世界海洋デー

世界海洋デーILOメッセージ:新型コロナウイルスのために船上に留められている15万人以上の船員の解放を

Press release | 08 June 2020

 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染抑制措置によって世界中で15万~20万人の船員が船から降りることができずに船上に留められているとみられます。6月8日の世界海洋デーに際し、ILOはこういった船員の解放に向けて調整を図った緊急の行動を呼びかけています。

 船上に留められている船員の多くが勤務期間を終えて4カ月以上経ちますが、危機のために契約が例外的に延長され、今や精神衛生上の問題や身体的疲労も多く報告されており、これは職務を安全にこなす能力を低下させるものです。一方で、新型コロナウイルスの拡大を防ぐために複数の国で課されている乗組員の交代に対する制限は、乗船待機中の船員が収入を失っていることを意味します。

 世界デーに際し、ILOは政府、入国管理局、保健機関、海事機関が一体となって、ウイルスの世界的大流行の中でも貿易の流れや、必要不可欠な医薬備品、安全具、食料その他の重要物資の移動を確保している船員を「基幹労働者」として認めるよう呼びかけています。ILOは加盟国政府に向け、「2006年の海上の労働に関する条約」の諸規定を挙げて、感染リスクを最小化する措置を講じつつ、乗組員の交代と帰国を円滑化する可能なあらゆる措置を遅滞なく講じることを求めています。

 「海上の労働に関する条約」に基づいて設置されているILOの特別三者委員会も3月末に、委員長、副委員長の役員名で、船員を移動制限の適用除外とすることを求める共同声明を発表し、5月1日のメーデーに際しては、コリンヌ・バルガILO国際労働基準局長とアレット・バン・ルールILO部門別政策局長が連名で、船を去ることを許されない船員の苦境を訴える論説記事を発表しましたが、1カ月以上経った今でもなお、限られた進展しかなく、状況は日に日に悪化しているとILOでは見ています。

 ガイ・ライダーILO事務局長は、契約終了後4カ月以上も、疲弊した船員が働き続けるよう強いられていることについて、「許容できない」として、これは船員の健康を損ない、海上の安全を危険にさらすことに注意を喚起し、「船員のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を確保し、海難事故及び環境災害を回避するためにも今行動が必要」と訴え、乗組員の交代が安全に行われるよう共に取り組むことを各国政府に呼びかけています。さらに、船員を「基幹労働者」として認め、医薬品、食料その他の必要物資を私たちに供給し続けるために頑張ってきた乗組員が帰宅でき、元気な乗組員と交代できるよう緊急に必要な措置を講じることを求めています。

 ILOは5月22日にも、国際民間航空機関(ICAO)、国際海事機関(IMO)と共に発表した共同声明で、船員に基幹労働者の地位を与えることを要請しました。これによって乗組員は移動制限の適用対象外となり、乗船・下船が円滑化されます。国際海運会議所(ICS)、国際労働組合総連合(ITUC)、国際運輸労連(ITF)も5月21日付でアントニオ・グテーレス国連事務総長に書簡を送り、船上に留められている乗組員の心身の健康に対するリスクに光を当て、最も弱い人が自傷行為や果てには自殺に走る可能性に懸念を表明し、状況の緊急性に注意を喚起しました。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。