論評:よりグリーンな未来のための技能

より環境に優しい持続可能な未来に必要な環境に優しい雇用のための技能

 気候変動と環境劣化は仕事の世界に大きな影響を与えると見られます。しかし、この問題については大いに議論されているにもかかわらず、持続可能なグリーン経済を実現するために必要な技能を労働者に備えさせる課題には十分な注意が払われていないように見えます、とILO技能・就業能力部のオリガ・ストリエツカ=イリナ上級専門官は論じています。

ILO技能・就業能力部のオリガ・ストリエツカ=イリナ上級専門官

 気候変動と環境劣化が仕事の世界に大きな影響を与える可能性については大いに議論されているものの、持続可能なグリーン経済を実現するために必要な技能を労働者に備えさせる問題に関しては十分な注意が払われていないように見えます。気候変動と環境劣化は生産性を引き下げ、雇用を破壊しますが、その影響を不均衡に最も受けるのは最も脆弱な人々です。その一方で、環境に優しいグリーン経済への移行を正しく進めた場合、何千万人分もの持続可能な仕事が生まれる可能性が秘められています。

 2015年の気候変動に関するパリ協定の締結国は緊急の行動の必要性を認めましたが、環境の持続可能性に向けた公約を行うだけでは不十分です。適応・緩和措置計画の詳細を記した、「自国の決めた貢献に関する文書」を提出して、世界の平均気温上昇を2度未満に抑えるという協定の目標を約束した国は183カ国に上りますが、このうち3分の2が気候変動に関する人々の知識と能力開発を後押しする重要性を認めてはいるものの、その実行を支える技能訓練あるいは再訓練についての何らかの計画を含む国は全体の4割を下回っています。能力開発や訓練に関する計画が全く含まれていない国は5分の1を超えています。

 これは警鐘を鳴らすべき問題です。必要な技能が得られなくては、エネルギー産業や農業、廃棄物管理、製造業、運輸業といった経済部門をグリーン化するという公約は具体的な変化につながりません。貢献約束文書その他の政策文書に概略が示されるグリーン生産工程や持続可能な投資戦略、科学技術に関する決定を下し、開発維持に携わることができるのは正しい知識と技能を備えた人々なのです。

 育成、再習得、向上が必要な技能には技術的なものだけではなく、環境意識や分析スキル、チームワーク、革新力、コミュニケーション、リーダーシップ、交渉能力、管理運営スキル、起業家スキルなどの中核的なスキル、ソフトスキルと呼ばれるものも含まれます。これは職業を越えて容易に持ち運べるために習得者には比較優位を提供します。このほかに最も必要とされている技能としては、販促力、顧客対応、修理、デジタル技能、スケジュール管理、予算管理などを挙げることができます。

 世界環境デー(6月5日)に合わせて2019年6月6日にジュネーブのILO本部で開かれる「公正な移行と仕事の未来に向けた技能後押しグローバル・フォーラム」ではこういった問題が話し合われます。ILOは2011年に環境に優しいグリーン・ジョブのために必要な技能について説いた刊行物『Skills for green jobs: A global view(グリーン・ジョブのための技能:世界概観・英語)』を刊行しましたが、会議には、この改訂版に当たる近刊書「よりグリーンな未来に向けた技能」の準備過程で行われた32カ国の調査から得られた主な結論が提出されます。

 必要な技能の養成には多大な投資が必要ですが、その結果、多くの新しい仕事が生み出され、既存の職の転用を図ることが出来るでしょう。適用される措置が男女格差を縮小し、性差に関する古典的な概念を打破する助けになるよう、関連する技能訓練に女性が含まれることを確実にする特別の配慮も必要です。多くの高技能職、そしてとりわけ中技能職は、関連する技能訓練に投資が行われれば成長する潜在力を秘めています。これには様々な省庁間、そして官民両部門にわたる良好な調整が求められますが、現在の政策はしばしば断片的で、その後の行動を欠いていることが調査から見出されています。

 フォーラムでは、技能に関する具体的な行動の必要性に光を当て、職業上のニーズや技能ギャップ、持続可能な仕事の未来に関連した対応戦略を特定し、グリーン人材の推進に向けた多国間協力の可能性について話し合いが行われます。


 以上は報告書の中心的な執筆者であるILO技能・就業能力部のオリガ・ストリエツカ=イリナ上級専門官による2019年6月5日付の英文論評の抄訳です。

写真スライドショー-環境に優しいグリーン・ジョブと技能

マダガスカルの干上がったフィフェレナナ川で取水する住民 © M. Crozet / ILO, 2017

 気候変動及び環境劣化対策として環境に優しいグリーン経済に移行することが決定的に重要ですが、それが成功するためには労働者の幅広い技能再習得、技能向上が必要です。

 2019年の世界環境デーに合わせて作成された写真スライドショー(英語)はグリーン・ジョブと技能の関わりを写真で示しています。ガイ・ライダーILO事務局長は2019年のILO創立100周年に向けて立ち上げた七つの特別事業の一つをグリーン・イニシアチブとし、低炭素の資源効率的な経済モデルへの移行に際してディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の側面を実践することを試みました。グリーン・ジョブとは再生可能エネルギーのような新しい産業部門のみならず、製造業や建設業のような伝統的な部門においても環境の保全と回復に寄与する人間らしく働きがいのある仕事のことを意味します。ILOのグリーン・ジョブ計画は持続可能な開発への移行を支える人間らしく働きがいのある仕事を促進しています。

 持続可能な開発への移行に際しては多くの仕事が消滅するものの、再技能習得や訓練、企業育成、温室効果ガスの排出削減を支える政策を伴う公正な移行によって多くの仕事が新しく生み出される可能性もあります。例えば、急速な技術発展と電子機器に対する需要の増加は健康と環境を脅かす大量の有害電子・電気廃棄物を伴うものの、このような廃棄物のリサイクルによって新たな雇用が生まれるだけでなく、余分な資源の利用を抑えることもできます。気候変動の緩和に必要な活動は必然的に仕事の世界を変える影響を与えますが、注意深く設計された適応戦略は公正な移行を通じて雇用に正味でプラスの影響を与える可能性があると、今年1月に発表された仕事の未来世界委員会の報告書も記しています。グリーン経済はまた、気候関連活動を前進させ、陸上や水中の生命体を保護し、清浄で手頃なエネルギーを提供し、ディーセント・ワークと経済成長を促進することによって持続可能な開発目標(SDGs)の実現にも寄与します。