ILO新刊:労使協力

危機時に最も重要な労使の連帯:ILO新刊

Press release | 09 April 2020

 新型コロナウイルス(COVID-19)は世界中多くの場所で数百万の人々の健康と安全を脅かし、企業や仕事、生計を重く圧迫しています。危機時における会員制使用者・企業団体と労働者団体の共同活動や対話は経済・社会の進歩を後押しし、回復速度を高める可能性があります。

 ILOがこの度発表した新刊書『Managing conflicts and disasters: Exploring collaboration between employers' and workers' organizations(紛争と災害の管理:労使団体間の協力体制の探究・英語)』は、コロナウイルスの世界的大流行が仕事の世界に与える影響に効果的に対応するには、使用者団体と労働者団体との共同努力と連帯が決定的に重要と説いています。ILOの労働者活動局使用者活動局が共同でまとめた本書は、社会的パートナーである労使が取った、時に自然な共同活動が自然災害や人災の幾つかの最悪の結果を緩和し、回復速度を高め、将来的な危機に対処する強靱性を強めるのを助けた具体的な事例に光を当てています。

 例えば、コートジボワールでは、実質的に国を二分した武力紛争によって2002年に発生した深刻な景気後退の際、労使団体の代表で構成される話し合いの場(独立常設対話委員会)を通じて、労働者に対する一時解雇の負担を緩和する仕組みについての交渉が行われました。解決策として考案された、有給一時解雇期間の延長その他の措置は必要な労働能力を保ちつつ、一時解雇される労働者数を可能な限り少なく抑えることを確保する助けになりました。

 現下のコロナウイルス危機に際しても、既にベルギーやラトビア、モロッコ、パキスタン、スペイン、スウェーデン、ウガンダなど世界中で、コロナウイルス対応についての労使の社会対話や共同イニシアチブが記録されています。このような社会的パートナーの活動は公衆衛生機関や政府の活動を補強し、補完する決定的に重要な役割を演じており、リスクを緩和し、危機的状況に応えるその役割の重要性を再確認させるものとなっています。

 報告書はまた、紛争や災害に起因する危機的状況に対処する適切な対応を形成する枠組みを提供するものとして、「2017年の平和及び強靱性のための雇用及び適切な仕事勧告(第205号)」がこのような状況下で有用な参考文書になることを指摘しています。

 労使団体の共同努力の潜在力について、使用者活動局のデボラ・フランス=マッサン局長は次のように説明します。「企業リーダーは、平和と安定性に対する既得権益、そして危機的状況に対して十分に備えているという既得権益があり、一方で組合は労働力のための立法や憲法改正に向けたロビー活動の場合であろうと、人道支援が求められる際に迅速かつ効果的に行動する場合であろうと、組合員を通じた巨大な動員潜在力を秘めています」。労働者活動局のマリア・エレナ・アンドレ局長は、本書が世界中の労使団体に災害や紛争といった複雑な状況下だけでなく、コロナウイルスのような世界的流行病の際にも自分たちが既に果たしているあるいは果たし得る独特の補完的役割に気づかせる助けになることへの希望を示した上で、「ILOは基準分野の任務と政労使三者構成原則というこの組織の力を活用し、この共通の政策課題の支援に私たちの資源・資力を注ぎ続けます」と述べています。

 5節構成の本書は、序節に続き、2011年の東日本大震災の際の日本労働組合総連合会(連合)による全国的な労働者動員を通じた救援・復興支援、フィリピン政労使による日本の復興経験視察といった日本の事例も含む、紛争、災害、集団避難における労使の様々な活動を紹介した上で、最終節でこのような状況の分析から得られた結論を提示しています。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。