第107回ILO総会

第107回ILO総会アイルランド大統領特別演説:平和構築のカギを握るのは社会正義とすべての人の平等に専念した世界的な連帯

記者発表 | 2018/06/07
第107回ILO総会の仕事の世界サミットで演説するアイルランドのヒギンズ大統領(英語)

 現在ジュネーブで開かれている第107回ILO総会は、6月7日に「仕事の世界サミット」を開催し、「平和と強靱性のための雇用とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」に関する意見交換を行いました。サミットで特別演説を行ったアイルランドのマイケル・D・ヒギンズ大統領は、北アイルランドの和平プロセス経験や、和解と国際連帯、差別対策の必要性、人権の実現におけるその承認といった諸原則の中心的な役割について語り、今世紀の平和構築の課題について詳述した上で、絶えず変化する情勢の中においては、持続可能で倫理的な地球市民の枠内で就労経験を積む必要性を指摘しました。さらに、平和の希求とディーセント・ワーク及び社会対話の役割のつながりをたどった大統領は、「経済機会の拡大、基本的な社会・経済権の承認の確保、ディーセント・ワークの唱道・前進・達成、労働者、使用者、市民団体間の社会対話の円滑化」を、「紛争からの回復、そして少しでも戦争に後戻りするのを防止する上で決定的に重要な要素」に位置づけました。

 ヒギンズ大統領はまた、国際社会が共益に対する義務の承認に下支えされ、労働の尊厳を土台として、より公平で平等な経済秩序を構築しようと決意した1919年と1944年というILOの歴史でも節目となっている歴史的な瞬間を振り返りました。ILOの里程標である1944年のフィラデルフィア宣言は、「すべての人間は、自由及び尊厳並びに経済的保障及び機会均等の条件において、物質的福祉及び精神的発展を追求する権利をもつ」と謳っていますが、大統領は、「この原則を明言することによって、私たちILOの加盟国は、自国民だけでなく、他国民、そして強調したいこととして、将来世代に対しても、道徳的、政治的、社会的、経済的責任を引き受けています」として、「無制限でない社会正義、普遍的でない平和、すべての人に開かれているのでない連帯」などは「あり得ない」ことを強調しました。

 社会的保護や男女賃金格差、仕事の未来など、ILOが深く関与している事項を含む多岐にわたる演説の中で、大統領は職場における暴力とハラスメント(嫌がらせ)に終止符を打つことに向けた総会の決意を歓迎し、「女性に対するこの日常的な攻撃行為は、国境の存在しない世界規模の非道な行い」と非難して、一つ一つの職場から始めてグローバルな対応を行うことを呼びかけました。

 ヒギンズ大統領を紹介する演説の中で、ガイ・ライダーILO事務局長は大統領を「最も情熱的な社会正義の主唱者」と呼び、ニカラグアやチリからカンボジアやイラク、ソマリア、そして最近ではコロンビアやシリアに至るまで、平和と民主主義の大義に向けた信念をアイルランド内外で何度も適用してきたその限りないエネルギーに敬意を表しました。

 仕事の世界サミットにおいて、ライダー事務局長は、戦場や自然災害の現場から届けられるショッキングな映像は、「それが伴う人的コストに私たちを慣れさせてはならない」と説き、むしろ「私たちを連帯と行動へと動かす動因」となるべきと訴えました。そして、「脆弱国や紛争被災国、災害状況下で暮らす何億人もの人々の非常に直接的な要求、さらに、何度も何度も耳にする仕事やパン、自由と尊厳、子どもの教育を求める訴え」こそが、「ILOがそのような状況に存在する理由、存在しなくてはならない理由、さらに私たちが今日ここに集っている理由」であると説明しました。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。