国際家事労働者デー

新型コロナウイルスによって生計が脅かされている家事労働者は5,500万人以上

記者発表 | 2020/06/16

 2011年のILO総会で家事労働者条約(第189号)が採択された6月16日は国際家事労働者デーとされています。今年の国際デーに際して発表された、新型コロナウイルス(COVID-19)の家事労働者に対する影響をまとめた資料は、世界の家事労働者の4分の3近い5,500万人以上が都市封鎖や実効的な社会保障の適用がないために仕事や収入を失う相当の危険に直面していることを明らかにしています。6月初めに行われた評価によれば、影響が最も大きな地域は、家事労働者の76%がこのような危険に瀕している東南アジア・太平洋であり、これに米州(危険に瀕している労働者は74%)、アフリカ(同72%)、欧州(同45%)が続いています。

 厳しい都市封鎖が敷かれている国では家事労働者は働きに行くことができず、公式(フォーマル)就業でも非公式(インフォーマル)就業でも影響を受けていますが、労働時間の減少や仕事を失う危険に瀕している家事労働者の76%をインフォーマル就業者が占めています。フォーマル就業者の一部はまだ失業保険を受給できるものの、インフォーマル就業者の場合は、自宅に留まることは頼れる安全網なしに生計手段を失うことを意味し、日々の食事にも事欠く状態になっています。

 ウイルスの世界的大流行はまた、以前から存在していた問題を悪化させる結果にもなっています。社会保障が適用されているのは家事労働者の1割に過ぎず、残りは有給疾病休暇も保健医療利用機会の保障も業務災害給付も失業保険もないことを意味します。賃金が平均賃金の25%程度の家事労働者も多く、経済的な緊急時に頼れる貯蓄もできないままでいます。

 地域によっては家事労働者はもっぱら移民ですが、賃金不払いや送金業務の閉鎖は、家事労働者からの賃金に頼っている出身国の家族を飢えと貧困に直面させる危険があります。

 住み込み家事労働者のほとんどが雇い主と一緒に閉じ込められて働き続けていますが、学校閉鎖のために労働時間が長くなったり、掃除の要求度が高くなっていることを推測させる報告が届いています。雇い主自身の経済事情や外出できない家事労働者に給与は不要との考えの下、雇い主からの支払いが止まっている場合もあります。移民家事労働者に雇い主との同居義務がある幾つかの国では、ウイルス感染を恐れた雇い主に解雇された労働者が路頭に迷っている例もあり、人身取引の被害を受ける危険もあります。

 脆弱な労働者の問題を担当するILOのクレア・ホブデン技術専門官は、新型コロナウイルス危機によって、その特別な脆弱性が露わになったインフォーマルな家事労働者を労働者保護及び社会的保護の対象に実効的に含むよう確保する緊急の必要性が強調されていることを指摘しています。さらに、この事態が世界全体で3,700万人に上る、家事労働者の大半を占める女性に不均衡に大きな影響を与えている点に注意を喚起しています。

 ILOは家事労働者の健康と生計手段の確保に向けて家事労働者団体や使用者団体と協働しています。政府が少なくとも必要不可欠な保健医療や基本的な所得保障などを含む基本的な社会保障を保障する政策を考案できるよう家事労働者が直面しているリスクの性格や水準を調べる緊急評価を実施しています。

 家事労働者のディーセント・ワークについて定める第189号条約の批准国は2020年6月現在、29カ国ですが、労働者保護や社会的保護を家事労働者にも広げる具体的な措置を講じた国は他にも多くあり、ILOがそのための支援を提供した国も60カ国余りに上ります。こういった措置はフォーマル就業の家事労働者を増やすことになったものの、全体的なインフォーマル就業者比率は依然として高く、ILOでは、将来的なショックから家事労働者を守るためにフォーマル化を進める取り組みを緊急に速めることを呼びかけています。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。