家事労働

家事労働者の権利の認識

 搾取や暴力、ハラスメント(嫌がらせ)、強制労働の危険性に最も弱い集団の一つとして家事労働者を挙げることができます。「奴隷貿易とその廃止を記念する国際デー(8月23日)」は、いまだに多くの女性が時には現代の奴隷形態と言える虐待的な労働環境に陥っている状況を思い起こさせてくれます。

記事・論文 | 2018/08/23

 8月23日は「奴隷貿易とその廃止を記念する国際デー」ですが、搾取や暴力、ハラスメント(嫌がらせ)、強制労働の危険性に最も弱い集団の一つとして家事労働者を挙げることができます。いまだに多くの女性が時には現代の奴隷形態と言える虐待的な労働環境に陥っています。

 誰からも目撃されずに一人で働く労働者は、仕事に関連した暴力やハラスメントに特に弱い状態にありますが、家事労働者は正にそのような労働者です。世界全体で6,700万人強に上る家事労働者は他人の家や家族の面倒を見るという不可欠なサービスを提供しているものの、言葉による虐待から性的暴力、そして時には命をさえ奪われるような様々な形態の暴力、ハラスメント、搾取、強要にさらされています。雇い主の自宅に住み込んで働く家事労働者は特に弱い立場にあります。

 意を決して警察に駆け込んだ1年以上前から常に言葉による虐待や殴打を受けてきたフィリピン人家事労働者のジュリアさんは次のように振り返ります。「毎日馬鹿や狂っていると言われて耐えられませんでした。でも、言われ続けているとそのうちに慣れ、ぶたれても隅っこで泣くだけでした」。多くの家事労働者にとって、休みがなかったり賃金が支払われないといった日常的な虐待は、たちまち強制労働へと化す可能性があります。「家の中に閉じこめられて出かけられませんでした。お金もなく、1ペソの支払いもありませんでした。お給料はいつもらえるのでしょうかと尋ねても、考えておくわという返事が返ってくるだけでした」。

 ILO包摂的労働市場・労働関係・労働条件部のフィリップ・マルカデン部長は、このような状況の根源には差別があると説明します。家事労働者は労働者として認められないことが多く、女性としての差別を受け、しばしば移民や先住民のような貧しく疎外された集団の出身です。

 しかし、家事労働者は組織化を始め、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の達成に向けた努力を率いています。それぞれの組織の指導者となったザイナブさんとマルセリナさんという2人の元家事労働者もまた、何年にもわたる暴力やハラスメントを職場で受けてきました。自分の話をするのは難しいのですが、あえてそうするのは世界が知るべき現実であると考え、他の家事労働者に声を上げるよう促すためです。ILOでは現在、仕事の世界における暴力とハラスメントに関する新たな基準の制定に向けた検討を進めていますが、家事労働者も立ち上がり、声を上げています。

自らの家事労働者体験を語るザイナブさんとマルセリナさん(英語)

 国際基準は家事労働者を守る強力な手段となり得ます。2011年に採択されたILOの家事労働者条約(第189号)は、家事労働者を労働者と認め、自らの権利を主張し、暴力やハラスメントと闘うさらなる力を与えました。さらに、2014年に採択された強制労働条約(第29号)の議定書は、強制労働を防止し、被害者を保護し、その司法利用を確保する実効性のある措置を講じることを加盟国に求めています。各国はとりわけ、関連する法律があらゆる産業部門のあらゆる労働者に適用されることを確保しなくてはなりません。この義務が家事労働者にとりわけ関連しているのは、家事労働者を巡る一つの重要な問題として家事労働者は必ずしも国内法制上の労働者と認められておらず、したがって他の労働者と同じ権利や保護を享受していないことがあるためです。この条約と議定書の批准国はまだそれぞれ25カ国程度に過ぎませんが、他に30カ国あまりが家事労働者に保護を広げる法や政策を成立させています。家事労働者を暴力やハラスメントから確実に守るには政府、労働者、使用者に加え、個々の世帯もそれぞれに演じるべき役割があります。

 第189号条約の採択を受けてILOは家事労働者のディーセント・ワークを現実のものとするよう、政府、労働者、使用者を支援する地球規模の戦略を採択しました。この戦略を通じて、ILOは約60カ国に家事労働者への保護の拡大、これらの基準の遵守の確保、規範の変更、家事労働者及びその使用者の代表性の強化に向けた支援を提供し、労働時間や賃金、社会保障、人の移動、労働監督、組織化などに関する各国の政策経験をウェブサイトを通じて提供しています。家事労働者に関するウェブページには自宅を人間らしく働きがいのある職場とする方法も示されています。


 以上は2018年8月23日付の英文広報記事の抄訳です。