ILOブログ:新型コロナウイルス

オンライン学習・技能研修への移行が示す前途有望な趨勢と悩ましい兆候

 数百万の人々が自宅に留まることを余儀なくされる中、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的大流行はオンライン学習・訓練の爆発的な流行をもたらしました。これは機会である一方、課題も提示していることが示されています。

ILO雇用政策局ジャネット・サンチェス広報官

 新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的大流行は、e-ラーニングなどの遠隔学習・訓練への突然の移行を引き起こしました。学習や技能開発の機会を提供し続けるためにオンラインのプラットフォームやツールへと向かう大規模な移行は前途有望な趨勢と悩ましい兆候の両方を示しています。

 ILO技能・就業能力部が「就業のための技能グローバル官民知識共有プラットフォーム」を通じて2020年3月27日~4月17日に開催した「新型コロナウイルス危機の時代におけるオンライン学習・技能開発の継続オンライン討議」で示された兆候の一つは、デジタル学習の機会をより公平なものとするよう努力が払われているにもかかわらず、オンライン・プラットフォームへのアクセスは必ずしも質の高い平等な学習をもたらさないという点です。例えば、ウイルス禍の中で保育や家事支援がなくなったために不均衡に多くの女性が遠隔学習から切り離されています。

 討議には世界中から多数の実務家、訓練機関の代表、政策策定者が参加し、コロナ禍の影響に関連したそれぞれの経験を共有し、教育・訓練分野に登場した課題に光を当て、課題に取り組む解決策が提案されました。

 提起された課題には次のようなものがあります。オンライン講習を提供する適正な訓練を受けていないか、準備ができていない指導員。技術・職業教育訓練のカリキュラムをオンライン方式に適応させることの困難。学習・訓練を行う情報通信技術(ICT)機器やインターネットへのアクセスの欠如、評価を受ける用意が整っているにもかかわらず、新型コロナウイルス問題で評価を受けられない見習い実習生。オンライン・プラットフォームに不慣れなために訓練を続けるのに必要なリソースが得られない学生。

 しかし、このような課題にもかかわらず、学生、生徒、見習い実習生、技術・職業教育訓練の提供機関、政策策定者らは危機時における学習及び技能習得に関連して求められている重要な変化を受け入れつつあります。例えば、ウルグアイの国家雇用・職業訓練機関(INEFOP)は、遠隔講習や半出席型講習の導入を希望する機関からの提案を募集する緊急時対策を設け、これをもとに、対面式講習からオンライン方式へと移行する方法論を検討する場が作られました。

 バングラデシュではILOと政府の共同事業であるスキル21プロジェクトが同国初の技術・職業教育訓練部門のオンライン学習管理プラットフォームとなるe-キャンパスの設立に向けた作業を進めています。

 英国では教育・技能資金提供機関(ESFA)が新型コロナウイルスを原因として見習い実習生が実習を中断せざるを得なかったとしても可能な限り実習を継続し、修了できるよう確保する措置を講じています。

 新たな形態のパートナーシップも登場しました。例えばシリアでは開発援助機関のIECDのパートナーシップ活動がe-ラーニングを含むよう再編成され、建設、農業、製造業の最近の研修プログラムに関するビデオ制作が進められています。

 将来的に、このコロナ禍の中で遠隔学習を通じて容易に習得・強化できる技能が来たる世代の就労景観を変える可能性があります。短期的には人々を迅速に就労状態に戻すために新型コロナウイルス後に産業界や使用者に求められるようになる新たな技能について考える必要があります。これには対象を定めた技能集合や短期講習が含まれるかもしれません。長期的には遠隔就労者の採用がもっと一般的になるかもしれません。

 明らかなことが一つあります。それは私たちがこの危機から抜け出た時には、技能のより良い認定を確保するために、生涯学習の概念の中で非公式教育により特権的な位置を与えることが決定的に重要になるだろうということです。

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 以上はILO雇用政策局のジャネット・サンチェス広報官によるILOのブログ「Work in progress(進行中の仕事)」への2020年5月12日付の英文投稿記事の抄訳です。