新型コロナウイルスと船員

ILO等国際機関共同声明:船上に取り残されている船員の状況は人道危機

記者発表 | 2020/09/15
船舶イメージ写真
© ILO

 現在、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的大流行に基づく港湾における乗下船や移動の制限、検疫措置、航空機の減便、旅券・査証の発行制限などを理由として、国連機関や船舶所有者団体、船員団体の必死の努力にもかかわらず、30万人以上の船員がなおも船上に取り残されており、下船・帰宅を切望しています。一方、交代要員として陸上で待機中の30万人は就労できない場合、経済的に破綻する危険性があります。多くの商業用漁船の漁船員も同じような問題に直面しています。

 このような状況に対し、ILO、国際海事機関(IMO)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、国際移住機関(IOM)、国連食糧農業機関(FAO)、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、国際民間航空機関(ICAO)、国連グローバル・コンパクトのトップは2020年9月10日付で共同声明を発表し、この事態を「人道危機」と呼び、乗組員の交代を妨げるあらゆる障害を速やかに取り除くよう、測定可能な時限計画を立て、実行することを加盟国政府に呼びかけました。

 共同声明は、通商を途絶えさせずにグローバル・サプライチェーン(世界的な供給網)の活動継続を確保する上で船員が払っている犠牲を認め、政府が講じるべき即時の行動の一覧を示しています。これには以下のような項目が含まれています。

  • 船員の基幹労働者指定
  • 船員が利用できる民間航空便の増大
  • 安全な乗組員交代手順の実施
  • ILOの「2006年の海上の労働に関する条約(改正)」に従い、船舶における最長の勤務期間である11カ月を超える雇用契約の延長の許可を差し控えること
  • 乗組員の交代ができる港に船舶が進路変更するのを円滑化すること
  • 船員の移動に引き続き適用されるかもしれない全国的あるいは局地的な移動制限の必要性の再検討

 ガイ・ライダーILO事務局長は、「共同声明に同意した国連機関の数と多様性は、これが船員と船舶所有者だけでなく、社会と統治体制のあらゆる側面に影響する問題であることを示しています」と指摘した上で、これは「船員の心身の健康を脅かす人道的問題、海洋環境に影響を与えかねない安全性の問題、船員が疲弊して意欲を失い、もはや働き続けることができない場合に貿易の遅れや停止が発生して経済回復の妨げになるかもしれないため、経済問題でもあります」と説き、政府に直ちに行動を取ることを迫っています。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。