新型コロナウイルスと労働者保護

新型コロナウイルスの世界的大流行の中で効果的なテレワークを行うこつ

 新型肺炎コロナウイルス(COVID-19)の世界的大流行は、かつてないほど多くの人々が今、テレワーク、つまり情報通信技術を用いて事務所の外で仕事をしていることを意味します。ジョン・メッセンジャーILO労働条件専門官がテレワークから最大限の効果を引き出す方法について提案します。

広報動画:効果的なテレワークのためのコツを説くメッセンジャー専門官(英語・1分52秒)

 新型肺炎コロナウイルス(COVID-19)の世界的大流行の中、今はかつてないほど多くの人々がテレワーク、つまり情報通信技術を用いて事務所の外で仕事をしています。典型的なテレワークは、週に通常1~2日程度の限られた期間に用いられるものでしたが、今は多くの労働者がウイルス感染のリスクを減らすために常時テレワークを行っています。この危機の間は、臨時雇用の労働者やインターンも含め、テレワーク就労が可能な仕事を行っている人は誰でもテレワークができるべきです。

 もちろんテレワークはあらゆる作業環境のあらゆる職種に適しているわけではありません。それでもなお、テレワークの正しい実践は、新型コロナウイルスの流行に対する重要な対応要素の一つとなり得ます。テレワークをできるだけ効果的なものとするための実践的なヒントとして以下のようなものを挙げることができます。

  • 経営トップから最前線の監督者に至る経営陣・管理職による支援
    テレワークの効果的な実践を阻む最大の障壁は経営陣・管理職による抵抗であることが調査研究から示されています。テレワーカーの効果的な管理には成果型管理法が求められます。これは目標や業務内容、業務達成における節目を特定し、あまり負担となる報告を求めずに進捗状況を監視し、話し合うことを伴います。さらに、多くの学校や託児・介護施設が閉鎖中の今、育児や介護といったケア責任を担う労働者の場合、成果目標についてのある程度の調整を考慮に入れることが大切です。
  • 適切なツールと研修
    これにはテレワーク用のアプリやラップトップコンピュータなどの適切な機材、十分な技術的サポート、そして管理者とテレワーカー双方の訓練などが含まれます。フルタイム・テレワークに関連した社会的孤立の現実的なリスクに鑑み、テレワーカーが上司や同僚、組織全体と接触を維持できるよう手助けするあらゆる努力が必要です。
  • 期待事項の明確化
    テレワーカーに期待されている達成成果、就労条件、連絡可能な時間、進度を監視し、結果を報告する方法など、全ての当事者が結果について明確である必要があります。例えば、労働者の就労時間と非就労時間に関する明確な基本原則を定め、そのルールを尊重することが必要不可欠です。
  • 時間を司る権利
    テレワークは組織の通常の業務時間中に連絡可能な状態を維持しつつ、自分に最も都合の良い時間に都合の良い場所で働く柔軟性を労働者に提供することができます。これはテレワーカーが子どもや高齢の親、病気の家族の世話などといった個人的な責任のための時間を避けて有償労働のための時間を設定することを許すため、テレワークを効果的にするにはこの柔軟性が必要不可欠です。
  • 境界管理戦略
    たとえ期待されるものが明確であったとしても、それでもなお必要不可欠なのは、テレワーカーが有償労働と私生活との境界を効果的に管理できる個人的な戦略を自身で立てることです。これには邪魔されない専用の作業空間、休息と私生活用に取り置かれている特定の時間内は仕事から離れられることなどが含まれるべきです。
  • 信頼
    これら全てを結びつける接着剤は信頼です。管理職、テレワーカー、同僚は相互に信頼し合う必要があります。信頼なしにテレワークは効果的になり得ません。

 以上は労働時間の専門家であるジョン・メッセンジャーILO労働条件上級専門官による2020年3月26日付の英文論説記事の抄訳です。