児童労働

鉱山から出て学校へ

 手掘り鉱山で生計を立てているガーナの共同体で展開されているILOのプロジェクトは、児童労働を減らし、脆弱な子どもに教育への機会を開く手助けを提供しています。共同体での撮影を通じて、ILOのテレビカメラマンのダミアン・リュノーはこのキツく危険な労働の現実に向き合い、その撲滅に向けたILOのキャンペーンの重要性を再認識させられました。

ビンセント君は、家計を支えるために13歳の時に鉱山で働き始めました。テレザちゃんはお父さんと一緒に12歳の時に鉱山で働き始めました。アイザック君が鉱山で働き始めたのは11歳の時です。

 現在、世界の年間金生産量の15~20%が手掘りの小規模金鉱から採掘されています。世界中で1,000万~1,500万人ほどがこういった鉱山で働いていると見られます。手掘りの小規模金鉱は児童労働や人身取引、有毒水銀への暴露や環境破壊といった多数の労働・社会問題と関連付けられています。金の多くは宝石として加工され、世界中の消費者に届けられています。

 ガーナのアシャンティ州で暮らすビンセント君、テレザちゃん、アイザック君は家計を助けるために、他に選択肢もなかったので小規模金鉱で働き始めました。小規模鉱山は子どもはもとより、大人にとっても危険な職場です。家族を養うために13歳の時から金鉱で働き始めたビンセント君は、ある日、鉱山内でダイナマイトが使われた際に、避難し遅れた男性が巻き込まれて爆死したのを目にしました。体格のいい人でしたが、木っ端みじんになり、回収できたのは頭と手だけでした。学校には通っていましたが、疲れて居眠りばかりをして、先生には気分が悪いのかとよく聞かれました。

ビンセント君は、ある日、働いていた時に爆発音を耳にしました。数分後、誰かが死んだという話が伝わってきました。テレザちゃんは、鉱石をざるに入れて頭の上に載せ、毎日、坑内と加工機械との間を80~90回往復して運びました。

 テレザちゃんは12歳の時に父に連れられて鉱山で働くようになりました。金の入った重いざるを頭に乗せ、金坑と加工機械の間を1日80~90回往復していました。

 アイザック君は11歳の時から働き始めました。昼夜を問わず一日中働き、勉強の時間はほとんどありませんでした。学校に行けるのは週に2~3日程度でしたが、疲れて集中できませんでした。

教室で居眠りをして、具合でも悪いのかと先生に聞かれたものでした、とビンセント君は振り返ります。アイザック君は、「学校に行くのは週に2~3日程度でしたが、それでも疲れて集中できませんでした」と語っています。

 ガーナの法定最低就労年齢は14歳です。18歳未満は不健康な労働環境や長時間労働、危険な機械の利用などを伴う危険有害労働に就くことが禁止されています。

 手掘りの小規模金鉱における労働条件の改善及び児童労働問題に対処するために、米国労働省から任意拠出された500万ドルを用いて、ILOはガーナとフィリピンで「金鉱業を気にかけるプロジェクト」を開始しました。これは総予算額2,075万ドルでコロンビア、コンゴ民主共和国など、世界中で展開されている鉱業における児童労働問題に取り組むより幅広い活動の一部です。プロジェクトは地元社会と共同で問題に取り組み、地元共同体が運営する児童保護委員会(CCPC)が鉱業の危険性や子どもを鉱山で働かせるのはガーナでは違法である事実、そして子どもの就学の必要性について啓発活動を行っています。

黄金の夢-ダミアン・リュノーILOテレビカメラマンの撮影記

ダミアン・リュノーILOテレビカメラマン

 現在、ジュネーブで開かれている創立100周年記念ILO総会では、アシャンティ州にあるモシェクロム金鉱で撮影した短編記録動画『黄金の夢(英語)』をILO初のVR(仮想現実)映像で見ることができます。従来の映像では通常得られないような没入体験ができる仮想現実は、小規模鉱山における労働の過酷な現実を示すには最適とILOでは考えました。児童労働者はもとより、鉱山労働者の労働条件がいかにキツいかを理解するのはまだ容易ではないものの、視聴者は被写体とより近い感覚を共有することができます。

 しかし、撮影は楽ではなく、高温多湿の状況下でカメラは何度もオーバーヒートしました。廃棄された立坑は暗く狭く、水に浸かっているものもあり、覆いがいつ何時崩れ、30メートルほど地下に落下する危険が常にあったため、ゴミが散らばった地面を注意して歩かなくてはなりませんでした。一度、撮影の最中に何の警告もなく地下で爆破があり、撮影隊を驚かせました。経験豊かな撮影クルーの助けを借りて初のVR撮影に挑んだILOのテレビカメラマンのダミアン・リュノーはしかし、最も苦しかったのは決して子どもが従事すべきでない、くたくたに疲れる危険な労働を金鉱で行い、子ども時代の一部を失った子どもたちの証言を聞くことであったと報告しています。

VR動画『Dreams of gold(黄金の夢)』(英語・12分8秒)。左上のコントローラーを用いて360度の視点でご覧になることができます。

 鉱山における仕事は過酷であるものの、ガーナ国中がそうであるように、アシャンティ州のような僻地の貧困地帯ではこの仕事を求める人が後を絶ちません。しかし、「金鉱業を気にかけるプロジェクト」の取り組みが効果を上げているように見え、撮影中、鉱山で働く子どもの姿は目撃されませんでした。

 プロジェクトは、社会的保護や生計手段に関する事業計画を通じて鉱業事業所の公式(フォーマル)化を支援しています。加えて、家族が基礎的なニーズを満たすことができるよう地元自治体の事業計画を通じて現金給付の受給を手助けしています。これは子どもが働く代わりに学校に行けることを意味します。プロジェクトの活動の一部として学校では給食が出されていますが、これは最低限の必要を満足するのも難しい貧しい家族にとっては子どもを学校に送る大きなインセンティブになっています。

今は16歳のビンセント君はアーティストになるのが夢です。14歳のアイザック君は、銀行の支配人になりたいと思っています。同じく14歳のテレザちゃんは、看護師になって命を救う夢を語ってくれました。

 地元の児童保護委員会によって鉱業労働から救い出された3人の子どもたちは、今では地元の学校に通い、教育、視覚芸術、メディア、音楽を通じて子どもを支援するILOのSCREAM計画を通じて子どもの権利を促進する学校の児童クラブに所属しています。14歳になったアイザック君は、「自分にも未来があることが分かった」として、今では銀行の支配人になる夢を語っています。テレザちゃんとビンセント君も今は未来への道を開く教育を受けています。16歳になったビンセント君はアーティストになる夢を語り、14歳のテレザちゃんは看護師になって人の命を救いたいと語っています。撮影隊の意図はこのように物事のプラスとマイナスの両面を示すことでした。

 これまでにプロジェクトの恩恵を受けた学校は100校に及びます。もっと多くの脆弱な家族に手を差し伸べるため、プロジェクトを他の共同体に広げることも検討されています。

 今は学校に通う子どもたちを見て気持ちが明るくなったと語るリュノー・カメラマンは、この仮想現実映像を通じて「私たちは児童労働との戦いに勝利することができる」というメッセージを伝えたいと記しています。

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 以上は、撮影に従事したダミアン・リュノーILOテレビカメラマンが児童労働反対世界デー(6月12日)に合わせて2019年6月11日付でILOのブログ「Work in progress(進行中の仕事)」に投稿した英文記事と2019年6月12日付のアクラ発英文広報記事の抄訳です。