ILO新刊:ビジネスと管理職における女性

ILO新刊-女性リーダーの存在は企業成績の向上をもたらす

記者発表 | 2019/05/22
報告書の内容を1分で図解(英語)

 とりわけ上級レベルでジェンダー(性差)の多様性が実際に達成された企業では、大幅な利潤増を含む企業成績の向上が見られることが2019年5月22日に発表されたILOの報告書から判明しました。世界70カ国約1万3,000社の調査結果をまとめた報告書『Women in business and management: The business case for change(ビジネスと管理職における女性:変化すべき事業上の根拠・英語)』は、ジェンダーの多様性を促進する取り組みが事業結果を改善するとの考えに同意する企業が回答企業全体の57%を超えることを示しています。管理職におけるジェンダーの多様性を追跡している企業の約4分の3が5~20%、うち大半が10~15%の利潤増を報告しています。これによって才能ある社員を引きつけ定着させるのが容易になったと答える企業は約57%を占め、創造性や事業革新、開けた考えの点での改善を報告する企業あるいは実効的なジェンダーの包摂性が企業の評判を高めたと回答する企業はそれぞれ54%を超え、包摂性ポリシーによって顧客の感情をより効果的に測定できるようになったと感じる企業は約37%に達しています。

 報告書はまた、186カ国の1991~2017年のデータを分析し、国家レベルでは女性の就業率の上昇と国内総生産(GDP)の伸びが正の相関関係を示していることを見出しました。

 報告書をまとめたILO使用者活動局のデボラ・フランス=マッサン局長は、「ジェンダーの多様性と企業の成功との間には正の相関関係が存在するだろうと期待はしていましたが、得られた結果には正に目を見開かされました。企業が利潤をわずか2~3%上げるために他の分野で行っている努力を考えると、この重要性は明白です。企業は男女のバランスを単に人材の問題だけでなく、損得勘定の点からも検討すべきです」と説いています。

 一般労働力同様、上級管理職におけるジェンダー・バランスとは、男女の割合が4:6または6:4の範囲内に収まることを意味します。報告書は女性が上級管理職及び主導的地位の3割を占めるようになると、ジェンダーの多様性が有益な効果を発揮し始めると記しています。しかしながら、この目標を達成できていない全体の約6割の企業では、この報償を得るのに苦労していることを意味します。加えて、調査企業のほぼ半分で新人管理職に占める女性は3人に1人にも満たず、これは上級管理職に向かう道に、必要な人材が存在しないかもしれないことを意味します。

 約4分の3の調査企業が機会均等あるいは多様性・包摂ポリシーを備えていましたが、女性の視認性が高まり、戦略的な事業分野への昇進が確保されるには、より具体的な行動が必要と報告書は記しています。

 報告書は女性が意思決定に関係する地位に到達するのを妨げる重要な要素を幾つか特定しています。「どこでもいつでも」働けることを求める企業文化は、家庭責任に関連して女性に不均等に大きな影響を与えています。一方で、労働時間の柔軟性や父親休暇などの男女双方のワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)や包摂性を支えるポリシーは改善が必要です。管理職のレベルが上がるにつれて女性の割合が低下するという「穴の開いたパイプライン」、女性管理職が人事や財務、総務といった、それほど戦略的でなく、最高執行責任者(CEO)や役員に結びつく可能性が低いと考えられている分野に見られるという「ガラスの天井」要素も存在します。女性取締役の割合が意味のある3分の1のレベルに達しているのは、調査企業の3分の1にも達していません。約8社に1社は取締役は男性のみと回答しています。CEOが男性である企業は78%を超え、一方で女性CEOのいる企業は規模が小さくなる傾向があります。

 「管理職に女性を増やす強力な事業上の根拠があります。技能不足の時代においては、女性は企業が十分に活用していない才能ある人々の豊かな集合を代表しています。グローバル経済での成功を望む賢明な企業は、真のジェンダーの多様性を企業戦略の重要な要素にすべきです。企業団体や使用者団体は率先して効果的なポリシーとその真の実行の両方を促進すべきです」とフランス=マッサン局長は説いています。

 4章構成の本書は、第1章「性に関して多様な人員構成とすることの事業上・経済的な根拠」で女性の雇用が経済成長に寄与し、女性の雇用を支える企業の取り組みが企業成績を向上させる証拠を示した後、第2章「ビジネスと管理職におけるジェンダーの多様性」で管理職に占める女性の割合を分析し、第3章「取締役会及び企業統治の場におけるジェンダーの多様性」で女性役員の状況を示し、第4章「より幅広いビジネス環境の変化」でジェンダーの多様性向上を支えるために何ができるかを具体的に示しています。「前途」と題する終章では、労働市場における男女の役割についての偏見や男女賃金格差の克服、理系の学問や産業における女性の支援、成果主義の採用・昇進制度の見直しとジェンダー・バイアスの制御など、ジェンダーの多様性による利益の確保に向けた具体的な提案を行っています。付録として調査企業における女性管理職比率などのデータが図表で示されています。別冊で、中国や南アフリカ、ブラジルなど、29カ国について調査結果をまとめた国別スナップショット企業調査の内容をより詳しく紹介した報告書も発表されています。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。