8.7連合新刊書

世界全体で現代の奴隷は4,000万人、児童労働は1億5,200万人

記者発表 | 2017/09/19

 国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が定める持続可能な開発目標のターゲット8.7は、強制労働、現代の奴隷制、人身取引に終止符を打ち、2025年までにあらゆる形態の児童労働を終結させることを世界に呼びかけています。この達成に向けた地球規模の連携行動としてILOも加わって発足した「8.7連合(Alliance 8.7)」が国連総会開催中のニューヨークで発表した新たなデータは、現代の奴隷制及び児童労働と戦う努力を劇的に増さない限り、この目標、とりわけターゲット8.7の達成は難しいであろうことを示しています。

 ILOと国際人権団体のウォーク・フリー財団が国際移住機関(IOM)と協力して作成した『Global estimates of modern slavery: Forced labour and forced marriage(現代の奴隷制の世界推計:強制労働と強制婚姻・英語)』は、2016年現在、世界全体で4,000万人以上が現代の奴隷制の被害者となっていることを示しています。このうち、2,500万人ほどが強制労働の被害者、1,500万人が強制婚姻の被害者となっています。女性・少女の被害は不均等に多く、現代の奴隷制の被害者全体の71%に相当する約2,900万人、そして商業的性産業における強制労働被害者の99%、強制婚姻被害者の84%が女性・少女となっています。また、現代の奴隷制の被害者の4人に1人に当たる約1,000万人、強制婚姻被害者の約37%に当たる570万人が婚姻当時子どもであったと見られます。

 2016年当時の強制労働従事者は世界全体で2,500万人と推計されます。このうち、全体の16%に当たる400万人強が国家機関に強制されて労働に従事していると見られます。家事労働や建設業、農業などの民間セクターにおける搾取は1,600万人に達し、性的搾取被害者は約500万人を数えると見られます。

 2016年当時、婚姻を強制された人は世界全体で1,540万人に上ると見られます。このうち、650万件は過去5年に起こったもので、残りはそれ以前に発生して、現在も続いているものです。被害者全体の3分の1以上が婚姻当時は子どもであり、そのほとんどが少女でした。

 ILOが作成した『Global estimates of child labour: Results and trends, 2012-2016(児童労働の世界推計:2012~16年の推計結果と趨勢・英語)』は、世界全体で5~17歳の子どもの約10人に1人に当たる1億5,200万人(少年8,800万人、少女6,400万人)が児童労働に従事していることを示しています。児童労働が集中しているのは依然として農業(全体の70.9%)であり、次いで約5人に1人に当たる17.1%がサービス業、そして11.9%が工業に従事しています。地域別ではアフリカ(7,210万人)が最も多く、次いでアジア太平洋(6,200万人)、米州(1,070万人)、欧州・中央アジア(550万人)、アラブ諸国(120万人)の順となっています。5~14歳の児童労働者の3分の1近くが教育制度の枠外にいると見られます。危険有害労働に従事する児童労働者の38%が年齢5~14歳であり、15~17歳の児童労働者の約3分の2が週労働時間が43時間を上回っています。

 ガイ・ライダーILO事務局長は、「8.7連合のパートナーと共に本日ILOが発信するメッセージは非常に明確」として、「この悩ましい問題と戦う努力を劇的に増さない限り、世界は持続可能な開発目標を達成する状態にはならないでしょう」と訴え、この新しい世界推計が強制労働と児童労働を共に防止する介入策を形作り策定する助けになることへの期待を述べました。ウォーク・フリー財団の創設者であるアンドリュー・フォレスト会長は、「なおも4,000万人の人々が現代の奴隷制下に常にあるという状態は、社会として恥ずべき事実」と説き、データ収集が行われた過去5年間に累計8,900万人が、2、3日から5年間と幅がありつつも、何らかの形態の現代奴隷状態を経験していた事実を示した上で、「搾取に対する衝撃的な寛容を伴う、今日の私たちの世界に深く根ざした差別と不平等」を示すこのような状況について、「止めるべき」と訴え、「企業、政府、市民社会の私たちは皆、一人一人が、この現実を変えるべく果たす役割がある」と強調しました。

 持続可能な開発目標のターゲット8.7の達成を約した世界規模の戦略的なパートナーシップとして、政府、国連機関、民間セクター、労使団体、市民社会を代表する主なパートナーが結集して発足した「8.7連合」は、強制労働、現代の奴隷制、人身取引、児童労働の終結に向けて、各国、地域、世界の取り組みの調整を図り、目標達成までの道のりの短縮、知見共有、革新的な取り組みの推進、資金・資源のてこ入れに重点を置いてターゲット8.7及び関連するターゲット5.2、16.2、16.3、16.aの達成を目指しています。今回の推計値は8.7連合参加機関の集団的な努力の成果物です。

 2冊の報告書は8.7連合のウェブサイトから入手できます。新しい世界推計値はまた、9月19日17時半からニューヨークの国連本部で開かれるハイレベルイベントでも発表されます。

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 以上はニューヨーク発英文記者発表の抄訳です。