コロナウイルス感染拡大の中、ILO COOP100周年行事がバーチャル始動!

ニュース記事 | 2020/03/25
2020年3月23日、ILOは協同組合ユニットの100周年キックオフイベントとしてウェビナーを開催しました。3月23日は、アルベール・トーマ初代事務局長の事務局組織編成の提案の一部として、協同組合ユニット設立(当時はSection of Co-operation)が理事会で採択された日です。

COVID-19の状況とスイス政府の指示により、ライブウェビナーのみの開催となりました。本イベントの趣旨は、協同組合と広義の社会連帯経済(SSE)の発展においてILOが果たしてきた役割、そして、変わりゆく仕事の世界の中で果たしうる役割を示すことでした。シメル・エシムILO協同組合ユニットマネージャーが進行役となり、以下5名が登壇しました。
  • マリーケ・ルイ(グルノーブル政治学院 准教授)
  • ユルゲン・シュベットマン(元ILO職員、2000-2006年ILO協同組合ユニット長)
  • アナ・ビオンディ(ILO労働者活動局副局長)
  • ラミン・ベザット(ILOイラン代表、イラン協同組合労働社会福祉省)
  • コートニー・カボット=ベントン(コンサルタント、強制移動に対する協同組合の対応に関するILO報告書執筆者)

ウェビナーには、50か国以上から110名を超える参加者が集まりました。エシム氏はアルベール・トーマ初代ILO事務局長が提示した、ILO協同組合ユニット設立(当時はSection of Co-operation)に関する提案書の言葉を引用し、ウェビナーを開始しました。「講和条約では国際労働機関が労働条件のみならず、労働者の置かれている状況についても関与していくことが求められています。この考え方が大衆の中で最もよく体現されているのは、協同組合という形です。」

開会の挨拶に続き、ルイ氏の発表はILOと協同組合運動との歴史的なつながりに焦点をあて、協同組合がILOの第4の構成者として組み込まれなかった理由(現在は政労使の三者構成)にも触れました。その後、ILOと協同組合運動の関係性の主軸は、政治的な領域からより技術的、実践的な活動へと移っていきました。ルイ氏の発表資料はこちらからご覧いただけます。(英語)

 
ウェビナー登壇者

シュベットマン氏は、農村経済とインフォーマル経済における、協同組合モデルの歴史的な関連性について述べ、自助・相互扶助・連帯という価値観の重要性について強調しました。そして、1920年代から協同組合の発展に対し、ILOが貢献した軌跡(特に1960年代から1980年代にかけて全盛期を迎えた開発協力プロジェクトを通して)について説明しました。更に、世界120か国近くで協同組合の原則や法律を整備する際の参考にされてきた、ILOの2002年の協同組合促進勧告(第193号)の重要性を強調しました。変わりゆく仕事の世界に関しては、技術革新・人口動態・気候変動などの世界的動向の中で、人々のニーズに応えるために、協同組合と社会連帯経済が担いうる役割について考察を深めました。

ビオンディ氏はILOと協同組合運動の歴史的な連携と、すべての人のディーセント・ワークを推進する上で協同組合事業にとっての課題と機会について発表し、ILOの SYNDICOOPプロジェクト(労働組合と協同組合による共同イニシアチブ。東アフリカのインフォーマル経済で働く人々を組織することを目的とする。)での経験を強調しました。更に、ディーセント・ワークを推進するため、協同組合の価値観や原則に反して労働者の権利を傷つける“偽の”協同組合に対抗する協働も含めた、この2者の継続的な連携を願っていると述べました。

ベザット氏はイランの経済・社会的発展における協同組合の重要性を強調し、協同組合はイランの憲法と国家の開発計画に組み込まれていると述べました。協同組合と社会連帯経済の役割は2019年の「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」でも言及されているとし、協同組合に関連する上記以外の最近の国際基準を挙げました:2015年の非公式な経済から公式な経済への移行勧告(第204号)、2017年の平和及び強靱性のための雇用及び適切な仕事勧告(第205号)、2018年の第20回国際労働統計家会議にて採択された協同組合統計に関する指針等。更に、COPACの協同組合統計に関する技術分科会を含む、指針適用の過程について詳しく述べました。

カボット=ベントン氏は仕事の世界の課題に対する協同組合の具体的な対応として、強制移動に対する協同組合と社会連帯経済組織の対応について、最近発表されたILOのマッピング・スタディからいくつかの研究結果を紹介しました。この研究によると、協同組合と社会連帯経済組織は実際のサービス提供のみならず、コミュニティの社会能力向上と平和構築にも寄与しています。成功の鍵の一つは、協同組合組織の民主主義的な参加型運営構造を尊重することと、組合員のニーズと自助・相互扶助・連帯のような協同組合の価値観に焦点を当てることです。カボット=ベントン氏の発表資料はこちらからご覧いただけます。(英語)

ヴィク・ヴァン・ヴューレン企業局長は現在のCOVID-19危機に立ち向かうために、より大きな役割を担うよう協同組合運動が必要であることを強調し、これからの数カ月でコロナウイルス危機によって少なくとも2500万の仕事が失われるとしたILOの最近の推計を取り上げました。「私たちは次の100年に向かって新しい段階に入っています。100年前に協同組合ユニットを始めた人々と同様の情熱と信念をもって進まなければなりません。彼らから学び、仕事や富を失い苦しむ人々を助けられるよう、積極的創造的に前進しましょう。」

ディーセント・ワークと持続可能な開発への協同組合と社会連帯経済の貢献をテーマとしたウェビナー・シリーズはILO COOP100周年を通して開催される予定です。