世界トイレデー

一部途上国におけるし尿処理労働者の悲惨な労働条件に光を当てる新刊書を発表

記者発表 | 2019/11/14
インドのし尿処理労働者 © Sharada Prasad CS

 ILO、世界銀行、世界保健機関(WHO)、ウォーターエイドが11月19日の世界トイレデーに合わせてまとめた報告書『Health, safety and dignity of sanitation workers: An initial assessment(し尿処理労働者の健康、安全、尊厳の初期評価・英語)』は、多くの途上国でし尿処理に関係している労働者の尊厳を損なう安全でない労働条件に光を当てています。

 本書では、トイレの清掃から浄化槽や肥だめの汲み取り、下水溝やマンホールの清掃、揚水場や処理工場の運営まで、し尿処理の流れのいずれかの段階に関与する労働者をし尿処理労働者と総称しています。このような労働者は典型的に、日々の作業で糞便の病原体に接触する高い危険があります。化学薬品や身体的なリスクにさらされる可能性もあります。例えば、南アジアで広く見られるような手作業での清掃に従事する作業員はコレラやチフス、肝炎などの深刻な健康危害やアンモニア、一酸化炭素といった有毒ガスにさらされています。安全でない労働条件は浄化槽や肥だめを機械あるいは手作業で汲み取る作業員や、下水溝、揚水場、廃水処理工場の維持保全を担当する企業でも一般的であり、労働者への訓練はしばしば行われないか不十分です。

 バングラデシュ、ボリビア、ブルキナファソ、ハイチ、インド、ケニア、セネガル、南アフリカ、ウガンダといった6カ国のし尿処理労働者の調査研究に基づいてまとめられた本書は、途上国におけるこういった労働者の悲惨な状況をこれまでに得られるうちで最も幅広く探究した文献です。ほとんどのし尿処理労働者が非公式(インフォーマル)経済で働いているために権利もなく、社会的保護も得られず、その労働条件改善を助けるためのこういった労働者が直面している課題の理解あるいは好事例、取り組み、政策、基準、規則の策定・記録に向けた努力は限定的に過ぎません。

 ILO部門別政策局のアレッテ・ファン・ルール局長は、し尿処理労働者を巡る政策、法規は欠けており、あったとしても弱く、特定の種類のし尿処理労働者しか対象にしないとか、必要な財源・執行の仕組みが欠けているといった傾向があることを指摘しています。

 報告書は今後の活動として大きく次の四つを提案し、また、し尿処理労働者に関連したILOの労働安全衛生分野の条約を批准・実施することを政府に呼びかけています。

  1. し尿処理に携わる人々の専門職化に向けた政策、法規則の改正
  2. あらゆる種類のし尿処理作業の職業上のリスクの評価・緩和のための業務指針の策定・採用
  3. し尿処理労働者のための広報提言及び労働者としての権利保護に向けたエンパワーメントの促進
  4. し尿処理に携わる人々が直面している課題についての記録と証拠基盤の構築。
見栄えも良くなく、安全でもない仕事:し尿処理労働者の証言集(英語・4分)

 水と衛生の分野を専門とする非政府組織(NGO)であるウォーターエイドのティム・ウエインライト最高執行責任者(CEO)は次のように語っています。「誰もがトイレに行き、廃水が適正に処理されなかった場合は飲料水によって媒介される致命的な疾患にかかる危険があります。したがって、し尿処理労働者はどんな社会でも最も重要な役割の幾つかを遂行しているのです。ですから、そのようなし尿処理労働者が命や健康を危険にさらすような条件で働くことを強いられ、遂行している救命活動を認められ、適切な装置を与えられるどころか、不名誉な烙印と疎外に対処しなくてはならないことを知ってショックを受けました。劣悪な衛生状態と危険な労働条件から人々は毎日命を落としています。こんな状況が続くのを許すことはできません」。

 4章構成の本書は、序章の第1章で、し尿処理労働者の定義や本書を作成した理由を紹介した後、第2章でし尿処理労働者が直面している主な課題やリスク、好事例など、調査から見出された主な事項を記し、行動分野と題する第3章で講じるべき措置を提案し、第4章「次の段階」で報告書をまとめた四つの機関がそれぞれに今後の活動を公約しています。付録資料として調査対象国毎にし尿処理労働者を巡る状況を簡潔にまとめた上で、今後さらなる研究が必要な分野を挙げています。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。