新型コロナウイルスと仕事の世界

新型コロナウイルスに起因する壊滅的な規模の労働時間及び雇用の消失が発生-ILO資料

Press release | 07 April 2020
コロナウイルスが広がりを見せる中、援助物資として低所得世帯に食料を配るボランティア(パナマ市) © Luis ACOSTA / AFP

 新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的大流行を理由とする職場の全面的または部分的な閉鎖の影響は現在、33億人を数える世界の労働力人口の5人中4人を超える81%の人々に及んでいます。

 ILOは3月18日に発表した調査研究資料でコロナウイルスの影響によって失業者数が世界全体で2,500万人増えるとの当初予測を示しましたが、4月7日に発表したこの更新版『ILO monitor 2nd edition: COVID-19 and the world of work(新型コロナウイルスと仕事の世界ILOモニタリング第2版・英語)』は、失業者数が2020年にどれだけ増えるかは今後の展開と政策措置に大きく左右されるものの、年末時の数字は当初予測を大幅に上回る危険性が高いと記しています。

 コロナウイルス危機を「第二次世界大戦後最悪の地球規模の危機」ととらえるこの資料は、2020年第2四半期に、フルタイム労働者換算で1億9,500万人分に相当する世界の労働時間合計の6.7%が吹き飛ぶとの予想を示しています。予想される減少幅が大きいのは、地域別で見ると、アラブ諸国(フルタイム労働者換算で500万人分に相当する合計労働時間8.1%減)、欧州(フルタイム労働者換算で1,200万人分に相当する合計労働時間7.8%減)、アジア太平洋(フルタイム労働者換算で1億2,500万人分に相当する合計労働時間7.2%減)となっています。

 国の所得水準にかかわらず、全ての国家群で大きな減少が予想されますが、減少幅が特に大きいのは上位中所得国群であり、2008~09年の世界金融危機時の影響をはるかに超えるフルタイム労働者換算で1億人分に相当する合計労働時間7.0%減が予想されます。

 新たな資料には、この世界的大流行が地域や産業部門に与える影響に関する情報も含まれています。宿泊・飲食業、製造業、小売業、事業支援・事務管理活動といった、一時解雇や賃金・労働時間の減少が「劇的かつ破壊的」なくらいに増加するリスクが高いと見られる産業部門の就業者数は世界全体で12.5億人に上ります。その多くが突然の収入減が破滅的な影響を与える低賃金の低技能職です。地域別で見ると、こういった危機的部門の就業者比率は米州の43%からアフリカの26%までばらつきがあります。アフリカを始めとする幾つかの地域における高い非公式(インフォーマル)就業者比率は、未整備の社会的保護、高人口密度、対処能力の弱さと合わさって、政府に保健・経済面の深刻な課題を提示しています。

 さらに、新興国、途上国を中心に世界全体で20億人を数える非公式部門(インフォーマル・セクター)の労働者は特にリスクにさらされています。

 評価資料は、1)企業、雇用、収入の支援、2)経済・雇用の刺激、3)職場における労働者保護、4)政労使の社会対話を用いた解決策探求の4本柱に重点を置いた大規模な総合的政策措置の必要性を説いています。

 ガイ・ライダーILO事務局長は、「先進国でも途上国でも労働者と企業は破局に直面しています」と指摘して、「適正な緊急措置が生存か崩壊かの違いをもたらす可能性」があるとして、「一丸となっての決然とした迅速な行動」を呼びかけています。さらに、「この75年以上で最大の国際協力の試練」について、事務局長は次のように説いています。「一つの国が失敗すれば、私たち皆が失敗します。最も脆弱で、独りで切り抜けることが最もできない人々を中心に、地球社会のあらゆる層を助ける解決策を見つけなくてはなりません。私たちが今日行う選択は、この危機が展開する方向、したがって、数十億人の人々の暮らしに直接影響を与えるでしょう。正しい措置によってその影響、そして残される傷跡を制限することができます。新たな制度がこの危機の発生を許したものよりも安全かつ公正でより持続可能なものとなるように、より良い再建を目指さなくてはなりません」。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。