ILO新刊:障害と仕事の未来

新刊:障害者が将来的な仕事の世界に加わるためには新たな行程表が必要

記者発表 | 2019/11/21

 科学技術、技能、文化の変化、人口構造の変化、気候変動に関連して仕事の世界を作り替えつつある大規模な新たな趨勢は、仕事や生活の質を改善する潜在力を秘めているものの、相当な課題も伴っていると、国境横断イニシアチブである「持続可能な成長と社会革新のための欧州障害中枢」の枠内で、ILOのビジネスと障害グローバル・ネットワークが同中枢の技術事務局であるKPMGスペイン社及びスペイン視覚障害者全国組織(ONCE)財団と共同で制作した新刊書は記しています。『Making the future of work inclusive of people with disabilities(障害者を包摂した仕事の未来へ・英語)』と題する共同刊行物は、新たな動向の「結果は明確ではないものの、不平等の拡大と、障害者のような社会の、より不利な部分に対する影響は懸念事項であり、戦略的なリスクの増大」に当たると指摘し、障害者などの不利な立場の集団がこの変容から利益を得るためには、「新たな行程表が必要」と説いています。

 世界全体で10億人と推定される障害者は、既に仕事の世界への参加を妨げ、貧困や社会的排除のリスクを高めるような課題に直面しています。一般の人々の就業率の世界平均は60%であるのに対し、生産年齢にある障害者の就業率は平均36%に過ぎません。一方で、消費者としての障害者の年間可処分所得は1.2兆ドルを超え、社会の高齢化に伴い、障害者向けの財やサービスの市場は拡大すると予想されます。

 報告書は障害者を仕事の未来に含むために必要なカギを握る目標を五つ挙げています。

  1. 新たな就労形態や雇用関係に障害者包摂の視点を組み込むべきこと
  2. 包摂的な技能開発と生涯学習
  3. 新たな基盤構造、製品、サービスは、誰でもアクセス・理解・利用が可能なユニバーサル・デザインの原則に従ったものとすべきこと
  4. 支援技術は入手可能で手頃なものとすべきこと
  5. 経済の成長分野及び開発分野へ障害者を含むさらなる措置が必要なこと

 さらに、障害者を包摂した仕事の未来を達成するには、社会的保護制度が重要な補足要素であるとも記しています。報告書はまた、今年6月に開かれた第108回ILO総会で採択された「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」が提唱している人間を中心に据えた仕事の未来に向けた取り組みの中で、障害者の機会平等・平等待遇を確保する必要性が明記されていることも指摘しています。

 ILOジェンダー・平等・多様性部のショウナ・オルネイ部長は次のように説いています。「多様性及び包摂性に関する活動に障害を含む利点を示す証拠はますます増えてきているものの、これを実践している企業は十分な数であるとは言えません。現在の障害者の就業形態は脆弱で、低賃金となる傾向が高いことを私たちは知っています。誰をも含んだ仕事の未来という目標を達成しようと望むならば、この行程表に示された原則を早急に採用する必要があります」。

 3章構成の本書は、第1章で仕事と障害を巡る現状を概説した後、第2章で技術革命、技能革命、文化の変化、人口構造の変化、気候変動といった仕事の未来に関連した主な趨勢を障害者の視点から分析した上で、包摂的な仕事の未来に向けた行程表を提案しています。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。