若者の訓練

若いインフォーマル労働者が適正な資格のあるホテル従業員へ

 ILOが支援するタンザニアの質の高い見習い実習制度は、若者のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を現実のものとしています。アフリカの若者の就労が直面している課題に対するより多くの解決策を求める取り組みの一環として、「若者のための人間らしく働きがいのある仕事グローバル・イニシアチブ」は現在、調査研究アイデアを募集しています。

 若者の就労はアフリカ大陸全体を通じて政策課題のトップに掲げられているものの、若者にはディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会がなく、いまだにこれは最も急を要する課題であり続けています。若者に経済機会と新たな職を創出する具体的な措置につながるようなさらなる調査研究が求められています。

 そこで、ILOの主導の下、国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を支援するものとして若者の就労を促進するために多数の機関が結集して設けられた「若者のための人間らしく働きがいのある仕事グローバル・イニシアチブ」の枠内で、ILOは国際開発研究センター(IDRC)、「包摂的開発政策に関するオランダ知見プラットフォーム」と共に、アフリカの若者の人間らしく働きがいのある就労を後押しする方法に関する調査研究案を募集しています。若者のデジタルスキルやソフトスキル育成の助けになる具体的な方法につながるような提案、先輩が指導するメンター制度や就労体験型学習計画を育むような提案が求められています。選択された事業には2年間で最大50万カナダドル(約4,300万円)の支援が行われます。応募締切は2018年10月8日です。

ダルエスサラームにあるラマダ・リゾートの厨房で働くセレマニさん(右)

 就労体験型学習計画の例として、タンザニアで若者のディーセント・ワークを現実のものとするためにILOが支援している質の高い見習い実習制度を挙げることができます。サイード・ムサ・セレマニさん(23歳)はカレッジで食品生産を専攻し、調達に関する修了証書を手に卒業したものの、周りの多くの若者同様、3年経っても自分の資格に合う仕事を見つけられませんでした。しばらく就職活動をした後、セレマニさんは職探しを諦め、生活のためにフリーの建設労働者として現場から現場へと渡り歩く父親と同じように日雇い臨時労働の助手を務めることを決心しました。しかし、セレマニさんの暮らしは、ILOが支援するホテル運営に焦点を当てた見習い実習計画のことを耳にしてから好転しました。企画に応募して面接試験を通り、事業計画に参加する169人の若者の1人としてダルエスサラームにある五つ星のラマダ・リゾートホテルで研修を受ける機会を与えられました。

 「僕のような貧しい家族の出の若者の多くは関連するスキルを身に付け、いい仕事を見つける機会がないために欲求不満に陥ってしまいます」とセレマニさんは説明します。「質素な暮らしの出身なのでホテルで働くのにこれほど多くの専門的なスキルが必要だとは知りませんでした。でも見習い実習生としてこのプログラムを通じて研修の機会を与えられてから僕の望みは非常に高くなりました。上司からはとても良い指導と支援をいただいています。10月の修了時に採用されるチャンスを高めるため、もっと努力して一生懸命働く必要はありますが」とセレマニさんは語っています。

 国立旅行業大学校とタンザニアのホテル協会加盟団体が共同で実施するこの24ヵ月間の訓練をILOは技術的・経済的に支援しています。研修生は研修期間の6割をホテルで実際に働いて過ごします。ILOタンザニア・ブルンジ・ケニア・ルワンダ・ウガンダ国別事務所のウェリントン・チベベ所長は、このホテル運営に関する認証見習い実習計画はタンザニアの若者のスキル・ミスマッチに対処し、技能の関連性を高め、就業能力を後押しすることを目指す政労使の共同努力の成果として誕生したと説明します。

 この事業計画のおかげでセレマニさんはより良い未来を期待出来るようになりました。「この見習い実習のおかげで新しく生まれ変わったように感じます」と語るセレマニさんは、「失った希望を取り戻せました」と感想を述べています。

 「タンザニアでは教室における座学と実践的なオン・ザ・ジョブ(OJT)トレーニングとを組み合わせた見習い実習を技能ギャップに対処する最善の方法の一つととらえています。見習い実習を通じて実習生は経験豊富なスタッフと肩を並べて働くことによって具体的な職務技能に関する経験を得ることが出来ます。見習い実習は学校から仕事への移行期間を短縮するという好影響を示しています。次は使用者、訓練機関、労働者がこの国の労働力の技能を十分に活用できるようこの種の訓練をさらに促進する必要があります」とチベベ所長は説いています。

 職場体験型学習プログラムが若者に提示する可能性がある長期的な機会を例示するものとして、セレマニさんは見習い実習修了後にホテルで働かないかと声をかけられました。

 シンシア・サミュエル=オロンジュオンILOアフリカ総局長は、この調査研究イニシアチブについて、人間らしく働きがいのある就労機会を求めるアフリカの若者の希望を実現する助けになる重要な洞察と実践的な手引きを政策策定に携わる人々や実務家に提供するという「若者のための人間らしく働きがいのある仕事グローバル・イニシアチブ」のパートナーの決定的に重要な取り組みの一つと評価し、アフリカ大陸全土のパートナーに向けて、この企画に応募して、若者の労働市場における成果を改善するために、何がなぜどのように機能するかを理解する取り組みを支えてくれるよう呼びかけています。


 以上は2018年9月19日付のダルエスサラーム発英文広報記事の抄訳です。