若者と新型コロナウイルス

青少年の7割超が新型コロナウイルスによって教育を中断

記者発表 | 2020/08/11
青少年と新型コロナウイルス・グローバル調査の主な結果(英語・1分20秒)

 新型コロナウイルス(COVID-19)が流行し始めてから、学校や大学、訓練施設の閉鎖によって勉学あるいは労働と組み合わせた勉学に悪影響を受けたと回答した若者が調査対象者全体の7割を超えるといったように、新型コロナウイルス危機は若者の教育と訓練に破壊的な影響を与えており、不平等が強まり、若者世代全体の生産潜在力が低下する恐れがあると、8月12日の国際青少年デーに先立ち、ILOが発表した新刊書は記しています。

 ILOが「若者のための働きがいのある人間らしい仕事グローバル・イニシアチブ」のパートナー機関であるAIESEC、アフリカのための欧州連合緊急信託基金、欧州ユースフォーラム、国連人権高等弁務官事務所、国連子どもと若者メジャーグループと共同で2020年4~5月に実施した新型コロナウイルスに関する青少年対象グローバル調査の結果をまとめた新刊書『Youth and COVID-19: Impacts on jobs, education, rights and mental well-being(青少年と新型コロナウイルス:仕事、教育、権利、精神的に良好な状態に対する影響・英語)』からは、ウイルスの流行が始まって以来、国土封鎖状態の中で学習が教室におけるものから遠隔学習やオンライン学習に移行したせいで学習量が減少したと報告する若者が調査対象者の65%に達し、勉学や訓練を続けようとの努力にもかかわらず、そのうちの半数は勉学の遅れを感じており、9%は落第を危惧していることが判明しました。

 インターネットがそれほど普及しておらず、機器もそして時には自宅で学ぶスペースもない、より低所得の国々で暮らす若者の状況はさらに悪く、高所得国では若者の65%がオンライン講義などで授業を受け続けられているのに対し、低所得国ではインターネット経由で学習を継続できている若者はわずか18%に過ぎないといったように、これは地域間の大きな「デジタル格差」を明らかにしています。

 報告書によれば、危機によって労働市場における障害が増し、学校から仕事への移行期間の長期化が予想されるとして、将来のキャリア展望が不確実な若者が38%に達しています。ウイルスの流行が始まってから働けなくなったと回答する若者が6人に1人を占めるといったように、既に直接的な影響も感じられています。多くの若者がサポートやサービス、販売関連職といった、危機の影響が大きな職業に就いている可能性が高いことも、ウイルス流行の経済的影響に対して若者を一層弱くしています。仕事を続けている若者も42%が収入減を報告しています。調査対象の若者の50%が不安やうつ状態にあるかもしれず、17%がその蓋然性が高いといったように、これは若者の精神状態の良好さにも影響を与えています。

 ガイ・ライダーILO事務局長は、ウイルスの流行が仕事や雇用の展望を破壊しているだけでなく、教育や訓練を混乱させ、精神の良好な状態にも深刻な影響を与えているといったように、若者に「多様なショック」を与えていることを指摘し、「このような事態を発生させてはならない」と説いています。

 一方で調査からは、若者の4人に1人がウイルスの流行期間中に何らかのボランティア活動に従事したといったように、このように極度の状況にもかかわらず、若者が自らのエネルギーを用いて動員を図り、危機との戦いにおいて声を上げていることが示されています。

 新型コロナウイルス危機に対する、より包摂的な対応のためには、若者の声に耳を傾ける状況の確保が決定的に重要です。若者が自らのニーズや考えを表明できるよう意思決定の場における発言権を与えることは、政策や事業計画の効力を高め、若者に対策の実施に参加する機会を与えることにつながります。報告書はまた、失職者や労働時間の減少を経験している若者を再び労働市場に組み込むための措置や若者に失業保険給付の機会を確保すること、さらに心理社会的支援からスポーツ活動までに至る若者の精神衛生を向上させる措置など、危機が若者世代全体の雇用展望に永続的な傷跡を残すのを防ぐための、対象を定めた大規模な緊急政策対応を提唱しています。

 報告書は9章構成で、若者自らが感じている新型コロナウイルスの影響を示しています。第1章「序章」に続く第2章「調査標本の説明と調査法」でグローバル調査の詳しい説明を行った後、第3章「雇用」、第4章「教育訓練」、第5章「精神の良好な状態」、第6章「若者の権利」、第7章「積極的社会活動と若者の行動様式」、第8章「新型コロナウイルスの政策対応:若者の声と認識」の6分野に分けて、調査結果を詳しく示しています。最後に第9章「見出された主な事項と若者の雇用に関する政策行動」で調査結果を分野別にまとめ、政労使等に必要な政策行動を提案しています。

若者の国際青少年デー・メッセージ

 8月12日の国際青少年デーに合わせて複数の著名人から動画メッセージが届きました。インドの俳優アナニヤ・パーンデーさんは次のように若者を巻き込んだより良い立て直しを訴えています。

アナニヤ・パーンデーさんの国際青少年デー・メッセージ(英語・56秒)
 新型コロナウイルス(COVID-19)危機は若者を激しく打ち、教育や学習を危険にさらしています。ILOの最新の見積もりによれば、学んでいるあるいは仕事と学習を両立させている若者の7割以上が学校や大学、訓練所の閉鎖による悪影響を受けたとされます。教室からオンライン学習への移行も簡単ではなく、デジタル格差が学習をやっかいなものとしています。
 新型コロナウイルスの世界的大流行はまた、仕事や雇用機会も破壊し、若者の精神の良好な状態にも影響を与えています。私たちはこの状況を是正しなくてはなりません。その方法ですが、まずは政策決定に若者を関与させ、その声に積極的に耳を傾け、声を広げ、若者を守り、若者の育成を助ける生態系を作ることから始めましょう。この危機を、より良い仕事の未来を立て直す機会に変えようではありませんか。

 トルコの俳優デメット・アクバァさんは、若者ロックダウン世代の危険に直ちに取り組むことを呼びかけています。

デメット・アクバァさんの国際青少年デー・メッセージ(トルコ語・英語字幕付・50秒)
 新型コロナウイルス(COVID-19)の経済危機は若者、とりわけ若い女性に大きな打撃を与えています。残念なことに、この3月以降、若者の6人に1人以上が職を失っています。仕事がある人々もあらゆる種類の不確実性と戦っています。私デメット・アクバァは若者を今助ける大規模かつ対象を定めた緊急の政策対応行動を呼びかけているILOに賛成です。私たちの即時の行動が、この社会の最大の危険の一つである若者ロックダウン世代の誕生というリスクに対処するカギを握っているのです。

 オリンピック優勝経験もあるエチオピアのマラソン元世界記録保持者のハイレ・ゲブレセラシェさんは、新型コロナウイルス対応はマラソンのようなものだとして、若者により良い未来を築く政策の設計に若者を巻き込む必要性を説いています。

ハイレ・ゲブレセラシェさんの国際青少年デー・メッセージ(英語・1分10秒)
 新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的大流行は前代未聞で世界規模の社会・経済的危機をもたらしており、若者はその影響を特に強く受けています。若者から仕事を奪い去り、疎外化を強め、教育に深刻な混乱を招いています。アフリカでは非公式(インフォーマル)経済の存在と基本的な社会的保護の欠如によって状況はさらに悪くなっています。
 新型コロナウイルスとの戦いはマラソンのようなものです。明確な優先事項を定め、望む未来に向けて今投資するのです。これは若者の関与なしには行えません。とりわけ若者に影響を与える政策の設計と実施においてはそう言えます。私ハイレ・ゲブレセラシェは国際青少年デーに際し、ILOと共に立ち、責任を引き受けて、より良い仕事の未来に向けた立て直しのために一致団結してくれるよう全ての国に呼びかけたいと思います。

 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。