第108回ILO総会テーマ別フォーラム

第108回ILO総会テーマ別フォーラム:仕事の世界が根底まで変化する中で決定的に重要なのは社会的保護

記者発表 | 2019/06/14
持続可能な移行に関するフォーラム模様。写真録画動画もご覧になれます。

 現在ジュネーブで開かれている第108回ILO総会では七つのテーマ別フォーラムが開催されています。6月14日に開かれた二つ目のフォーラムは、「生涯を通じての持続可能な移行の確保」と題し、人々が自らの生涯における移行を管理する方法にデジタル化や人口構造の変化、気候変動、グローバル化が与える影響について話し合いました。フォーラム参加者は、人間らしく働きがいのある仕事を創出する政策のみならず、労働者、とりわけ最も脆弱な労働者が移行を管理するのを手助けする上での社会的保護の重要性を強調しました。

 開会挨拶を行ったガイ・ライダーILO事務局長は、社会的保護がまだ世界人口の55%にしか適用されていない現状を指摘した上で、生涯を通じての持続可能な移行を確保する前提条件として、「社会的保護に向けた世界的な公約」を挙げました。

 基調講演を行った国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事は、社会保険と社会的扶助に加えて教育と保健に対する公的支出を含む「社会支出」の概念を紹介し、次のように説明しました。「社会支出は単なる費用ではなく、社会福祉における最も賢明な投資の一つになり得ます。教育と保健を受ける機会の拡大は、より幅広く国民の生産性を育み、全ての市民が活躍することを許します。より力強い世界経済社会の報償を得る第一歩として今日始めなくてはならないのは社会的事業の強化です」と説明し、「社会支出は私たちの機関がそれぞれの使命を果たすために必要な社会契約の中核的な要素の一つであると考えます」と論じました。

 もう1人の基調講演者として登壇したミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官は、「失業の悪影響を緩和し、継続教育の機会を開き、労働市場の機会を改善し、保健、食料、水と衛生、教育、住宅、社会保障制度への権利の少なくとも中核的な内容についての機会を確保することによって、全ての社会で一人ひとりが大変動の最悪の影響から保護されるよう確保することができます」と訴えました。

 パネル討議に参加したウルグアイのエルネスト・ムロ労働・社会保障大臣は、「持続可能なだけでなく、それが基本的な権利であること、そして労働と新たな就労形態を考慮に入れた社会的保護制度」の構築によって各国それぞれが自国の運命を定める必要性を説きました。欧州労連(ETUC)のルカ・ビセンティーニ書記長は、ギグ経済で働く人を含み、労働者に生涯学習及び「労働者をショックから守るだけでなく、同時に移行をより円滑にし得る普遍的な社会的保護制度への実質的な機会」が開かれることが必須とした上で、「良質の雇用の創出に向けた明確な戦略」なしにはこれら全ては機能しないだろうと付け加えました。

 仕事の未来世界委員会の委員の1人でもあるレベッカ・グリンスパン・イベロアメリカ会議事務局長は、「仕事ではなく労働者」を保護する必要性を強調し、労働生涯を通じて何度も仕事を変えることになるため、「生涯訓練の点での新たな権利と全ての人が享受できる社会的保護」の必要性を訴えました。国連の持続可能な開発目標(SDGs)のヤングリーダーの1人であるジョアンニ・マルレーン・ベワさんは、最も脆弱な人々のニーズを土台とするだけでなく、若者の声とニーズを聞いた上で包摂的な政策を確保することの重要性を強調しました。

 北欧閣僚理事会の仕事の未来プロジェクトのリーダーを務めるノルウェーの社会科学研究財団FAFOのクリスチン・アルソス研究部長は、科学技術が秘める雇用創出潜在力を指摘しつつも「科学技術だけに任せるわけにはいかない」として、政策の必要性、雇用創出を支援し、資本が資産や金融市場などではなく、雇用創出に用いられるよう支援する必要性を説きました。ポーランド使用者団体の会長顧問を務めるポーランド社会保険機関のパヴェウ・ヴォイチェフオウスキ主任エコノミストは、今日の若者に人間らしく働きがいのある仕事が得られることを確実にするために、「ロボットを飼い慣らす」ことの重要性を強調し、「私たちがロボットに制御されるのではなく、私たちがロボットを制御すべき」と説きました。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。