ILOによる鉱業部門における雇用創出と包摂的成長の促進のためのパートナーシップ・アプローチの支援(ザンビア)

ザンビアでは、鉱業部門は公式雇用の主要供給源の一つです。例えば、銅採掘業は海外から多くの投資を誘致し、この10年間力強く成長してきました。それにもかかわらず、間接雇用創出のための鉱業部門の潜在力はまだ十分に活用されていません。ILOは、ザンビア鉱業会議所、鉱業会社、そしてザンビアの政府、使用者団体、労働者団体とともに、雇用創出及び企業開発の拡大につながる対話の強化に取り組んでいます。また、鉱業部門の雇用創出能力の強化につながるよう、大手鉱業会社と現地中小企業のビジネス上のつながりを構築していくための新たな方法の特定に協力しています。

雇用創出:国の開発優先事項

鉱業は、ザンビア経済の重要な柱です。鉱業部門は、引き続き多くの外国直接投資(FDI)を誘致しており、2011年においてはザンビアに対するFDI総額の86.5%を占めています。2012年、公式雇用される鉱山労働者の数は9万人を超え、ザンビアの公式部門における労働者総数の8.3%、民間部門の労働者総数の25%を占めています。 2012年は、大手鉱業会社4社だけで56,300人が雇用され、その中の98~99%がザンビア国民でした。ザンビア鉱業協会によると、その労働者のうち、女性が占める割合は14%です。

これらの雇用は、鉱業部門における直接雇用を表しています。鉱業会社が創出した各雇用は、現地では2人から4人分の雇用をもたらすと一般的には推定されています。鉱業会社によって現地調達されるのは、その大半が高い技能を要しないサービス(清掃とケータリングのようなキャンプサービスなど)か、国外で製造され現地の会社が輸入した製品です。 ザンビアのビジネス環境における課題に加え、公共部門と民間部門が十分に連携できていないことから、依然、間接的雇用創出に鉱業部門の潜在力がまだ十分に活用されていません。このため、そうした雇用の創出は、国の開発優先事項であり続けています。

受入国の鉱山地域で活動する多国籍企業は、雇用創出及び企業開発にプラスの影響を与えるビジネス上のつながりを現地企業との間に構築していくことで、現地の経済にさらなる恩恵をもたらすことができます。この状況の中、ILOは、鉱業部門における利害関係者間の対話の促進、そしてザンビアで持続可能な開発のための2030アジェンダを達成するための包摂的成長の促進に積極的な役割を果たしています。

パートナーシップ・アプローチ

多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)の勧告内容を踏まえ、ILOは、ザンビアの鉱業部門においてより多くのより良い雇用の創出を促進するために二方向からのアプローチを実施し、対話の強化、労働条件の改善、そして大手鉱業会社と現地の中小企業間のビジネス上の連携促進のための方法を特定できるように協力しました。

一方で、ILOは、労使関係の強化のための鉱業部門三者パートナーシップ委員会(Tripartite Partnership Committee for the Mining Sector:TPCM)の設置を支援しました。この委員会は三者協議労働協議会の分科委員会として機能します。TPCMは21人の常務委員で構成され、鉱業部門における労使関係と労働法の遵守の強化策を実行する権限が与えられています。 この委員会設置によって、鉱業部門における健全な労使関係と国際労働基準を推進していく政府の能力が強化されます。それと同時に、特に職場での協力と団体交渉を通して、組合員の代表者として活動する労働組合の能力も強化されてきました。

2013年から、ILOは、同国の鉱業地域の雇用創出と企業開発を促進させて、その中で包摂的な社会的・経済的発展を加速させる効果的な方法を特定するため、ザンビア政府、鉱業会社と使用者団体及び労働者団体との間の協議を促進しています。

ILOは、対話プロセスとフォローアップを支援する目的で、他国における鉱業会社による現地経済発展への貢献事例について、調査を委託しました。調査では、受入国の工業地域で鉱業会社が現地調達を増やそうとした時に直面する主な制約と、鉱業会社からの調達依頼を受けた受入鉱業地域の中小企業が直面する障害を特定するための情報が収集されました。調査結果から、多くの多国籍企業が必要なサービスの規模と質に応えることのできる供給業者を見つける難しさという問題に直面していること、また、中小企業は資金不足とビジネススキルの欠如が深刻な活動の足かせとなって入札に参加できず、大手鉱業会社との取引を行えないことが分かりました。またILOの支援により、政府、使用者及び労働者の代表者が、鉱業会社の活動と、国家開発及び包摂的成長の優先課題とそれに必要な公共政策とを緊密に連携させた経験を持つ南米の鉱業国(チリ及びペルー)への視察を行いました。ILOは、間接的雇用も含めた雇用創出を促進するための政策には様々な選択肢があることを利害関係者に知らせるため、アフリカの採掘産業における包摂的なビジネス慣行についての政策文書も発表しました。

2013年11月に、政府機関(鉱山省及び労働省)、使用者団体及び労働者団体、鉱業会議所、鉱業会社、鉱業会社の本国の代表者(大使及び経済参事官)などが出席して行われたハイレベルでの三者対話の中で、調査結果と三者による視察旅行の報告書が発表されました。参加者は、部門内での対話の強化と、国の経済的・社会的発展に向けてザンビアの鉱業部門がさらに貢献するための主要要素である、能力開発とビジネス上のつながりの強化による雇用創出促進の必要性を確認しました。

今後の予定

ザンビアの鉱業部門は、部門内と現地経済の間接的雇用の双方において、強力な雇用創出源です。この能力を利用して間接的雇用を拡大するために、ILOはザンビアの社会的パートナーとともに、行動につながり、すべての関係者に恩恵がもたらされる対話の促進に取り組んできました。重要な取り組みの一環として、雇用創出能力を高めるような、大手鉱業会社と現地の中小企業間の連携を構築する新たな方法の特定に協力しました。この対話には、政府、使用者団体及び労働者団体、鉱業会社と国内外の開発機関が参加し、持続可能な開発のために多国籍企業との連携をどのように強化していくかについて、協議が行われました。
その結果、多国籍企業宣言の原則を実施するための短期行動計画が策定され、また、その潜在力を利用し、包摂的な雇用の拡大と企業開発を促進していくことを最終目標として、ザンビアで活動する多国籍企業の関与についての国内での対話継続を求める意見が示されました。

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