児童労働反対世界デー(6月12日)

児童労働の長期的影響を指し示すILO新刊

記者発表 | 2015/06/10

 6月12日はILOの定める児童労働反対世界デーです。今年の世界デーは「児童労働に反対、良質の教育に賛成」をテーマに、質の高い教育の重要性に焦点を当てています。

 世界デーに合わせて6月10日に発表されたILOの新刊書『World report on child labour 2015(児童労働世界報告2015年版・英語)』は、低所得国では約2~3割の子どもが15歳までに労働市場に加わることを示しています。「若者がディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に至る道を敷設」を副題に掲げ、元児童労働者及び学校中退者のその後の職歴を調べた12カ国の国別調査をもとに、児童労働の撤廃と若者のディーセント・ワークの確保の二重の課題を取り上げる本書は、子どもの頃から働いていた若者は無給の家族従業者や低賃金職に落ち着く可能性が高いことを明らかにしています。報告書はまた、次のような事実を見出しています。

  • 児童労働に従事した過去は教育達成度の低さ、そしてその後の人生におけるディーセント・ワークの基本的な条件を満足しない仕事に就くことと関連すること
  • 学校中退者は安定した仕事を確保できる可能性が低くなり、さらにまた仕事の世界に全く関与しなくなる危険も高くなること
  • 多くの国で、15~17歳の労働者の高い割合が危険有害業務つまり最悪の形態に分類される児童労働に従事していること
  • 危険で有害な仕事に就いている労働者は法定就業最低年齢に達する以前に学校を止めている可能性が高いこと

 ILOの最新の推定では児童労働者は世界全体で1億6,800万人を数え、うち1億2,000万人が5~14歳の子どもと見られます。報告書は子どもを児童労働から引き離して学校に戻す早期介入策の重要性を強調しつつ、それに加えて、若者の学校からディーセント・ワークの機会への移行を円滑化する措置を講じることを提案しています。また、危険で有害な業務に就いている4,750万人の15~17歳の子ども、そして少女の特別な脆弱性に特に注意を払うことを求めています。

児童労働から脱して教育へ:ベトナムの経験(英語)

教育はILOの児童労働撤廃国際計画(IPEC)が児童労働に取り組む際の中心的な要素です。スペイン国際協力・開発庁の任意資金協力を受けてベトナム北部山岳地帯で実施されているプロジェクトは働く子どもに教育や職業訓練の機会を提供し、状況の改善を図っています。

 ガイ・ライダーILO事務局長は、報告書が示しているのは「若者の人間らしく働きがいのある仕事の欠如と児童労働に共に取り組む一貫した政策手法の必要性」であるとして、「子どもを学校に留め、少なくとも就業の最低年齢まで良い教育を受けさせること」は子どもの一生を決定し、子どもがさらなる学習やその後の勤労生活に必要な基礎的な知識と技能を獲得する唯一の方法であると説いています。さらに、国の政策は、子どもや若者を危険で有害な仕事から取り除くことに加え、職場から危険有害要因を取り除くことに向けられるべきと唱えています。

 児童労働反対世界デーには、世界約55カ国で100を超えるイベントが実施されます。ジュネーブでは、第104回ILO総会の特別サイドイベントとして、6月12日当日に2014年のノーベル平和賞の共同受賞者であるカイラシュ・サティアルティ氏やパナマのロレナ・カスティージョ・デ・バレーラ大統領夫人などが参加するパネル討議が開かれます。ILOは500万人もの子どもたちが奴隷のような状態におかれ、そのほとんどが基礎教育の機会も与えられていないと見ていますが、このイベントでは、2014年の総会で採択された「強制労働条約(第29号)の議定書」の批准促進キャンペーンにも注意が喚起される予定です。

 11日にも総会で特別演説を行うサティアルティ氏は、自分の子どものことを考える時には、医者や技術者などになるために生まれてきたと考えるのに対し、他の子どものことを話す時には、貧しい子なんだから働かせよう、急いで助けなくても、と考えがちと指摘し、「子どもたちすべてを自分の子どもだと思おう」と呼びかけて、考え方を変えることを求めています。

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 以上はジュネーブ発英文記者発表の抄訳です。