/11/10

 ILOは日本における「ビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)」の策定過程に、作業部会及び諮問委員会の委員として参画してきましたが、2020年10月16日に日本政府から2020~25年の日本版NAPが公表されました。これを受け、日本経済団体連合会(経団連)及び日本労働組合総連合会(連合)を含むNAP策定作業部会を構成するステークホルダー()は、2020年11月9日にNAP発表を踏まえたステークホルダー報告会を開催し、合同コメントを発表しました。

 日本版NAPでは、その目的として、政府関係府省庁間の政策一貫性の確保と連携強化、また、責任ある企業活動の促進を通じて、社会全体の人権の保護・促進に寄与し、日本企業の国際的競争力及び持続可能性の確保・向上に寄与すること、NAPの実施を通じて持続可能な開発目標(SDGs)の実現を図ることが掲げられています。また、新型コロナウイルス感染症パンデミック後に初めてまとめられたことから、その対応や回復期において人権を対策の中心に据えることを強調したアントニオ・グテーレス国連事務総長の指摘や、新型コロナウイルスにより労働条件に関するサプライチェーン及び会社運営の脆弱性が浮き彫りとなっているとのILOの指摘を受け、これに沿って日本版NAPを着実に実施していく必要があると述べられています。

 日本版NAPにおける、労働に関する具体的な政府の政策としては、以下が注目されます。

  1. ILOの「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」及び「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」の周知、人権デュー・ディリジェンス(DD)とステークホルダー対話・協働の相互補完(P23-24)
  2. ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)促進のための中核的労働条約の批准追求と労働における基本的権利に関する原則の尊重、促進及び実現(P10)
  3. 外国人労働者/技能実習生等を含む労働者の権利保護・尊重、ハラスメント対策(P11-12)
  4. 諸外国との人権対話を通じたビジネスと人権に関する取り組みの推進(P20-21)
  5. 労働者が恩恵を受ける投資/経済連携協定の締結と市民社会対話(P20-21)
  6. ビジネスと人権に関する啓発(公務員向け、企業向け)と国際機関との協力(P22)
  7. 在外公館や関係機関を通じた海外進出企業向け人権DDの啓発(P23-24)
  8. ILOへの拠出を通じたサプライチェーンにおけるディーセント・ワークの促進(P25)

 11月9日に開かれたステークホルダー報告会において発表された合同コメントは、今後のNAPの実施・モニタリング局面においても経済界、労働界、市民社会、専門家など幅広いステークホルダーの関与を確保する体制が不可欠であり、国連のビジネスと人権に関する指導原則に基づき一貫性のある政策実施とマルチステークホルダーの関与を改めて求めています。

 同日付で、NAP策定諮問委員会の構成員も合同で「ビジネスと人権に関する行動計画の公表にあたって」と題するコメントを発表し、NAPが真に課題の解決に資するよう、実効的な実施と改定プロセスの確保への期待を示しました。

 ILO駐日事務所は、社会対話促進の一環として、過去のステークホルダー共通要請事項(第1共通要請事項 第2共通要請事項 )に引き続き、今回の合同コメント作成に至るステークホルダー対話も主導してきました。

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本記事に関するお問い合わせ先:
ILO駐日事務所 プログラムオフィサー/渉外・労働基準専門官 田中 竜介
TEL:03-5467-2701/E-MAIL: tokyo@ilo.org


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