世界の雇用及び社会の見通し-動向編2017年版
ILO定期刊行物最新版-2017年に失業者数は世界全体で340万人増
このたび発表されたILOの定期刊行物『World employment and social outlook - Trends(世界の雇用及び社会の見通し-動向編・英語)』の2017年版は、労働力の伸びが雇用成長を上回ることにより、世界の失業率は2017年に前年より0.1ポイント高い5.8%となり、失業者数は340万人増えて世界全体で2億100万人強に達し、2018年にはさらに270万人増えると予測しています。失業問題が特に厳しい地域は、最近の景気後退の傷跡が2017年まで重要な影響を引きずると思われる中南米・カリブと、経済成長が過去20年で最低水準に落ち込んでいるサハラ以南アフリカの両地域であり、どちらも新規生産年齢人口の強い伸びに直面しています。対して、先進国の失業率は2017年に前年より0.1ポイント低い6.2%に低下すると見られるものの、改善のペースは減速し、欧州でも北米でも長期失業率が依然として危機前より高く、とりわけ欧州では失業率の低下にかかわらず上昇し続けているといったように、構造的な失業となっている兆候が見られます。
失業、脆弱な就業形態、働く貧困層の動向と予測(2016~18年) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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事業に貢献する家族従業者と個人事業主という脆弱な就業者は、新興経済諸国では就業者のほぼ2人に1人、途上国では5人に4人を上回り、南アジアとサハラ以南アフリカを中心に年に1,100万人の増加が見込まれ、2017年には就業者全体の42%超となって世界全体で14億人に達すると予想されます。
働いていても貧しい人々の減少速度は鈍化し、国連の持続可能な開発目標が定める貧困根絶の展望が危うくなっています。途上国では1日の収入が3.10ドルを下回る労働者が今後2年間で500万人以上増加するとの予想も出されています。
報告書は世界各地で見られる社会不安と移住性向を下支えする要素の一部として世界的な不確実性と働きがいのある人間らしい仕事の欠如を挙げ、2009~16年の期間に生産年齢人口に占める国外移住希望者の割合が中南米、カリブ、アラブ諸国を筆頭に世界中ほとんどの地域(例外は南アジア、東南アジア太平洋)で増えてきていることを示しています。
ガイ・ライダーILO事務局長は、「世界経済・社会危機によって引き起こされた損害の修復と毎年数千万人に上る新規労働力のための良質の仕事の創出」を、「私たちが直面している二重の課題」に挙げ、経済成長が「その水準と包摂の度合いの両方において、依然として失望させられる成績不振」状態にあることは、「世界経済及び良質の仕事どころか、十分な仕事を創出できる能力についても懸念すべき姿を示している」と指摘しています。また、総合的な数値の改善が見られる国においてさえ、仕事の質の面での前進が明らかに欠けていることと、脆弱な就業形態の割合が相変わらず高いことの組み合わせは「警戒すべき状況」として、成長の利益が包摂的な形で確実に共有される必要性を訴えています。
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失業、脆弱な就業、働く貧困層世界地図へのリンク |
報告書は各国の財政余地を考慮に入れた公共投資の増大と景気刺激策の提供という調整を図った取り組みは、世界経済を即座に加速させ、2018年に世界の失業者数を基本予測値より200万人近く減少させることになろうと記して、そのための国際協力の必要性を説いています。
報告書の中心的な著者であるILOのスティーブン・トビン上級経済専門官は、経済成長を公平かつ包摂的な形で後押しするには、「各国固有の状況を考慮に入れつつ、所得不平等などの長期的な不景気の根底にある原因に取り組む多面的な政策手法が必要」と語っています。
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以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。