国際青少年デー

マダガスカル北部で技能訓練を通じて不利な立場の若者が暴力的不良グループから抜けるのを支援

 8月12日の国際青少年デーに際して発表する一連の広報記事の最初のものとして、浜辺の町ディエゴ=スアレスで、都市の暴力を抑え、平和を回復する取り組みを支援してきたILOが資金協力を行うプロジェクトを紹介します。

 8月12日の国際青少年デーに際し、地元の利害関係者すべてが関与する革新的なプロジェクトがいかに不利な立場の若者に技能と雇用をもたらすことに寄与できるかを示す好例がマダガスカルから届きました。

 マダガスカル北部に位置するディエゴ=スアレスの町は豊かな観光資源を有しています。風光明媚な海岸と植民地風の古い建物が特別の魅力を与えています。しかし、数年前からこの町は「荒くれ者」を意味するフォローシュと呼ばれる不良グループに悩まされるようになり、治安の悪化は観光産業を損なう恐れがありました。

 「問題は一部の西洋諸国のような違法薬物の取引などではなく、むしろ通常、女の子を巡る近隣のグループ同士のもめ事にありました」とディエゴ=スアレス警察のロジェー・モラタンビー本部長は説明します。問題を悪化させるものとして、地元に生えているカートの葉の消費がありました。この自生植物は陶酔効果があり、飢えの苦しみや疲労を緩和する一方で中毒性があるために麻薬の一種と考えられています。

 数年で状況はますます悪化し、ひったくりやナイフによる傷害が増え、町のメインストリートであるコルベール通りに店を出す店主は「女性はもはや宝石類を身につけて外出するような無謀は犯さないようになりました」と振り返ります。

 あまりの状況の悪化を見かねて、当局と地元市民社会が行動を起こすことにしました。「この危機に対する対応は、単なる処罰ではなく、教育的な要素も含まなくてはならないことに私たちは気付きました」とモラタンビー本部長は振り返ります。そこで、ILOの支援を受けて無職の若者に訓練を提供するプロジェクトが開始されました。

 地元で「ソシエテ・デテュード・ドゥ・コンストルクシオン・エ・ドゥ・ヘパラシオン・ナバール(船舶建造、修繕、教育会-SECREN)」造船所を営むビアル・ルセット氏は若者の訓練も行っています。これは非常に骨の折れる仕事です。初めて会社に現れる時、若者の多くはまだグループとのつながりを断ち切れておらず、毎日行う持ち物検査の際にはしばしばポケットからナイフが見つかります。そこで、不良魂を打破するためにあらゆる努力が尽くされています。スポーツ活動をする際には、決してグループ同士を闘わせず、逆に対立するグループのメンバー同士を同じチームにし、同じグループのメンバー同士が敵になるよう指導員が強制的にチーム分けを行います。

ディエゴ=スアレス市における若者の非行に対する取り組み(3分27秒・仏語/マダガスカル語・英語字幕付)

 若者の更正活動に情熱を傾けているルセット氏は、これを「技能移転を通じたセラピー」と呼び、2016年と2017年に16~18歳の若者100人ずつに各3カ月間の訓練を提供したと説明します。研修生は電気機械技術、燃焼機関、板金工事、コンピュータ・グラフィックス、大工、ボイラー管工事、石工の七つの訓練活動の中から選ぶことができます。研修センターには十分な設備があり、経験豊富な指導員がいます。「若者の多くは技能を身につけることを夢見ていますが、支援なしにはその夢を実現できないため、地元の不良グループに行き場を求めるのです」とSECRENのルセット所長は説明します。研修生は職業訓練に加え、市民生活や公民意識、起業家精神、生活技能、英語、ダンス、スポーツの指導も受けます。こういった活動は地元の名士や市民で構成される運営委員会によって調整が図られています。運営委員会はプロジェクトの実施を担当する技術委員会と密接に協力し合っています。受益者は地域社会のリーダーと協力して行う啓発活動の過程で募ります。

 ルセット氏は、数日前、ナイフを持っているのが見つかった若い研修員を指し示して、「望みのない案件などないと私たちは考えています」と説明します。精神的なフォローアップを提供できるソーシャルワーカーが2人しかいない町にとっては骨の折れる作業ですが、ルセット氏は研修生の頼れる兄貴分となって面倒を見てくれるかつての研修生の助けも当てにしています。

 プロジェクトに関与する地元の刑務所の所長の好意で刑務所の特別区画に収容されている15人ほどの未成年者のうち、同意してくれた何人かに話を聞くことができました。ここでも問題の根源には貧困があります。ある収監者は自分が再犯者であるのは、街頭よりも刑務所の方が暮らしが良いと思うからと説明しました。アマジ(17歳)と名乗る別の収監者は、14歳の時に「赤い糸」と呼ばれる町の不良グループの一つに加わった理由として、「地元のみんなと同じようになるため」と説明し、刑務所を出たら不良グループとは縁を切り、何か訓練を受けたいとの希望を語りました。もう1人の再犯収監者アリ(17歳)の場合は将来の見通しはずっと暗く、トーゴの不良グループのメンバーだった彼は12年の刑に服しています。彼の説明では服役理由は警察官の制服を盗んだためとのことでしたが、後で刑務官に聞いたところでは、ナイフによる殺人未遂が理由とのことでした。

 限られた資金・資源ながらILOのプロジェクトは素晴らしい進展を成し遂げました。「非行率が大幅に低下しました」とモラタンビー本部長も評価します。警察はまた、防止活動と組み合わせて、日が暮れるとすぐに問題多発地帯の定期的なパトロールも行っています。ディアナ地区で青少年問題の技術顧問を務めるエジディン・アマディ・ムサさんも町に平穏が戻ってきたことを喜んでおり、「この改善は私たちの素敵な町へ観光客が戻るのを後押ししてくれるでしょう」と期待しています。

 回復された静けさを体現するような若者がディエゴ=スアレス湾にいます。かつて不良グループに所属し、軽微な犯罪に手を染めた経歴があるジョゼ・プエリーさんは、しばしば女の子を巡って、あるいは単に敵を倒すために喧嘩をしていました。しかし、ある日、啓発活動に参加して人生を好転できることに気付かされました。亡くなった父親が地元の伝統的な漁船であるラカナの建造・修理を行っていたことを思い出し、大工の訓練を受けることを選択し、今は父親の跡を継ぐために必要な基礎的な技能を学んでいます。

不良グループから足を洗い、船大工としての歩を踏み出したプエリーさん

 プエリーさんが誇らしげに見せてくれた、作ったばかりの5メートルのボートは既に200万アリアリ(約6万7,000円)で買い手が決まっています。夢を実現したプエリーさんは不良グループを抜けました。働くためにはもっと道具が必要ですが、訓練を受けられたことを感謝しています。今でも昔の仲間とは出かけますが、それは犯罪のためではなく、魚を釣って少し臨時収入を得るためです。

 ILOマダガスカル・コモロ・モーリシャス・セーシェル国別事務所の所長を務めたこともあるクリスチャン・ンツァイ首相は、「ディエゴ=スアレスが直面した都市の暴力は、望みのない若者の不安感を反映したもの」と説明します。そして、人口の92%が貧困層に属し、若者の2人に1人が失業しているマダガスカルにおいては貧困緩和が依然として優先事項の一つであることを挙げ、「ディエゴ=スアレスでILOが支援したようなプロジェクトは、これまでは非常に限られていた雇用機会を不利な立場の若者にもたらすことによって治安状態の大幅な改善に寄与することができました」と評価しています。首相は今日のマダガスカルが行うべきこととして、「マダガスカルへの投資を復活させると同時に、若者に職業、資格を得る道を開くこと」を挙げています。

 リー・サンゲオンILO雇用政策局長も「不利な立場の若者に訓練と新たな技能を提供することによるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会の創出は貧困と闘う一つの効率的な道」と指摘しています。


 以上は2018年8月6日付のディエゴ=スアレス発英文広報記事の抄訳です。