ILOブログ:新型コロナウイルスと労働者保護

新型コロナウイルス危機の中で保健医療労働者を守る五つの方法

 保健医療制度と保健医療労働者は世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)との戦いにおいて決定的に重要な役割を演じており、その支援と保護のためには特別な措置が必要と、ILOの保健医療部門専門家らは説いています。

クリスチャン・ウィスコー保健医療部門専門官(写真左)及びマレン・ホプフェ保健医療部門技術専門官

 新型コロナウイルス(COVID-19)が流行している多くの都市でウイルスと戦っている多くの保健医療労働者に感謝の気持ちを示すため、夜々バルコニーや窓から人々が拍手をしたり、鍋などを打ち鳴らす姿が見られましたが、保健医療労働者は世界中で、ウイルスを抑え、命を救う日々の戦いの最前線に立っています。くたくたになって患者を救うために戦っているその姿は世界中の人々の心を打ちました。

 この危機の中で保健医療労働者が仕事を続けられるためには、その労働安全衛生が本質的に重要であり、その保護を最優先事項としなくてはなりません。そのために必要なこととして、次の5点を提案できます。

  1. 保健医療労働者の安全性維持
     最も重要なのは、保健医療労働者に加え、洗濯や清掃、医療廃棄物の処理などの作業を行う補佐要員の安全と健康を確保することです。最新の指針や感染予防策、その実施方法に関する情報など、疾病感染に関する情報を保健医療労働者とできるだけ迅速かつ幅広く共有する必要があります。保健医療部門の労使対話は政策・ポリシーや手順の適切な実施を確保できる可能性があります。
     個人用保護具が入手でき、それらを正しく用いる方法に関する教育訓練を受けられることが決定的に重要です。さらに、保健医療労働者の健康と患者の安全を支えるため、新型コロナウイルスの感染検査ができるだけ幅広く得られるようにすべきです。
  2. 精神衛生の保護
     ウイルスの流行によって保健医療労働者は異常なほど要求度の高い状況に直面しています。仕事量の多さに加え、時に難しい決定や前代未聞の死亡率に直面して深く傷つきながら、保健医療労働者は感染の恐怖や家族・友人に感染させるかもしれない不安に対処しなくてはなりません。
     例えば、2014年に西アフリカで広がったエボラウイルスによる感染症などの、ほかの感染拡大から得られた教訓として、保健医療労働者は感染を恐れる大衆からの差別や不名誉な烙印を押される経験をするかもしれないことが示されています。
     保健医療労働者に対するストレス対処法についての情報や指導、外傷後ストレス(PTS)障害に関するカウンセリングの提供に加え、チームや家族内、友人間での社会的な支援の提供を対応策の一環として加える必要があります。
  3. 労働時間の監視
     非常時には保健医療労働者は不規則な、そして時に普段通りでない状態で働くことを求められます。ウイルスの感染拡大に対応して多くの保健医療労働者が重い仕事量の追加、長時間労働、休息期間の欠如に直面しています。学校が閉鎖され、一般生活が制限されている国も多い中、私生活を管理し、家族の面倒を見なくてはなりません。
     保健医療労働者が業務の要求事項と自宅におけるケア責任及び自らの福祉を調和させるのを助ける適切な労働時間編成が必要です。
  4. 短期採用者や医療ボランティアの保護
     ウイルスの流行と戦うため、短期採用者やボランティア、軍などのほかの産業部門、引退した保健医療労働者、医学部や看護学校の学生の専門的な支援を募っている国もあります。こういった措置は必要なケアを確保できるという点で元気づけられるものではあるものの、このような労働者にほかの労働者と同じ就労上の保護が与えられるよう確保する注意深い実施が必要です。政府は適当な場合、労使と協議してそのような臨時採用を監視し、正規化する必要があります。同時に、社会的保護や報酬、休息期間、労働時間編成など、労働時間その他の雇用条件にも対処する必要があります。
  5. より多くの保健医療労働者の採用と訓練
     十分な数の適切な訓練を受け、支援が提供され、働く意欲のある保健医療労働者を採用・配置し、定着させることができるよう、全ての保健医療制度に投資がなされる必要があります。新型コロナウイルスの世界的大流行はあらゆる強靱な保健医療制度の不可欠な一部としての豊かな保健医療人材の緊急の必要性を改めて強調することになりました。これは現在、私たちの社会と経済の回復の必要不可欠な基盤、そして将来的な保健非常事態に備えるために必要不可欠な要素として認められているのです。

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 以上は、ILO部門別政策局保健医療部門を担当するクリスチャン・ウィスコー専門官とマレン・ホプフェ技術専門官によるILOのブログ「Work in progress(進行中の仕事)」への2020年4月1日付の英文投稿記事の抄訳です。