移民労働者

カタールがカファーラ保証人制度の終焉を示す画期的な労働制度改革を決定

記者発表 | 2019/10/16
カタールの工事現場 © C. Lepetit / Only World

 国際法に沿った移民労働者の権利保護が見られないとして問題視され、ILOとの間で結ばれたパートナーシップ協定に基づき、技術協力が提供されているカタールでこのたび、カファーラ保証人制度に終止符を打ち、移民労働者の権利承認に向けた重要な前進となる全面的な労働市場改革が発表されました。

 カタールで働く労働者はこれまでは転職の際には元の雇い主から異議なし証明書を発行してもらう必要がありましたが、2019年10月16日の閣議で政府は労働者の自由な転職を許す新たな法を全会一致で承認しました。また、軍関係者を除く全ての労働者の出国許可要件を撤廃する内務省令も制定されました。これらの措置はカファーラ制度の終焉を示すものです。閣議ではまた、中東諸国では初めてのこととして、差別のない最低賃金を定める新法が承認されました。

 異議なし証明書要件の撤廃により、一定の試用期間が過ぎた労働者は雇い主を自由に変えることができるようになります。試用期間中の雇い主の変更に際しては、元の雇い主が採用に要した費用を新しい雇い主が弁償する必要があります。出国許可に関しては、既に2018年の法第13号で労働法が適用されるほとんどの労働者について出国許可を得る要件は撤廃されていましたが、今回新たに家事労働者、政府・公的機関で働く労働者、海上労働者・農業労働者、臨時労働者についても雇い主の許可を得ずとも一時的もしくは永久的にカタールを出国することができるようになります。

 国籍を問わず、あらゆる産業部門に適用される新たな最低賃金の設定は全ての労働者に最低限の保護水準を保障するものとなります。賃金水準はILOと行政開発・労働・社会省が行った共同研究に基づき年内に後日設定されます。

 ガイ・ライダーILO事務局長は次のように述べてこの展開を歓迎しました。「ILOはこの改革を歓迎し、労働市場変革に向けたカタールの公約を認めます。今回の措置は移民労働者の権利を大いに支援すると同時に、経済をより生産的でより効率的にするのに寄与することでしょう。現在カタールで進められているILOの技術協力計画が同国におけるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の促進及び社会正義の前進に向けた政府の取り組みに目に見える貢献を行っているのは喜ばしいことです」。

 国際労働組合総連合(ITUC)のシャラン・バロウ書記長も次のように述べています。「カタールは変化しています。この新たな一連の法はカファーラ制度に終止符を打ち、近代的な労使関係制度を導入することになるでしょう。根拠に基づいた新たな最低賃金率は移民労働者の尊厳を確保することになるであろうと認めます。政府にはこれをできるだけ早く発表してもらいたいと思います。ITUCも支持するILOとカタール政府とのパートナーシップは暮らしを変える効果を発揮しています」。国際使用者連盟(IOE)のロベルト・スアレス=サントス事務局長も「労働市場基準の適応に向けてカタール政府が示した大きな前進を歓迎します。IOEは過去数年にわたって政府の取り組みを支援してきたことを誇りに思います。ディーセント・ワークと持続可能な経済をカタール開発の主眼とすべくこの過程を主導している方々への賞賛を表明したいと思います」と述べて今回の展開を歓迎しました。

 今後、各法案は国会に当たる諮問評議会に提出され、その承認とシェイク・タミーム・ビン・ハマド・アール・サーニ首長による署名を経て、2020年1月までには制定される見込みです。これらの改革は、2017年11月にILOと行政開発・労働・社会省の間で締結された協力協定の中で予定されていたものです。協定に基づき、2018年4月にILOは首都ドーハにプロジェクト事務所を開設しています。


 以上はドーハ発英文記者発表の抄訳です。