論説:新型コロナウイルスと海運

新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的大流行の中で、貴重な業務を提供中の船員と漁船員

 新型コロナウイルスの世界的大流行による制限を理由として、現在、約9万人の船員が乗客のいないクルーズ船上に、時に給与も支払われずに留められており、商業船上でもほぼ同数の船員が当初予定よりもはるかに長い期間、船舶に留まることを強いられています。5月1日のメーデーを前に、ILO国際労働基準局長とILO部門別政策局長は、ウイルスの世界的大流行に際し、船員と漁船員を守る措置の実施を各国政府に呼びかけています。

コリンヌ・バルガILO国際労働基準局長(写真左)とアレット・バン・ルールILO部門別政策局長

 新型コロナウイルス(COVID-19)の大流行は世界中でかつてない状況を作り出しています。疾病の拡大を抑え、その影響を軽減するために世界中の政府が移動を制限し、国境を封鎖しています。多くの港湾や空港が閉鎖され、船舶は入港を拒否され、航空機は地上に留まっています。

 世界貿易の約9割が世界全体で200万人に上る船員の働きによって海運を通じて動かされています。商業漁業は世界の主要な食糧源です。

 長期にわたって船上に留まる多くの船員の疲労を防ぐためには乗組員の定期的な交替が必要です。その数は毎月約10万人に上ります。しかしながら、新型コロナウイルスの世界的大流行による制限を理由として、現在、約9万人の船員が乗客のいないクルーズ船上に、時に給与も支払われずに留められています。商業船上でもほぼ同数の船員が当初予定よりもはるかに長い期間、船舶に留まることを強いられています。ILOには世界中多くの港で直ちに陸上で医療を必要とする多くの船員が下船を拒否されているとの訴えが届いています。船員や漁船員がこのように実質的に取り残されている一方で、海上に戻れる日を待っている者達はしばしば収入源を断たれています。

 「2006年の海上の労働に関する条約」は、ウイルスの世界的大流行に際し、船員と船舶所有者の双方を支える強力で実用的な文書であることが立証されています。この条約に保護を求める船員と船舶所有者の声に応え、ILOは新型コロナウイルス流行の中で条約を実施する際の助言を提供する説明文書、そして海運及び漁業の新型コロナウイルスとの関わりをまとめた産業別概括資料を作成しました。

 さらにまた、新型コロナウイルスの突然の発生が海事産業にもたらした問題に対し、地球規模で調整を図った対応を考案・実施するために、国際海事機関(IMO)や世界保健機関(WHO)、国際海運会議所(ICS)、国際運輸労連(ITF)と力を合わせています。


 5月1日のメーデーを前に、コリンヌ・バルガILO国際労働基準局長とアレット・バン・ルールILO部門別政策局長は連名で以上のような英文論説記事を2020年4月30日付で発表し、ウイルスの世界的大流行に際し、船員と漁船員の安全と健康の保護を引き続き最優先事項とするよう訴えかけ、ILOが感染リスクを最小限に抑える措置を講じつつ、船員及び漁船員の帰国と乗組員交替を円滑化する可能なあらゆる措置を速やかに講じるよう各国政府に呼びかけていることを明らかにしています。