G7諸国における責任ある企業行動を通じた働く女性の経済的エンパワーメントの促進

 欧州連合(EU)のパートナーシップ予算枠から資金拠出を受けたこのプロジェクトは、G7諸国の官民両部門で女性の経済的エンパワーメントを促進することによって持続可能で包摂的かつ公平な経済成長を支えることを目指しています。この協力の下で実施される活動の主な手引きは、ILOの「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」から提供されます。 

 日本を含むG7諸国は、女性はイノベーション(革新的取り組み)、成長、雇用のカギを握る推進要素であり、女性がより有意義に経済に参加できる環境形成においては民間セクターが決定的に重要な役割を演じていることを認め、この達成に向けた具体的な目標を設定しています。

 G7諸国は以下への投資を公約しています。

  • 女性の技能開発
  • 女性の労働力化、昇進、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の円滑化
  • 女性の起業家精神、女性がオーナーとなっている事業の成長と持続可能性への刺激
  • 国連の「女性のエンパワーメント諸原則(WEPs)」の採用と実施の加速化

 プロジェクトはG7諸国の官民両部門で女性のエンパワーメントを促進することによって持続可能で公平な経済成長を支えることを目指し、その方法として次の二つの道を通じた取り組みを行います。

コース1:G7諸国間の政策対話と知識管理
コース2:働く女性が直面している男女不平等の解消に向けた民間セクターの関与と「女性のエンパワーメント諸原則」の活用

 「女性のエンパワーメント諸原則」がプロジェクトの指導綱領となり、労働分野の手引きは国際労働基準とILOの「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」から導かれます。

プロジェクトの目的

 プロジェクトの全体的な目的は、G7諸国の官民両部門で女性の経済的エンパワーメントを促進することによって持続可能で包摂的かつ公平な経済成長を支えることです。このプロジェクトは女性の経済的エンパワーメントに関する国際的に合意されている諸原則と指針を促進し、幅広く普及させることが期待されます。具体的な目標は以下の二つです。

  1. G7諸国の官民両部門における対話と情報交換の円滑化
  2. 女性が仕事の世界で直面している男女不平等の解消に対する民間セクターの関与促進

期待される結果

 プロジェクトに期待される結果は以下の通りです。

  • 複数利害関係者の対話によってG7諸国全体を通じて女性の経済的エンパワーメントが進むこと
  • G7諸国を始めとした世界中の企業の情報交換・諸原則取り入れを刺激すること
  • 「女性のエンパワーメント諸原則」に現に賛同する及び賛同する可能性がある企業が諸原則に沿って性差に配慮した行動を計画し実行する能力の構築
  • 企業による自主的なモニタリングや報告の強化
  • 女性に経済機会が開かれること

知的成果物、刊行物、動画

 現在は英語版のみですが、一部について日本語版を準備中です。

働く女性のエンパワーメント例証実務シリーズ

 このシリーズは以下のようなテーマに焦点を当て、重要な指導原則の枠組みを示すと共に、G7諸国及びEU加盟国から集められた、就労に関わる男女平等の促進に関する仕事の世界の利害関係者の実際の活動や政策・ポリシーの実例を100件以上紹介しています。

  1. 指導的地位における女性の促進
  2. 就労に関わる非差別
  3. 同一価値労働同一賃金
  4. 仕事の世界における女性に対する暴力及びハラスメントの撲滅
  5. ワーク・ライフ・バランスや育児・介護といったケア政策/ポリシー
  6. ケア経済における働きがいのある人間らしい仕事

働く女性のエンパワーメント能力開発プラットフォーム

 ILO国際研修センターとの協力で開発されたこのプラットフォームは、男女平等促進と女性の経済的エンパワーメントに関する企業の能力を測定するWE-TEST、国際労働基準に基づいて男女賃金格差の縮小、ワーク・ライフ・バランスの達成、仕事の世界における女性に対する暴力とハラスメントの三つのテーマに関し、政策策定やポリシー立案に携わる方々向けと企業管理職向けの2種類各45分のオンライン研修モジュールで構成されているWE-MASTER、そしてさらなる資料の入手先や相談窓口であるWE-MENTORの三つの部門で構成されています。

働く女性のエンパワーメント動画シリーズ

 男女平等の事業上の根拠、ワーク・ライフ・バランスや同一価値労働同一賃金を促進し、性差に基づく暴力とハラスメントに終止符を打つために企業が取り得る具体的な行動を示し、働く女性のエンパワーメント能力開発プラットフォームへと誘う動画集が制作されています。

ワーク・ライフ・バランスをすべての人に達成

 この動画はワーク・ライフ・バランスの事業上の根拠、ケア責任の平等な分担を促進するために企業が取り得る具体的な行動を示しています。

ワーク・ライフ・バランスをすべての人に達成(英語・3分57秒)

 有償労働と個人の生活の調和は、介護、育児といった無償のケア労働の合計時間の76%を担う女性にとってはとりわけ大きな課題です。2020年は世界経済と仕事の世界に前代未聞の変化をもたらしました。より良いワーク・ライフ・バランスを達成し、ケア責任の平等な分担を可能にすることが今ほど重要になったことはありません。

 上手に設計されたワーク・ライフ・バランス政策は労使双方に利益をもたらします。職場における敬意、平等、信頼の文化を育み、労働者とその家族が個人としての責任と職業上の責任を調和させることを助け、労働者が働いている組織や企業にも利益をもたらします。正しいワーク・ライフ・バランス政策は人材を引き寄せ、定着させ、労働者に自分が評価されていると感じさせ、社会的福祉や情緒・精神的福祉の向上を通じて燃え尽きる危険性を減らす助けになり得ます。加えて、労働者の高い満足度は良い使用者としての企業の評判にプラスに寄与します。

 ILOの調査研究からは、男女平等と男女双方のワーク・ライフ・バランスを促進する企業文化は事業上の賢い根拠であることが示されています。家族に優しい就労取り決めを提供する企業や組織では主要な業績指標が向上します。

 企業及び組織は以下のような政策・方針をとることによって労働者を支えることができます。

  • 国内労働基準及び国際労働基準に沿ってあるいはそれを上回る母性保護を全ての女性に提供
  • 妊婦及びケア責任を担う労働者に対する非差別の徹底
  • 産前産後休暇、父親用の出産休暇、あらゆる種類の家族用の介護休業を含む有給家族休暇の付与
  • 休業後の職場復帰に対する支援
  • 質の高いケアサービスや解決策が得られる機会の提供
  • 家族に優しい就労取り決めの提供

 企業及び組織は国連の「女性のエンパワーメント諸原則(WEPs)」に賛同を示し、それを実施することによって違いをもたらすことができます。労働者及び労働者代表と協力することによって、国内法の遵守に加え、企業の方針や実務を国際労働基準及びILOの「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」に沿わせることができるでしょう。

 「働く女性のエンパワーメント能力開発プラットフォーム」を探求し、職場における男女平等の達成という旅におけるあなたの組織の現状を評価するためにWE-TESTを受け、WE-MASTERを用いてワーク・ライフ・バランスを育む方法を学んでみませんか。

 ワーク・ライフ・バランスに向けてスタートを切るのは今なのです。

公平な賃金で労働者と企業を評価

 この動画は同一価値労働同一賃金の事業上の根拠、同一報酬に向けた権利を育むために企業が取り得る具体的な行動を示しています。

公平な賃金で労働者と企業を評価(英語・5分4秒)

 女性の賃金は世界中で男性の賃金を2割は下回っています。この数十年間、男女賃金格差はそれほど大きく縮小してはいません。格差の原因は多様で複雑です。女性は同じ職業に就いている男性と教育水準が同じか上回っていても体系的に賃金が低くなっています。この他の要因としては、育児や介護といったケア責任、職域分離、組合組織率の低さなどを挙げることができます。賃金格差の多くはいまだに説明が付かず、差別、暗黙の偏見、社会的規範を反映しています。

 ケア労働のような女性が圧倒的に多い仕事は、伝統的に女性が自宅で無償で行ってきた仕事を反映しているため、しばしば過小評価されます。最も賃金が高い職業に女性は少なくなっています。子どものいる女性はいない女性よりも賃金が低くなる傾向があるという「母親賃金格差」さえ存在します。

 労働者の評価は人材を引き寄せ定着させる助けになり、業務成績や生産性を高めるため、男女賃金格差の縮小は事業上の根拠となり、使用者と労働者の両方に利益をもたらします。企業の成長と持続可能性の増大にも寄与します。

 同一価値労働同一賃金の原則は国際労働基準に掲げられています。同一報酬の権利は男女が同じあるいは類似の仕事を行う場合のみならず、違う仕事であっても技能や労働条件、責任、努力などの客観的基準に基づき、価値が等しい仕事を遂行する場合にも適用されます。

 企業は包括的な同一賃金方策を採用し実施することによって、企業の成功に対する労働者の貢献が等しく評価されることを確保することができます。以下のような場合、職場の方針と実務は性差を包摂したものと言えます。

  • トップによる公約とリーダーシップの確保
  • 団体交渉を含む社会対話の促進
  • あらゆる形態の差別の撤廃
  • 同一価値労働を定める堅固な方法論の包含
  • 賃金の透明性と報告申出の促進
  • 採用候補者を検討する際に賃金歴を請求する慣行の廃止
  • 定期的な賃金公平性点検の実施

 企業及び組織は国連の「女性のエンパワーメント諸原則(WEPs)」に賛同を示し、それを実施することによって違いをもたらすことができます。労働者及び労働者代表と協力することによって、国内法の遵守に加え、企業の方針や実務を国際労働基準及びILOの「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」に沿わせることができるでしょう。

 同一賃金国際連合(EPIC)に参加し、賃金の公平性を達成する方法に関する解決策や好事例を学んでみましょう。

 「働く女性のエンパワーメント能力開発プラットフォーム」を探求し、同一価値労働同一賃金の達成という旅におけるあなたの組織の現状を評価するためにWE-TESTを受け、WE-MASTERを用いて同一報酬の権利を育む方法を学んでみませんか。

 賃金の公平性に向けてスタートを切るのは今なのです。

仕事の世界における性差に基づく暴力とハラスメントに終止符を

 この動画は仕事の世界に性差に基づく暴力とハラスメントの居場所がない理由、安全で敬意に満ちた包摂的な職場を築くために企業が取り得る具体的な行動を示しています。

仕事の世界における性差に基づく暴力とハラスメントに終止符を(英語・5分5秒)

 仕事の世界における暴力とハラスメントは人々から尊厳を奪い、機会平等に対する脅威を表し、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)及び持続可能な企業の促進と相容れません。女性はこの影響を不均衡に大きく受けています。セクシュアル・ハラスメントを含む性差に基づく暴力とハラスメントは労働者の健康、福祉、職務の遂行に悪影響を与えます。職場の人間関係や評判、生産性にも悪い影響を与えます。

 今日の仕事の世界に性差に基づく暴力とハラスメントの居場所はありませんが、にもかかわらず幅広く存在し続けています。家庭内暴力もまた、労働者の健康と安全、雇用、生産性に影響を与える可能性があります。

 ILOの「2019年の暴力及びハラスメント条約(第190号)」とそれに付随する勧告(第206号)は、性差に基づく暴力とハラスメントを含む、暴力とハラスメントのない仕事の世界に対する一人ひとりの権利を認めています。この新しいILOの基準は仕事に関連した暴力とハラスメントの理解、防止、是正に向けた共通の行動の枠組みを定めています。

 企業は工場の現場から高位の役員の事務所に至るあらゆるレベルにおいて、敬意に満ちた包摂的で安全な職場環境を育む、「管理の水準に応じた幾つかの手段」を講じることができます。

 労働者団体のみならず、使用者も直接あるいは使用者団体を通じて、公共政策の形成を助け、ILO第190号条約の批准、実施を政府に求め、社会対話に参加することができます。個々の企業は広告宣伝やキャンペーンを通じて、性差に基づく暴力及びハラスメントに関する社会的規範や行動様式に影響を与えることができるでしょう。

 以下のような場合、企業の方針と実務は長足の前進を遂げると言えます。

  • 全く許容しないとの企業文化についての企業リーダーの公約表示
  • 暴力とハラスメントに関する明確な職場方針の採用、実施、モニタリング
  • 測定可能な目標を伴う防止プログラムの作成
  • 労働安全衛生の促進並びに暴力とハラスメント及び関連する心理社会的リスクを考慮に入れたそのマネジメント
  • 適宜アクセスしやすい形で手引き、研修、啓発活動を育むこと
  • 方針及び事業計画のモニタリングや、労働者が実効性のある報告・紛争解決の仕組みを利用できる機会も確保するモニタリング及び執行の仕組みの職場における実施
  • 仕事の世界における家庭内暴力の影響緩和

 企業及び組織は国連の「女性のエンパワーメント諸原則(WEPs)」に賛同を示し、それを実施することによって違いをもたらすことができます。労働者及び労働者代表と協力することによって、国内法の遵守に加え、企業の方針や実務をILOの「2019年の暴力及びハラスメント条約(第190号)」及び関連する勧告(第206号)並びにILOの「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」に沿わせることができるでしょう。

 「働く女性のエンパワーメント能力開発プラットフォーム」を探求し、暴力とハラスメントの防止・終結という旅におけるあなたの組織の現状を評価するためにWE-TESTを受け、WE-MASTERを用いて安全で敬意に満ちた包摂的な職場を育む方法を学んでみませんか。

 暴力とハラスメントのない仕事の世界に向けてスタートを切るのは今なのです。

仕事の世界における女性の経済的エンパワーメントを促進する政策・ポリシー、イニシアチブ、ツール

 本事業計画の最初に作成されたこれらの文書は、日本、カナダ、米国の政府及び労使団体が実施しているあるいはそれぞれに関係した女性の経済的エンパワーメントに関する法律、政策/ポリシー、イニシアチブを網羅的に列挙しています。

焦点を当てる地域

 このプロジェクトはカナダ、日本、米国で実施されます。