漁業労働条約(第188号)

2007年の漁業労働条約(第188号)発効

記者発表 | 2017/11/16
漁業労働条約(第188号)批准広報動画(英語)

 2007年の第96回ILO総会で圧倒的多数の支持を得て採択された漁業労働条約(第188号)が、沿岸国8カ国を含む10カ国の批准という発効要件を満たし、10カ国目の批准登録日から1年後の本日2017年11月16日に発効に至りました。批准国は、ボスニア・ヘルツェゴビナ、アルゼンチン、モロッコ、南アフリカ、コンゴ、フランス、ノルウェー、エストニア、アンゴラ、リトアニアの10カ国です(批准日順)。

 条約の発効について、ガイ・ライダーILO事務局長は、「私たちの公約は、この漁業におけるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)のための基本的な基準を定める第188号条約が、この産業部門で働くすべての人に効果的な保護を提供するものとなるよう努めること」として、「道のりは長いが、達成できると信じている」と述べています。

 商業的漁獲は動物性蛋白質を中心とした最も重要な食料源の一つを提供しており、食の安全保障にとって必要不可欠です。世界で最も危険な職業の一つと見なされている採捕漁業の従事者は世界全体で3,800万人を上回り、他に数億人の扶養家族などがこの部門に生計を頼っています。漁船所有者の多くが漁船員を手厚く処遇しているものの、漁業従事者は非常にしばしば、非公式な労働慣行、天候や季節性、一般的に危険な性質の海洋環境における労働など、働きがいのある人間らしい労働条件を脅かす深刻な課題に直面しています。世界中の漁業で強制労働や人身取引、移民労働者の搾取が懸念され、漁業者を守る法規が存在しないか、不明確な場合も多くなっています。

 第188号条約は、船上や陸上における医療や労働安全衛生、休息期間、書面による労働契約、他の労働者と同水準の社会保障による保護など、漁船上の労働に関する主要事項についての拘束力ある要件を定めています。船上における漁業者のまともな生活条件を確保するような形で漁船の建造・維持が行われることも目指しています。また、強制労働や人身取引その他の権利侵害を予防する助けになるよう、募集・斡旋過程の規制や漁業者による苦情の調査に関する規定も含み、外国人漁業者を中心にすべての漁業者の許容できない就労形態を予防する助けになっています。

 第188号条約批准国は、検査、報告、監視、苦情手続き、罰則、是正措置を通じて漁船を管理するものとします。寄港する外国漁船を検査し、適切な行動を取ることもできます。

 国際運輸労連(ITF)漁船員部会のジョニー・ハンセン部会長は、「世界で最も危険な職業の一つでありながら取り締まられないことが多い職業」に従事する何千人もの漁業者のあまりにも多くが「けしからぬことに犯罪的に搾取」されている現状を指摘した上で、この条約がこういった人々の労働・生活条件を変える「人生の転換点」となることへの期待を述べています。さらに、「正義、人命、より良い産業のために」この画期的な条約の批准・実施を各国に呼びかけ、ILOには世界中でこの条約を積極的に推進することを求めています。

 9月に開かれた外国人漁業者に関する専門家会合で使用者側のスポークスパーソンを務めたメント・ファン・デル・ズヴァン氏は、「政府や消費者が特定の漁業者の処遇、自分たちの魚介食品生産に際しての労働・生活条件、漁業一般に係わる海上における安全性を真剣に懸念しているとしたら、漁業者の保護がこの条約が定める最低基準を下回っている地域を中心に、批准数がもっと速く伸びなくてはならない」と評して、条約発効を大いに喜びつつも批准国がまだ10カ国に過ぎない現状に失望を示しました。

 条約を補足するものとして、付随する同名の勧告(第199号)、そして条約に基づく検査を行う際の旗国寄港国用の指針が存在します。これらはいずれも政府に加え、漁船所有者と漁業者を代表する団体の話し合いを通じて生み出されたものです。漁船の操業や国家間における大きな違いを認め、条約は各国で三者による協議を経て実施にある程度の柔軟性を持たせることを認めています。


 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。