USP2030国際会議

すべての人への社会的保護に向けて行動を起こすことを各国に呼びかけ

記者発表 | 2019/02/07

 社会的保護を全ての人に提供することは、持続可能な開発目標のターゲットの一つです。ILOと世界銀行は2016年にニューヨークの国連総会で、この目標の達成に向けて世界的な連携を呼びかける「普遍的社会的保護のためのグローバル・パートナーシップ(USP2030)」を立ち上げました。

 2019年2月5日にジュネーブのILO本部で開かれた「全ての人への社会的保護を2030年までに一緒に達成しよう」と題するUSP2030主催のハイレベル会議は、保健医療と所得保障という基礎的な社会保障を全ての人に生涯にわたって保障する全国的な社会的保護制度、つまり「社会的保護の土台」の整備を各国に呼びかける「行動の呼びかけ」を発して閉幕しました。「行動の呼びかけ」は、加盟国が「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の枠内で引き受けた、とりわけ貧困撲滅に向けた公約に言及し、1)ライフサイクルを通じた保護、2)適用の普遍性、3)国家の主体性、4)持続可能で公平な、国内及び国際的な財源確保、5)参加と社会対話の五つの分野における行動を呼びかけています。

 老齢・障害年金、母性・児童給付を必要とする全ての人に提供することに成功したモンゴルを始め、ボリビア、カーボベルデ、レソト、ナミビア、南アフリカ、東チモールなど、世界各地で適用の普遍性が達成されています。しかし、いまだに世界人口の半数以上に当たる40億人が社会的保護給付を1種類たりとも得られないでいます。1種類の社会的保護給付しか受けられない人は世界人口の45%に当たります。最も進展が見られるのは老齢年金であり、高齢者の68%が受給できています。一方で、児童・家族給付の受給者は世界の子どもの3分の1に過ぎず、保護を受けていない子どもは13億人に達しています。障害者の場合はさらに悪く、社会的保護給付の受給者は28%に過ぎません。

 いまだに多くの国で、適用から漏れている人は多く、給付は不十分です。会議で検討された課題の一つは、非公式(インフォーマル)経済やギグ経済で働く人、生涯働いても無年金となる女性を含む、全ての人に社会的保護を広げる投資を行う政府の能力と長期的な意欲です。持続可能で公平な社会的保護の財源をどう確保するかという課題もあります。経済協力開発機構(OECD)によれば、途上国の社会的保護支出は国内総生産(GDP)の7%に過ぎないのに対し、OECD諸国の支出はその3倍近くに達するとされます。

 普遍的社会的保護とは、児童給付、高齢者への年金、そして生産年齢の人々が出産や障害、業務上の負傷、失業といった状態にある場合に支給される給付などから成り、社会的保護を必要とする人が誰でもいつでもそれを得られることを確保するものです。これは全ての人に公平な機会を与え、生涯にわたって生計や福祉に対するリスク、貧困から保護する国の政策及び事業計画を通じて達成されます。現金・現物給付、拠出型制度・非拠出型制度、人的資本や生産的資産、雇用機会を高める計画など、保護の提供には様々な仕組みが考えられます。途上国ではGDPの平均わずか1.6%の経費で社会的保護の土台を全ての人に提供できます。

 デボラ・グリーンフィールドILO事務局次長は、「一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険である」とのILO憲章原則を引用し、「あらゆる年齢の、必要としている全ての人に社会的保護を提供することは、この脅威に抗することを確保する助けになります」と唱えました。ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官は、「社会的保護は貧困削減及び基本的人権にとって必要不可欠な手段」と強調した上で、世界人権宣言に掲げられているこの権利は、「高齢者や失業者、傷病者、障害者、出産に係わるケアを必要としている人など、脆弱な状態にある人が基本的な尊厳を保てるよう保護する権利」であると説明しました。

 世界銀行社会的保護・雇用グローバル・プラクティス部門のミハル・ルトコフスキー・シニア・ディレクターは、全ての人に社会的保護を広げることは、「世帯所得や消費、貯蓄を引き上げ、総需要を押し上げ、例えば新技術などに由来する構造変化や気候変動などによってもたらされるかもしれない、仕事に影響を与えるショックに対する人々の耐力を高める」ことを挙げて、その決定的な重要性を強調しました。ILO社会的保護局のイサベル・オルティス局長は、「今こそ普遍的社会的保護を現実のものとする時です。それは健全な経済政策です」と呼びかけ、全ての人への給付の財源をどうするかという問題に関しては、最貧国でさえ社会的保護を広げる財的的余地があることを指摘し、国際機関の支援を受けて様々な代案を用いている国があることを紹介しました。ガブリエラ・ラモスOECD首席補佐官兼G20シェルパは、社会的保護にはビジネス面から見た強い論拠があることを指摘し、「私たちは開発によってそれが導入されるのを待つのではなく、開発が起こるようにそれに投資する必要があります」と唱え、民間セクターや現金支給、脱税や納税回避と戦う政府が追加的な財源となり得ることを指摘しました。

 USP2030は各国が社会的保護制度の構築に向けた歩みを早められるよう支援を提供しています。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。