国際労働機関(ILO)と電子情報技術産業協会(JEITA)がグローバルサプライチェーンにおけるCSR推進に関するセミナーを開催(2019年11月11日開催セミナー報告)

ニュース記事 | 2019/11/11
グローバルサプライチェーン上で、日本の電子・電機企業が労働面での企業の社会的責任(CSR)に関する方針や取り組みをさらに向上させていくことを目指すセミナーが東京で開催されました。電子・電機業界から約100名の参加者が集まり、主要なテーマについて意見を交わし、見解を共有しました。参加者の多くはJEITA会員企業のCSR担当者で、日本の電子・電機企業のアジアでのCSRの取り組みに関するILOの調査結果の発表等に耳を傾けました。
[写真:JEITA CSR委員会福田委員長
(パナソニック)による開会挨拶 ]

 
ILOの調査を実施した後藤教授(関西大学)による基調講演では、調査報告として日本の電子・電機企業のアジアのサプライチェーンにおける事例が発表されました。同調査では、十数社の日本の電子・電機企業に対して書面調査とインタビューを行い、外国直接投資(FDI)とアウトソーシングに区分して事例を分析しました。企業がデファクトで(事実上の理由から)、グローバル・サプライチェーンにおいて社会的責任を遂行・促進し、ディーセント・ワークを推進していくのは、長期的に見ると企業にとって意味あるものであるからだということが明らかにされました。[写真: 後藤教授(関西大学)による基調講演  ]

これに続くパネルディスカッションでは、東芝とNECがアジアのサプライチェーンにおける取り組み事例を発表し、ロイドレジスタージャパンによるコメントを交えて議論が展開されました。このパネルでは、様々な関係者間でサプライチェーンにおけるCSRに対する意識を高めていくことの重要性のほか、サプライヤーや自社労働者との間で良好な関係を構築していくことの意義が強調されました。
[写真:パネルディスカッション]

本セミナーは、「グローバル・サプライチェーンにおける責任ある労働慣行と持続可能な事業の両立を目指して~日本の電子・電機企業と海外の事例に学ぶ~」と題し、欧州連合(EU)、ILO、経済協力開発機構(OECD)が共同で実施する「アジアにおける責任あるサプライチェーン」プロジェクトの下で開催されました。同プロジェクトは、アジアの6ヵ国で実施され、企業活動における労働に関する権利と環境問題への配慮を向上させることを目的としています。

指針としての国際文書


続いて、「アジアにおける責任あるサプライチェーン」プロジェクトの責任者であるフレディ・グアヤカンが、同プロジェクトのタイと中国における最近の成果を紹介しました。そして、ILOの多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)が今後の方針を定める上で有効なツールであることを説明しました。多国籍企業宣言に加えて、持続可能な開発目標(SDGs)や他の国際的な指針にも言及しながら、労働CSRの重要性が示されました。サプライチェーンにおいてCSRを進めていく上では、あらゆる関係者との対話とパートナーシップが鍵となることも強調されました。[写真:フレディ・グアヤカン(ILO)による報告]

発表に続き、電子・電機業界の政労使対話が開催されました。厚生労働省からは、アジアにおけるディーセント・ワークの推進に関するこれまでの取り組みとして、日本政府が資金拠出してベトナムの電子・電機業界を対象に実施されたILOのプロジェクト「社会的責任ある労働慣行による、より多くのより良い仕事の創出」などについて説明がありました。全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会(電機連合)からは、国際活動も含めて建設的な労使関係の構築における役割を説明しました。JEITAのCSR委員会は、今回のような対話が非常に有意義で企業のCSR活動を一層促進させていくことに役立つと述べました。[写真:政労使対話]                 
            
最後に、JEITAのCSR委員会より、サプライチェーンにおけるCSRの取り組みを進めていくためには、サプライヤーも含めたあらゆる関係者間で継続的な対話を進める必要があることと、好事例の共有が非常に有益であることが述べられ、本セミナーは閉会となりました。

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「アジアにおける責任あるサプライチェーン」プログラムは、EUが資金拠出してILO、OECDとの緊密な連携により立ち上げられました。アジアの6ヵ国(中国、日本、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム)で実施され、企業の社会的責任(CSR)と責任ある企業行動(RBC)に関する課題や機会を話し合う場を提供しています。プログラムでは、国際的に認められた指針であるILOの多国籍企業宣言とOECDの多国籍企業行動指針に基づいて、調査、普及、政策アドボカシー、セミナー開催等の活動に取り組んでいます。