第20回国際労働統計家会議

第20回国際労働統計家会議閉幕:統計に表れていない新しい労働形態を測定する基準を設定

記者発表 | 2018/10/19
第20回国際労働統計家会議閉会式模様

 ジュネーブのILO本部で2018年10月10日から開かれていた第20回国際労働統計家会議はディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)及び労働に関する統計の拡大と大幅な改定に合意して19日に閉幕しました。

 主として労働事項担当省と統計局を代表する政府側専門家、労使団体専門家、国際・地域機関の代表約360人が世界中から参加した会議で採択された労働関係統計に関する新たな決議は、単一の使用者との間で結ばれる伝統的な雇用関係の下にある従属労働と自営業の境が曖昧になってきたこと、より個別的な労働形態、そしてオンライン・プラットフォームを介しての労働や要求に応じてその都度提供される労働、クラウドワーク、臨時雇用、派遣労働などのような新しい就労形態を考慮に入れた新たな職分類を示すものとなっています。会議ではまた、非公式(インフォーマル)性の問題や関連する政策に助言を提供するより良い方法についても詳しい検討が行われました。家事労働の役割と家事労働者を新しい労働関係分類の中にどのように含むかについての検討も行われました。

 2013年の第19回会議で採択された仕事または労働に関する革新的な統計上の定義と指標の利用を支援する新たなツールを発表することによって、今回の会議では仕事の世界における女性の役割も取り上げられました。新しい定義では初めて労働を、賃金または利潤のために行う就労という狭い概念を越えて自家消費のための生産や無償労働、ボランティア労働を含むものと定めていますが、発表されたツールは各国がこの新しい概念を労働力調査に用いるのを手助けすることによって、より良い情報を得た上で政策決定に至る基盤になることが期待されます。会議では無償労働に経済価値を付与する問題や、例えば、地域社会の奉仕員・ケア労働者などのボランティアや無償の家事労働を行っている女性など、これまで統計に表れてこなかった労働者を可視化する方法についても掘り下げた議論が行われました。

 さらに、国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に関連し、ILOが責任を持っている持続可能な開発目標(SDG)の指標8.8.2に当たる労働者の権利を測定する方法論、指標8.b.1に当たる若者の就労計画に関する進捗状況をモニタリングする方法論に関しても合意が達成されました。

 このほかに、国際労働力移動、強制労働、協同組合、技能ミスマッチのそれぞれに関する4本の指針と児童労働の規模を測定する方法を更新する決議が採択されました。

 ガイ・ライダーILO事務局長は閉会式において、合意された新しい分類があらゆる労働形態を網羅し、新たに登場してきた新しい就労形態を可視化するという大いに必要とされてきた代替的な手段を各国の統計に携わる人々に提供したことを挙げ、これが「各国レベルでより良いより効果的な政策の形成を許し、さらに最も重要なこととして、多くの人々の福祉に直接的な影響」を与えることへの期待を表明しました。また、仕事の未来の数多くの側面の測定において統計制度が直面している課題に関する対話から、現在見られる雇用関係の劇的な変化、そして今後予想される一層大きな変化が非常に明確になったとして、その点での統計家会議の付加価値と活動の妥当性を評価しました。

 18日には労働統計の未来に関するハイレベル・パネル討議が開かれ、ビッグデータのような新しい統計情報源やデータの公開性、財源、政策策定に携わる人々に情報を提供する手法の変化など、数々の新しい問題が取り上げられました。2017年に国連総会で承認されたSDGのグローバル指標枠組みがもたらした課題に関する議論も行われました。

 ラファエル・ディエス・デ・メディナILO統計局長は、今回の会議が新たなデータ収集方法を探し、利用可能性を高めるという、2030アジェンダによるデータ革命の呼びかけに応えるものであっただけでなく、今後の成長が見込まれる新たな労働形態を捕捉する方法を規定し、働く女性の役割をより良く把握し、移民労働者のような脆弱な集団や農山漁村部に焦点を当て、労働需要の急速な変化を技能要件に適合させる方法に関する新しくより時宜を得たデータを提供することによってILOの仕事の未来イニシアチブにも資するものになったと評価しています。

 労働統計分野の基準設定機関として世界的に認められている国際労働統計家会議は、1923年の第1回会議以降、5年おきに開催されています。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。