男女の役割に関する固定観念を打破しつつケアサービスを後押しするウルグアイの新法

 ケア経済に関するILOの最新の報告書はウルグアイの革新的なケア制度を未来のケアモデルとして紹介しています。

重症の癲癇の一種にかかっている7歳のカタリーナちゃんの面倒を見るロサナ・アントゥネスさん

 今年6月に発表されたILOの刊行物『Care work and care jobs for the future of decent work(ディーセント・ワークの未来に向けたケア労働と職業としてのケア・英語)』は、育児・介護といったケア経済に対する投資が行われなかった場合、有償のケア労働に対する需要の増大と現在存在するサービス不足から世界的なケア危機が発生する可能性があるとの警鐘を発しています。同書はこの問題に取り組む好例としてウルグアイの革新的なケア制度を紹介しています。

 2016年に成立したウルグアイの新しいケア制度の下では、全ての子ども、障害者、高齢者にケアサービスを利用する権利があります。国はこのサービスを提供するだけでなく、ケア労働者の研修を行うことによってその質を保障してもいます。

 例えば、このケア制度に真っ先に加わった一人であるロサナ・アントゥネスさんは現在、重症の癲癇の一種であるウエスト症候群にかかっている7歳のカタリーナちゃんの面倒を見ています。カタリーナちゃんの症状は非常に重く、すべてに手助けが必要です。離婚を経験した後、ウルグアイの首都モンテビデオで母親と23歳の息子と暮らしているアントゥネスさんにとって人生は必ずしも楽なものではありませんでした。しかし、未来のケア労働モデルとILOが評価するこのケア制度への参加は、ケアが必要な家族にとってもケア労働者であるアントゥネスさんたちにとってもあらゆる点でプラスに働きました。アントゥネスさんの場合は仕事が公式(フォーマル)なものとなったことによって給与も上がりました。

 アントゥネスさんはまた、カタリーナちゃんの面倒を見るために特別の訓練を受けました。訓練は非常に重要で、障害者は障害の内容に応じて非常に固有の、異なる種類のケアを必要としていることを理解しました。

新しいケア制度の利用経験を語るラコさん(西語・英語字幕付)

 新しいケア制度のもう一人の受益者であるアンヘリカ・ラコさん(91歳)はモンテビデオの自宅で独り暮らしをしていますが、遠隔支援装置のテレアシステンシアのサービスを利用しています。「このシステムはとても助けになります。私に何かあったら遠隔ケアのテレカレに通報すれば直ちに応えてくれます。システムを通じて話しかけてくれ、24時間いつでも待機してくれるといったように、独り暮らしの人の助けになってくれています」とラコさんは評価しています。緊急時には職員が自宅に駆けつけると同時に近所にも連絡をしてすぐに助けてもらえるよう手配してくれます。

 タバレ・バスケス大統領の目玉政策であるケア法はウルグアイのケア危機を回避するために導入されました。同法はまた、ケアの提供者が人間らしく働きがいのある労働条件の下で仕事を遂行する権利を認め、広く見られる性別分業を変えることを目指しています。

 ウルグアイの新しいケア法が取り組んでいる問題は世界中で見られます。南米南部諸国ディーセント・ワーク技術支援チーム(DWT)兼国別事務所のファビオ・ベルトラノウ所長はウルグアイの総合国家ケア制度について「社会的保護を21世紀のニーズに広げる新しいモデルを表す」と評価しています。社会保障の専門家でもあるベルトラノウ所長はまた、この他にもチリやコスタリカ、メキシコの保育制度が中南米地域のみならず、他の地域でも通用する好事例になり得ることを指摘しています。

 ウルグアイの新しい制度はまた、仕事の世界における男女不平等の縮小に向けた大胆な一歩でもあると考えられています。バスケス大統領は「インパクト・テン・バイ・テン・バイ・テン」の擁護者(チャンピオン)でもあります。日本の安倍晋三内閣総理大臣も擁護者として名を連ねるこのイニシアチブは、世界中の政府、実業界、大学の主な意思決定者を巻き込み、男女平等を組織の優先事項とすることを目指している試行的な事業です。

 政府はジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関であるUN Women、国連人口基金(UNFPA)、その他のウルグアイの開発機関が行った調査結果を支持しています。この調査は女性は週の3分の2を無償労働に費やし、有償労働は3分の1に過ぎないのに対し、男性はその逆であることを示しています。このデータがきっかけとなってケアに関する政策は抜本的に変更されました。ウルグアイの市民社会と学界から、ケアを家族の私的な領域から取り出して集団的・社会的問題としてとらえ、人権問題に位置づけるというケア概念の再形成が提案されたのです。世界的な調査もこのウルグアイの調査結果を支持しており、世界中で女性が子どもや年老いた両親の面倒を見、家事を担うために有償労働を辞めてケア労働を助成していることが示されています。

 2017年に出された世界規模の世論調査に関するILOとギャラップ社の共同報告書『Towards a better future for women and work: Voices of women and men (女性と仕事のより良い未来に向けて:男女の声・英語)』もまた、現在労働力に参加していない女性も含み、世界中で大半の女性が有償の仕事に就くことを望み、男性もそれに同意していることを明らかにしました。これはケアに関する政策、サービス、基盤構造に全ての人に利用機会を確保するユニバーサル・アクセスの概念を持ち込むことによってこの潜在的な女性労働力の多くを有償の雇用に振り向けられる可能性を示唆しています。

 拡大するケア危機への対処と男女不平等の縮小という二つの重点を掲げるウルグアイの新しいケア制度は、社会的保護と仕事の未来に向けてこの国の準備を整えるものです。ウルグアイのフリオ・バンゴ・ケア国家長官は、「このケア制度は今日の権利だけでなく私たちの社会の将来的な持続可能性の観点から捉えるべきもの」と説いています。


 以上は2018年8月27日付のモンテビデオ発英文広報記事の抄訳です。