フィリピン
ハイエン台風からの復興のカギは持続可能な生計手段とILO
2013年11月8日に襲来したハイエン台風(フィリピン名:ヨランダ)によって、フィリピンの労働者約600万人が生計手段の喪失、収入途絶などの影響を受けたとILOでは推計していますが、このうち260万人余りが個人事業主や家族従業者といった脆弱な就業形態にあり、被災前から既に貧困線ギリギリの暮らしを送っていたと見られます。被災者のうち、約300万人が店員やレストラン従業員、乗合タクシー運転手などのサービス産業従事者であり、190万人が農林漁業、100万人が工業に従事していたと推定されています。
この2カ月間、ILOは被災地でフィリピン労働雇用省が緊急雇用計画によって2万人分以上の雇用を創出するのを手助けし、10万人以上の被災者に手を差し伸べて生活・労働条件の改善を支援してきましたが、「国内法に沿った最低賃金、しっかりとした労働安全、技能開発、社会的保護の確保など、安全なディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会提供に向けて、もっと多くのことを行う必要がある」とILOフィリピン国別事務所のローレンス・ジェフ・ジョンソン所長は説いています。被災地でも脆弱な就業形態にあった労働者らがディーセント・ワークを再建過程の優先事項の一つにすることを求めています。ILOは被災コミュニティーが安全や健康を危険にさらさずに再び生計を得られるよう確保することを主要な優先事項の一つに掲げ、緊急雇用計画に関与する労働者にマスクや手袋、長袖シャツなどの個人保護具が支給され、社会保障と健康保険が保障されることを確実にしています。
日本政府や国際海事使用者委員会(IMEC)に加え、最近ノルウェー政府からも320万ドルの資金援助を受けたILOは、緊急雇用、技能訓練、企業開発を通じて、労働雇用省や技術教育技能開発庁(TESDA)などの政府機関を支援し、サマール州ギウアン、レイテ州のタクロバン及びオリモック、セブ州北部、西ネグロス州、パラワン州コロン島、ボホール州で活動を展開しています。例えば、コロン島では観光リゾートの壁に使う竹ござを織る原材料を集める人員が緊急雇用計画を通じて採用されていますが、ILOは現在、地域社会の生産性向上とがれきの除去や修復、再建を越えた、より長期の生計維持を手助けしています。緊急雇用計画は生存者が力をつけるのを助けるだけでなく、大工や石工のような労働者または企業家として、家屋やコミュニティーを再建するための新たな技能を習得する機会を提供するものでもあります。また、生存者がディーセント・ワークの基準に合わない国内外の仕事に引き寄せられるのを予防する機能もあります。被災地を視察して復興過程の最前線に持続可能な生計手段を据える必要性を痛切に感じたジョンソン所長は、現在、被災者が再建を機に暮らしを改善できるよう、緊急雇用と持続可能な生計機会を創出する取り組みの強化に向けて追加的な資金援助の可能性を模索しています。
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以上はILOフィリピン国別事務所によるマニラ発英文記者発表の抄訳です。