ILO勧告の一部しか盛り込まれなかったカタールの労働者憲章/カタールはもっと決然とした行動が必要と主張するILO
公聴会模様動画 |
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2022年に開かれるサッカー・ワールドカップ会場の準備などを担当しているカタール引き渡し・遺産最高委員会は2月11日に、委員会が準備した労働者福祉基準(WWS)に係わるILOの役割に言及した記者発表を出しました。ILOは今年1月に最高委員会から求められて基準草案に対するコメントを提供しましたが、11日に発表された基準はザッと見た限り、使用者が労働者の旅券を手元に置くことや労働者から保証金を徴収することの禁止、賃金支払いの保護、そして労働時間に係わる幾つかの側面など、ILOのコメントの一部が考慮されているものの、とりわけ結社の自由や団体交渉などの就労に係わる基本的な権利及び原則に関するもの、最低賃金または生活給の採用などに関するコメントは反映されていないことが判明しました。ILOではカタールの労働問題に関し、政府との対話を続けています。
ブリュッセルにある欧州議会人権小委員会は2月13日にカタールの移民労働者の状況に焦点を当てて人権とスポーツに関する公聴会を開催しました。国際労働組合総連合(ITUC)、国際サッカー連盟(FIFA)、アムネスティ・インターナショナルなどと共にILOも招待を受け、ジルベール・ウングボ現地業務・パートナーシップ担当副事務局長がこの件に関して報告しました。副事務局長は、当局が示しているある程度の誠意は認めつつも、問題の諸側面の相互関連性及び相互依存性を指摘して、人の移動の統治、労働市場の統治、政策と規制枠組みの調和、国際労働基準の遵守に向けた公約などを含む様々な問題に同時に取り組む総合的な取り組みの必要性を強調して、当局の取捨選択的なやり方に警鐘を発し、もっと決然とした行動が必要、とカタール当局に呼びかけました。
2月11日に発表された労働者福祉基準について副事務局長は、「提起されている問題への取り組みにおいてある程度の進展を示すものかもしれないが」と断った上で、ILOにとって依然として残る二つの本質的な懸念事項を示しました。一つは、「最高委員会が講じるべき行動と政府に求められる行動の連結」であり、例えば、使用者による旅券保管や帰国妨害を禁止する最高委員会の提案も立法化されて取り締まる仕組みが導入されない限り実効性はないであろうと指摘しました。二つ目は、「労働者が報復の恐れなく声を上げられることの重要性」であり、倫理的な職業斡旋や健康と安全保障に関する新たな措置を導入しても、労働者が怖がらずに問題を表明できる手段を持たなければ効果はなく、監査の仕組みがあっても現実を反映しない報告書が出されるだけだろうと指摘しました。そして、こういった懸念事項への十分な配慮がない限り、ILOとしては、「これらの措置は全て、効果がないであろうと考える」として、カタール当局に向けて、ILOには現在の課題の克服に向けて全ての利害関係者と協働する用意があることに注意を喚起して、総合的な取り組みを行うことを改めて呼びかけました。
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以上は次の2点の英文記者発表の抄訳です。