ILOブログ:小規模事業

今はかつてないほど高まっている小規模事業の重要性

 新型コロナウイルス(COVID-19)は雇用と生計手段の重要な提供者である無数の小規模事業を世界中で破壊しています。その生き残りを図るためには、即時の所得ニーズを満たすと同時に、事業継続のための支援を提供する持続可能で適切な政策措置を策定すべき、とILOの中小企業専門家は説いています。

ドラガン・ラディックILO中小企業ユニット長

 欧州で、オーストラリアで、アジアで、歯科クリニック、レストラン、小規模旅行代理店、製造業など、多くの小規模事業が休業を余儀なくされています。従業員は有給あるいは無給の休暇の下、給与の減少で苦闘しています。悲しいことに既に解雇された人々もいます。ほとんどの政府が実に迅速に対応し、企業が破産せずに事業を継続し、従業員を解雇せずにすむような措置を講じたものの、支援が遅すぎたり、少な過ぎる場合も多いのです。新型コロナウイルス(COVID-19)危機によって小規模事業で働く数百万人が仕事を失いました。

 小規模事業は社会的にも経済的にも信じられないほど重要です。ILOは2019年に出した刊行物『Small matters(小さいことは価値がある・英語)』で従業員数49人以下の小規模経済単位は世界の雇用の7割近くを受け入れ、国内総生産(GDP)に相当に寄与しており、小さいことは本当に重要であることを示しました。

 平常時でも小規模事業の多くが毎月毎月を生き抜くのに苦労していることは周知の事実です。多くは、人間らしく働きがいのある労働条件を形成し、維持する特別の課題、すなわち全ての人にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を実現する目標、2030年までに持続可能な開発目標を達成することを阻む障害にも直面しています。

 物理的にも統計的にもほとんど目に見えない、零細企業や個人事業主などのより小規模の経済単位の場合は、危機の影響が既にどれほどの規模に及び、この危機が続いた場合にどれほどの危険にさらされるのか、あるいは新型コロナウイルスが貧困時計を針を戻して保健・経済危機から人道的災害を引き起こすのではないかといった懸念に応えるため、ILOは上記刊行物の作成に用いたデータベースを利用して課題を理解することを試みました。製造業、宿泊・飲食業、小売業など、新型コロナウイルスによって最も事業閉鎖が起こりやすい七つの産業部門を選び、産業部門、地域、経済単位の規模別、そして公式(フォーマル)・非公式(インフォーマル)の経済主体別に、この地球規模の課題を示す図を作成しました。

地域、事業種別、フォーマル/インフォーマル事業の別で見た新型コロナウイルスでリスクにさらされている産業部門の就業者数(単位:100万人)
英語本体では事業種別、産業部門毎、フォーマル・インフォーマル事業毎のデータを表示することができます。

 これによって、最もリスクが高い七つの産業部門だけで、零細企業であるいは個人事業主として働く人が世界全体で8億人を超え、その大半に当たる約6億4,000万人が非公式部門(インフォーマル・セクター)で働いていることが判明しました。アジア太平洋地域だけでも、この七つの産業部門で働く個人事業主は3億人以上に達し、その10人中9人までがインフォーマル・セクターで働いています。こういった高リスク部門には女性が不均衡に多く、より脆弱であることも分かりました。

 こういった状況に鑑み、政府は雇用や生計手段の重要な提供者として小規模事業を支援するだけでなく、個人事業主や零細企業を対象とする政策を実施する必要があります。インフォーマル・セクターに特に注意を払う必要もあります。

 既に判明していることとして、多くの政府にとって、インフォーマル事業のオーナーを特定し、ニーズを抱えている人々に到達するのは困難である可能性があります。公式の身分証明書番号がない人は世界全体で約10億人に上り、多くが銀行口座も開設していません。フェイスブックや電子メールのアカウント、SIMカードなど様々な情報源の情報を相互参照してデジタルIDを確立することが一つの道かもしれません。もう一つの選択肢として、市町村や地元のコミュニティーセンター、協会などを通じた自己紹介や個人特定も考えられます。政府は、例えば一時的な現金支給や家賃補助、世帯所得支援などで即時の所得ニーズを満たすと同時に、事業継続のための支援を提供する持続可能で適切な政策措置を策定すべきです。

 加えて、小規模経済単位はウイルスの感染拡大を予防し、事業の継続を確保するために、適時の簡単な安全衛生に関する助言や個人用保護具を受けられるようにすべきです。インフォーマル・セクターで働く人々などの脆弱な集団を含むよう社会的保護の適用を広げることは、大きな前進であり、今のような環境下では特に重要な一歩です。相当のコストがかかりますが、うまく進めて適切な支援や奨励策と組み合わせた場合、フォーマル化を促進する重要なきっかけとなり得ます。

 機会は今です。全てに通用する手立てがあるわけではなく、こういった脆弱な事業オーナーを支援する措置が実効性を持つには、社会対話を通じてまとめ、性差に配慮し、個々の国のニーズに合わせて策定される必要があります。

 今は困難な時代であり、小規模経済単位、とりわけインフォーマル・セクターで活動している経済単位は特に脆弱であることが判明しています。保健・経済危機が長引く人道的破局へと転換するのを避けるためには、今はより一層、小さいことは重要であると認めなくてはなりません。

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 以上はILO中小企業ユニットのドラガン・ラディックILO中小企業ユニット長によるILOのブログ「Work in progress(進行中の仕事)」への2020年5月21日付の英文投稿記事の抄訳です。