ILO新刊:児童労働・強制労働

ウズベキスタンの綿花畑における強制労働・児童労働の減少続く

記者発表 | 2020/02/05
綿花収穫中の労働者

 ILOは2013年からウズベキスタンで綿花収穫における児童労働のモニタリングを開始し、2015年からは世界銀行との合意の一環として、モニタリング対象に強制労働も加え、毎年その結果を公表してきました。このたび発表された2019年収穫期のモニタリング結果は、かつては綿花収穫期に系統立てて全国的にみられた政府による児童労働と強制労働の利用がなくなったことを示しています。

 世界銀行に提出される報告書『Third party monitoring of child labour and forced labour during the 2019 cotton harvest in Uzbekistan(ウズベキスタンの2019年綿花収穫期における児童労働・強制労働第三者モニタリング・英語)』は、ウズベキスタンの木綿畑における労働者の基本的な権利に関わる大幅な進展を示しています。系統だった児童労働の利用はなくなり、これはもはや大きな懸念事項ではなくなりました。2019年の木綿収穫に携わった労働者の94%以上が任意で従事しており、学生や教員、医師や看護師の系統だった募集は完全に消滅しました。場所によってはまだ、国の機関や企業の職員が非自発的に動員されるケースも見られるものの、2019年に強制労働と判断された人の数は前年を40%下回る10万2,000人でした。

 ILOと世界銀行の勧告に従って木綿収穫に従事する労働者の賃金は引き上げられ、労働者の大半が交通や食事、衛生、水へのアクセスなどといった労働条件が前年より向上したことを報告しているものの、ILOの報告書は、さらに多くの労働者が集まるよう、さらなる賃上げと労働条件の改善を行うことを提案しています。

 2019年のモニタリングは初めて、ILOの訓練を受けた中立の立場にあるウズベキスタンの市民活動家らがILOの方法論を用いて実施しました。活動家らからは当局の介入なしにモニタリングが遂行できたとの報告が届いています。モニタリングを行った人権活動家のエレナ・ウルラエワさんは、2019年に新たに目撃された良い展開として、雇用・労働関係省から批判的な目で見るよう奨励されたこと、地元の役人から質問を受けた際に提示できる身分証明用の公式バッジを支給され、非常に助けになったこと、若者が複数加わって人権活動団体の増員が図られたことを挙げています。

 2019年には政府による法の執行努力も強められ、労働監督官数は倍増されて400人になりました。1,282件の強制労働案件の調査が行われ、2019年収穫期の強制労働違反で259人の政府職員、機関の長や管理職が処罰を受けました。大半に罰金が科されましたが、その額は2018年の10倍に引き上げられました。シャフカット・ミルジヨーエフ大統領は2020年1月に強制労働を犯罪とする新たな法に署名しました。

 「強制労働は全く許容できず、現代のウズベキスタンに存在する場所がないものです」と強調するウズベキスタン上院のタンジラ・ナルバエワ議長は、まだやるべきことが残っていると認めつつも、「改革によってこのような好結果が示されていることに元気づけられます」と語っています。また、農業制度の近代化と労働市場に関連した統治の強化が続けられる2020年は、「私たちにとって重要な年」であるとし、最近導入された強制労働を犯罪とする法の整備が効果的な抑止装置となることへの期待を表明しました。そして、この分野における進展をさらに支えるため、ILO、世界銀行、市民社会との協力を続けることへの希望しています。

 ウズベキスタンの木綿収穫作業従事者は175万人と見られますが、報告書はこの代表標本に対して調査員が単独で予告なく行った7,000件以上の聞き取り調査に基づいて作成されています。ハインツ・コラーILO欧州・中央アジア総局長は、「責任ある国際投資は、古い中央計画型の経済体制から脱し、国際労働基準の遵守を奨励する可能性があります」として、こういった改革の国際社会による支持を訴えています。また、政府と労使の社会的パートナーによる同国でディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を実現することを目指したディーセント・ワーク国別計画の実施を評価し、ILOは2020年以降も技術支援を提供し続ける予定であると語っています。

 ILOの第三者モニタリング・プロジェクトは、欧州連合、米国、スイス、ドイツの開発機関であるドイツ国際協力公社(GIZ)を主な拠出者とする複数拠出国・機関が関与する世界銀行の信託基金を財源として実施されています。


 以上はタシケント発英文記者発表の抄訳です。