G7ビアリッツ・サミット

不平等を優先項目としたG7首脳会合をILOは歓迎

記者発表 | 2019/08/26
G7ビアリッツ・サミット参加者集合写真 © La Moncloa - Gobierno de España

 今年の主要20カ国・地域(G20)会合の主催国は日本ですが、主要7カ国(G7)会合の主催国はフランスです。2019年8月24~26日にビアリッツで開かれたG7サミットでは不平等に焦点が当てられました。サミットに参加したガイ・ライダーILO事務局長はこれを歓迎し、より大きな公平を支える即時の行動が必要と強調しました。ライダー事務局長は、「今や、社会的、経済的、政治的な不平等は問題との一般的な合意が見られるものの、行動に移されておらず、物事は良い意思のレベルで留まっている」と指摘し、「変化を達成するために今こそ介入の必要がある」と強調しました。

 事務局長はまた、不平等との戦いはILOに付託された社会正義の任務に密接に沿っていることを指摘しました。このILOの任務について表現している最も新しい文書として、今年6月に開かれたILO総会で採択された「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」を挙げることができます。

 「不平等の主要な推進要素の二つは、科学技術とグローバル化に内在する交渉関係の変化であると受け入れるならば、政策を変えないことには同じ状況が続くだけ」と説くライダー事務局長は、「不平等は労働市場から発生する」として、国家レベルでの行いが極めて重要であると述べた上で、違いをもたらすための手段が既に存在することに注意を喚起しました。

 G7労働・雇用大臣会合は今年はG7社会大臣会合と呼ばれていますが、6月にパリで会合をもち、不平等に関する多国間対話の拡大を呼びかけました。G7の社会的パートナー(労使団体)の声明も同じことを呼びかけています。ライダー事務局長は、労働政策、貿易政策、金融政策のそれぞれを扱う機関同士のより良い連携、より一層の整合性を求め、「そうすることによってもしかすると実効的な変化を達成できるかもしれない」と説いています。そして、この問題を11月に開かれるパリ平和フォーラムの議題に含むことの重要性に注意を喚起しました。

 サミットでは環境問題にも光が当てられ、アマゾンの密林の山火事鎮圧を手助けするために2,000万ドルの任意拠出を行うことが公約されました。さらに、「G7とアフリカのパートナーシップのためのビアリッツ宣言」では、アフリカ女性の起業家精神の推進、デジタル変革、公共調達における透明性の向上、汚職対策に向けた公約が示されました。ライダー事務局長はこれらの成果も評価しました。

 サミットではまた、G7諸国と国際機関との協力の強化は、各機関の任務遂行能力や効率性、影響力を高める可能性があるとして、持続可能な成長の促進及び不平等との戦いを目的としてG7諸国と国際機関が交流する機会が与えられたことを歓迎する共同声明が、フランス大統領とILO、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)、経済協力開発機構(OECD)の5機関トップとの共同声明という形で出されました。

G7ビアリッツ・サミットに向けたガイ・ライダーILO事務局長の論説-職場における平等という課題

ガイ・ライダーILO事務局長

 G7ビアリッツ・サミットは「不平等の撲滅」をテーマに選びました。ライダーILO事務局長は、サミットを前にしてまとめた論説文で、これを今の時代のカギを握る課題の一つとして、G7首脳による強い宣言がこの決定的に重要な問題に効果的な解決策を提供することに向けた公約を示すことへの期待を表明しました。そして、このテーマが、最も新しくは今年6月に開かれたILO総会で採択された「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」で示されたように、ILOに付託された社会正義の任務と密接に連動しているとして、要旨以下のように記しています。

 集団的な行動を通じて世界規模の課題に対応するG7諸国の公約をサミットで再確認するというG7サミット議長国フランスの意図は、仕事の世界が直面している問題に立ち向かうために多国間主義の強化を求めるILO宣言の呼びかけに対する重要な支持を提供するものと言えます。

 G7会合の労働・雇用分野は今年はG7社会分野の活動と呼ばれていますが、1)国際労働基準の多国間システムへのさらなる統合、2)普遍的社会的保護制度の利用支援、3)デジタル変革の過程を通じて仕事の未来に対するその影響から個人を支援すること、4)職業における男女平等の促進の四つの目標に焦点を当てることによって、この全体的なテーマを発展させています。以上のテーマはどれも、ILOが21世紀の活動目標とする、「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を全ての人へ」という課題を構成する要素であるため、それぞれのテーマについての技術的な情報投入に留まらず、議論への参加を通じて、G7諸国と深く交わる機会をILOに提供しました。

 G7社会分野が焦点を当てている仕事の世界における急速な変化の文脈では、ILOの仕事の未来世界委員会が1月に発表した報告書を歓迎することによって、ILOの創立100周年の重要性に光が当てられました。経済・社会政策に関する多国間機関における議論の中でILOが演じている決定的に重要な役割や仕事の世界における暴力と嫌がらせ(ハラスメント)に関するILOの画期的な新国際労働基準の重要性も強調されました。

 2019年6月6~7日にパリで開かれたG7労働・雇用大臣会合で採択されたコミュニケは次のような一連の野心的な目標を通じてG7社会分野の活動を反映しています。

  • グローバル世界における不平等縮小に向けた行動の呼びかけ。これには不平等の縮小に向けた多国間システムにおける対話と活動調整、グローバル・サプライチェーン(世界的な供給網)における責任ある事業活動の促進に向けた公約も含まれています。
  • 変化する仕事の世界において全ての人に社会的保護の機会が開かれるよう促進することへの公約
  • 仕事の未来に向けて個人に力を付けることへの公約
  • 仕事の世界における男女平等確保に向けた公約

 大臣コミュニケとILOの創設100周年記念宣言との間には多くの共通点が見られ、これは仕事の未来に向けた主要な重点分野を明らかにするものとなっています。

 どちらの文書も多国間主義を強化する必要性を強調しています。G7コミュニケは不平等縮小に向けた経済政策と社会政策の不可分性を強調していますが、ILOの宣言でも「社会政策、貿易政策、金融政策、経済政策、環境政策の間の強く複雑で決定的に重要なつながり」が認められ、多国間機関同士の幅広い政策対話でILOがより力強い役割を演じることを求める呼びかけにつながっています。コミュニケとそれに付随するG7社会的政労使宣言は、望ましい仕事の未来を形成する手段としての社会対話に向けたG7諸国の公約を再確認し、その実行を図るものとなっています。

 同様に、G7コミュニケが「2012年の社会的な保護の土台勧告(第202号)」に沿って「仕事の未来を形成する手段」として社会的保護を強調するように、ILOの宣言は「仕事の世界の発展に適した持続可能で適切な社会的保護制度の整備・向上」をILOに求めています。どちらの文書も依拠している仕事の未来世界委員会の報告書は、人々が自らの能力を発揮するために、変化する仕事の世界を乗り越えていくのに必要となるであろうますます複雑な移行過程を通じて人々を支える社会的保護制度の重要性を強調しています。

 G7コミュニケが呼びかけている個人のエンパワーメントを左右するものとして「あらゆるプラットフォームの労働者に人間らしく働きがいのある労働条件を提供するよう労働市場の支援措置や制度・機構を適応させる」必要性があり、「質の高い仕事を全ての人に創出するよう現下の変化の潜在力を活用する重要性」が強調されています。一方、宣言は、新たな事業モデルや多様な就労形態を取り上げ、全ての人が利益の公正な分け前を得、ディーセント・ワークが確保されるよう、技術進歩と生産性上昇を活用する方向へILOの取り組みを導いています。どちらの文書もILOの過去の活動に依拠して、賃金、そしてとりわけ労働市場におけるなかなか縮まらない男女間格差の縮小などの幅広い政策を通じて、今までにないやり方で男女平等の課題に取り組むことを求めています。どちらの文書もまた、なかなか解消されない非公式(インフォーマル)経済の課題の存在を認めています。

 ILOでは次の100年に歩を進めるに当たり、創設100周年記念宣言で特定された主要優先分野に対応するように次期予算・事業計画の編成を進めています。G7サミットがこのようなILOの取り組みに対する重要な後押しを提供してくれることを期待するものであり、そうすることによって不平等撲滅というG7の優先事項に対し、ILOからも貢献を行いたいと事務局長は論じています。


 以上は次の2点の広報資料の抄訳です。