ILO事務所

ILOがバグダッドに初の調整事務所を開設

記者発表 | 2020/03/10
休憩中のバグダッドの建設労働者 © ILO/Apex Image

 ILOは2020年3月8日にイラクの首都バグダッドに同国初の調整事務所を開設しました。これによってディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の促進及び雇用機会の拡大に向けてILOが同国政労使に提供している支援の向上、イラク全土で進められている開発に焦点を当てた他の国連機関の活動の後押しが可能になります。

 ILOのプログラム調整事務所の開設は2019年のILO理事会においてイラクの労働・社会大臣から出された要請に応えるものです。イラクの政労使はILOと共に2019年12月に、人々のディーセント・ワークの実現を目指す同国初のディーセント・ワーク国別計画をまとめましたが、事務所はこの実施を調整します。2023年までを期間とする国別計画は雇用促進、就労に関わる権利、社会対話、社会的保護に関する同国のイニシアチブを支えるものであり、国内政労使とILOの緊密な連携を通じて実施されます。国別計画には、国家雇用政策の策定や職業安定組織の整備、技能及び企業の育成に加え、全国規模の労働力調査や雇用集約型投資計画の実施も含まれています。

 ルバ・ジャラダットILOアラブ総局長はイラクに対するILOの関与の強化が、労働市場の課題に対する取り組み、人間らしく働きがいのある就労機会の促進、社会的保護の強化、成長率の後押し、脆弱な非公式(インフォーマル)労働の減少に寄与することへの期待を示すものとして次のように語っています。「数十年に及ぶ紛争から立ち直ろうとしているイラクの政労使に対し、緊急に必要な雇用とディーセント・ワークを生み出すために必要な支援を提供できることを期待しています。新たに開設された調整事務所はまた、ILOがイラク国内で活動している他の国連機関により良く関与し、同国における国連の活動の手法が主として人道支援的なものからもっと開発に焦点を当てたものへと移行するのを支援できるものと思います。危機後のイラクにおいて、同国の復興・改革過程の中心にディーセント・ワークが置かれることを確保するためにも現場にILOが存在することが必須になるでしょう」。

 調整事務所のトップには同国のプログラム調整官を務めていたマハ・カッターがILO駐イラク代表として就任します。バグダッド事務所は、クルディスタン地域の主都エルビルにあるプロジェクト事務所で現在進められている活動の調整を図ると共に、多数のプロジェクトの実施を監督します。これにはオランダ政府の任意資金協力を受け、ILO、世界銀行、国際金融公社(IFC)、国連児童基金(UNICEF)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)がイラクを含む8カ国で共同実施している難民、避難民、地元受入共同体の雇用・教育展望改善に向けた事業計画の国内事業分も含まれます。

 1932年にILOに加盟したイラクはこれまでに8基本条約全てを含む68本のILO条約を批准しています。ILOとイラクの政労使は戦後再建努力の一環として、2004年からディーセント・ワークを後押しし、国内各地の労働市場を育むために密接に協働してきました。共同活動の最近の実績として、就労に関わる基本的な原則と権利の向上を図る新労働法の制定、「1948年の結社の自由及び団結権保護条約(第87号)」や「2006年の職業上の安全及び健康促進枠組条約(第187号)」といったILO条約の批准、クルディスタン地域における公共職業安定所整備のための行程表の設計などを挙げることができます。

バグダッド事務所の開設について語るフランク・ハゲマンILOアラブ総局次長とマハ・カッター新ILO駐イラク代表(英語・3分21秒)

 以上はバグダッド発英文記者発表の抄訳です。