労働安全衛生 Q&A



労働安全衛生に関するQ&A

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Q1:我々は現在当社のための労働安全衛生マネジメントシステムを開発しています。注意が必要な要素や手続としてどのようなものがあるのでしょうか。

Q2:安全マスクの着用を困難にするあごひげ、安全ヘルメットの装着を妨げる頭部のかぶりものなど、個人保護具の装着を妨げる宗教上の信条についても会社は容認しなければならないのですか。

Q3:個人保護具の装着をしなかったことを理由に、2度目の警告を発することなく直ちに労働者を解雇することはできますか。

Q4:個人保護具を労働者に自費で購入させることは許されますか。

Q5:盗難を防止するため、夜間に労働者を社内に閉じ込めることは許されますか。

Q6:ILOとしては、労働安全衛生システムの主な要素は何であると考えますか。

Q7:労働者が発がん物質にさらされることを防ぐためのILOの指針として何かありますか。

Q8:ウラン鉱山に関する国際的な核燃料サプライヤーのために労働条件を設定する場合、どの国際労働基準を参照すべきでしょうか。

Q9:高層ビルの建設現場では安全管理監督者は何名必要ですか。

Q10:果物プランテーション労働者をヘビの事故から守る保護具について基準があるかどうか知りたいのですが。

Q11:レジ係や窓口係に椅子を提供することに関する要件は何ですか。

Q12:航空会社で働く人々(キャビンアテンダントや客室乗務員、パイロットなど)に適用されるILO規則や規定に関する情報が欲しいです。高い高度、放射線、気圧などを伴う職務のタイプに関連した規範があるのかどうか、またこの仕事において彼らが働く時間について適用される規範があるのかどうか知りたいです。

Q13:規則によると、内勤者が会社のビルにおいて与えられるべき最小スペースはどのくらいですか。どこでその規則を見つけることができますか。

Q14:70歳の男性がペルシャ湾内の、湿度が時には100%に達し、気温が30~40℃になる洋上で働くことは安全ですか。

Q15:農業労働者の労働リスク防止、及び保護と健康促進のための計画をどのように立てれば良いでしょうか。

Q16:うちの会社で働く労働者は4人1組のチームで作業し、90kgの袋を持ち上げて1人の肩の上に立てて乗せ、その労働者がそれを積み込む車両まで運びます。ILOの基準では1人の労働者が安全に扱える最大重量はどのくらいですか、また最大重量を定めたILOのガイドラインはありますか。

Q17:ILOの基準によると、社員8~12名程度の会社には安全衛生担当官が必要ですか、それとも防火責任者と応急手当を行う人がいれば十分ですか。

Q18:携帯型X線撮影装置は技術的に職場の医療検査に適していますか。それとも固定式のX線装置を使用すべきですか。

<企業レベルでの労働安全衛生管理システム>

Q1:我々は現在当社のための労働安全衛生マネジメントシステムを開発しています。注意が必要な要素や手続としてどのようなものがあるのでしょうか。


A1:職場における安全衛生は労使が分かち合うべき責任です。労働者が関連するリスクや個人保護具の使用を含めた安全対策を理解できるよう、使用者は労働者に対して安全に関する情報の提供や研修を行うべきです。一方、労働者は個人保護具の使用を含め安全対策を実践すべきです。経営者も労働者も予防の原則を最優先すべきです。

ILOは、以下の事項を効果的な労働安全衛生マネジメントシステムの要素として提唱しています[1]。

1. 労働者及びその代表と協議の上、会社の労働安全衛生施策を書面化すること:この施策は以下の要件を充たす必要があります。
  • 対象の組織に適し、その活動の規模と内容に合ったものであること
  • 簡潔明瞭に書かれており、使用者又は組織の最高責任者の署名又は認証があること
  • 各職場のあらゆる人に伝達され、利用可能であること
  • 継続的に状況に応じて見直しが加えられること
  • 適宜、外部の関係者も利用できるようにすること
2. 労働安全衛生施策は最低でも企業が約束する以下の主原則と目標を含む必要があります。
  • 労働関連の負傷、不健康、疾患、インシデントを予防することによって企業のすべての構成員の安全健康を守ること
  • 労働安全衛生に関する国内法令や規制、自主プログラム、労働協約及びその他企業が同意した条件に従うこと
  • 労働者及びその代表者と協議し、これらの者が労働安全衛生マネジメントシステムのすべての要素に積極的に関与できるようにすること
  • 労働安全衛生マネジメントシステムの運用を常に改善していくこと
3. 労働者の参加は効果的な労働安全衛生システムに不可欠な要素です。使用者は、労働者及びその安全衛生に関する代表者が、労働と関連した緊急対応を含む労働安全衛生のあらゆる要素について相談を受け、情報提供され、訓練を受けられるようにする必要があります。

使用者は労働者及びその健康と安全に関する代表者との間で、労働安全衛生マネジメントシステムの策定と計画、並びにその実施、評価、及び改善のための行動のプロセスに積極的に参加するための時間と資源を提供する取り決めを定めなければなりません。該当する場合、使用者は国内の安全衛生法令及び慣行に従い、安全衛生委員会が設置され、それが効率的に機能し、労働者の安全と健康に関する代表者が認知されるようにする必要があります。
企業レベルで施行される健康安全施策を有効なものにするためには、一貫して適用される必要があります。

[1] 「Guidelines on occupational safety and health management systems ILO-OSH(労働安全衛生マネジメントシステムガイドライン)」第3.1~3.2項

<個人保護具(PPE)>

Q2:安全マスクの着用を困難にするあごひげ、安全ヘルメットの装着を妨げる頭部のかぶりものなど、個人保護具の装着を妨げる宗教上の信条についても会社は容認しなければならないのですか。


A2:宗教による差別は、宗教的信仰の表現や宗教集団に所属することを理由にした差別を含みます。宗教的信仰を理由にした差別は認められるべきではありませんが、職場においては特定の宗教を実践する労働者の自由を制限することを要求する正当な根拠が存在する場合もあります。

宗教によっては、個人保護具(PPE)と相入れない特別な衣服の着用が義務付けられることがあります。そのような場合、職場において信仰・信条を実践する労働者の権利と、実質的な安全要件を満たす必要性とのバランスをとる必要があります。

企業は特定の宗教的慣習を受け入れるため合理的努力を払うべきです。その際、宗教的慣行の受け入れのための対策について、労働者、特にその代表者と協議すべきです。

国の使用者団体と労働者団体が個人保護具と地域の宗教慣行の受け入れについてさらなる提言や指導を行うこともあります。

Q3:個人保護具の装着をしなかったことを理由に、2度目の警告を発することなく直ちに労働者を解雇することはできますか。

A3:国内の法令又は慣行の下で、行為が繰り返し行われた場合のみ雇用終了が正当化される事由を理由とした労働者の解雇は、使用者が当該労働者に書面による適切な警告を与える場合を除き、なされるべきではありません [1]。従業員が安全衛生に関連した業務規則違反などの不当行為により有効に解雇されることはありますが、従業員が自分の義務、及び業務規則に違反した場合の結果を知らされるための手順を踏む必要があります。

保護具を着用しないことにより直ちに労働者を解雇することは、その企業が企業内での労働安全衛生を効果的に管理する方法を明確に理解していないことを表します。労働安全衛生に対する前向きな姿勢は、労働者とその家族の福利にとって、また企業にとっても生産性と持続可能性に関連して大きな利益をもたらします。優れた安全衛生は優れたビジネスを意味し、すべての関係者の関心事でなければなりません。

職場における安全衛生は労使共通の責任です。使用者は労働者に安全関連情報と訓練を提供し、関連するリスクと個人保護具の使用を含む安全対策の意味を労働者に理解させるようにしなければなりません。労働者の側は個人保護具の使用などの安全対策を取る必要があります。経営者も労働者も予防の原則を最優先すべきです[2]。

労働者の参加も労働安全衛生マネジメントシステムに不可欠な要素です。使用者は、労働者及びその安全と健康に関する代表者が、労働と関連した緊急対応を含む労働安全衛生のあらゆる要素について相談を受け、情報提供され、訓練を受けられるようにする必要があります。使用者は労働者及びその安全衛生に関する代表者との間で、労働安全衛生マネジメントシステムの策定と計画、並びにその実施、評価、及び改善のための行動のプロセスに積極的に参加するための時間と資源を提供する取り決めを定めなければなりません。該当する場合、使用者は国内の安全衛生法令及び慣行に従い、安全衛生委員会が設置されて効率的に機能し、労働者の安全衛生に関する代表者が認知されるようにする必要があります。

有効かつ適切な労働安全衛生マネジメントシステム開発において企業をサポートするため、国内の使用者団体と労働者団体がさらなる提言や指導を行うこともあります。

[1]1982年の雇用終了勧告(第166号)第7項
[2]2006年の職業上の安全及び健康促進枠組条約(第187号)及び2006年の職業上の安全及び健康促進枠組勧告(第197号)の採択における議論では、「すべての使用者及び労働者は、明確な権利、責任、及び義務に関する制度を通じて、安全かつ健康的な作業環境の確保に積極的に貢献し、並びに予防の原則を最優先しなければならない」と強調されました。

Q4:個人保護具を労働者に自費で購入させることは許されますか。


A4:企業は国家的要求に従った最高の水準の安全衛生を維持することが求められます[1]。

重要な第一歩は、企業内で安全かつ健康的な作業環境についての権利が尊重され、使用者及び労働者が安全かつ健康的な作業環境の確保に積極的に貢献する予防の文化を促進することです[2]。施策では、作業環境におけるその存在が不可避な危険の原因を、合理的かつ実行可能である限り最小にすることにより、事故や健康障害を防止することを最優先すべきです[3]。

予防のためには適切な防護服と保護具も重要です。そのような装備が必要な場合[4]は無料で[5]労働者に支給するべきです。

労働者とその代表者は、安全対策について十分な情報と適切な訓練を提供される必要があります[6]。

[1]多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)第44項
[2]2006年の職業上の安全及び健康促進枠組条約(第187号)第1条(d)
[3]1981年の職業上の安全及び健康に関する条約(第155号)第4条第2項
[4]第155号条約第16条(3)
[5]第155号条約第21条
[6]第155号条約第19条(c)及び(d)、第170号条約第15条

<労働者の閉じ込め>

Q5:盗難を防止するため、夜間に労働者を社内に閉じ込めることは許されますか。


A5:労働者を企業内に閉じ込めることはできません。ILOは職場での閉じ込めについて、断固として容認できない姿勢をとることを主張しています[1]。

さらに、工場内に労働者を閉じ込めることは明らかに労働安全衛生の原則に反しています。事故が起きた場合は、人身傷害を理由とする民事責任が発生する可能性があります。また労働者を工場に閉じ込めれば国内法上、不法監禁として刑事犯罪又は民事不法行為に当たるおそれもあります。
企業がその資産を保護するための措置を講じることは正当ですが、別の手段を模索すべきです。

国内の労使団体から、効果的な代替手段について有用な提言を得られることもあります。

[1]「Combating forced labour: A handbook for employers and business」ILO(2015年)第6章


<労働安全衛生の予防の文化>

Q6:ILOとしては、労働安全衛生システムの主な要素は何であると考えますか。

A6:企業は国家的要求に沿った最高の水準の安全衛生を維持することが求められます [1]。

重要な要素の1つは、企業内で安全かつ健康的な作業環境に対する権利が尊重され、使用者と労働者が安全かつ健康的な作業環境の確保に積極的に貢献する予防の文化を促進することです[2]。

施策では、作業環境におけるその存在が不可避な危険の原因を、合理的かつ実行可能である限り最小にすることにより、事故や健康障害を防止することを最優先すべきです[3]。

企業の管理下にある化学的、物理的、及び生物学的物質及び因子について、保護のための適当な措置を採り、労働者の健康に対する危険を与除去しなければなりません。機械、装置、工程などは安全でありかつ健康に対する危険がないものである必要があります[4]。

適切な防護服や保護具も予防のためには重要です。そのような装備が必要な場合は[5]無料で[6] 労働者に支給するべきです。

機械、装置、労働時間、作業編成及び作業工程を労働者の身体的及び精神的な能力に適合させる努力も必要です[7]。適合させるときにはジェンダーによる相違も考慮すべきです。妊娠中又は授乳中の女性には、母子のいずれの健康にも害を与える可能性のある作業を要求してはなりません[8]。

緊急事態及び事故に対処するための措置も用意すべきであり、適切な応急手当の措置もこれに含まれます[9]。

企業は危険事象、労働災害及び職業病を記録し通知する手順を定め、適用する必要があります。企業は産業上の安全及び健康の危害の要因を調査し、結果として得られた改善策を企業内で適用する際に主導的役割を果たすべきです[10]。

労働者は、その代表者を含め、危害の予防において重要な役割を担っており[11]、経営者側と労働者との協力が不可欠です[12]。企業は社内における労働者の代表に対し、当該地域での活動に関係のある安全衛生基準に関する情報を提供しなければなりません。新しい生産品及び工程に関係する特別な危害及びこれに関係する保護措置についても周知する必要があります[13]。労働者とその代表者には、安全対策について十分な情報と適当な訓練を提供しなければなりません[14]。

労働者又はその代表者は、企業の秘密を漏らさないことを条件として、かかる情報について労働者団体と協議することを認められる必要があります。また経営者が合意すれば、技術顧問を外部から招くことも認められます[15]。

労働者が合理的な理由に基づいて急迫した重大な危険があると信じる状態がある場合、これを直ちに直接の監督者に報告すべきです。労働者は、使用者が生命又は健康に対し急迫した重大な危険を排除するため必要な是正措置をとるまで、仕事に戻ることを拒否する権利を有します[16]。

適当な場合には、安全衛生に関する事項は、労働者代表との協約の中に組み入れることが奨励されます[17]。

2以上の企業が同一の作業場において同時に活動に従事する場合には、危害が最小化するようにするため、互いに協力する必要があります[18]。

国内レベルでは、企業は安全及び衛生について権限ある機関、労働者代表及び使用者団体、並びに確立された安全及び衛生に関する組織と十分に協力する必要があります[19]。

国際レベルでは、企業は安全及び衛生に関する国際基準の準備及び採択に関して協力する必要があります[20]。


[1]ILO多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)第44項
[2]2006年の職業上の安全及び健康促進枠組条約(第187号)第1条(d)
[3]1981年の職業上の安全及び健康に関する条約(第155号)第4条第2項
[4]第155号条約第16条第1項
[5]第155号条約第16条第3項
[6]第155号条約第21条
[7]第155号条約第5条(b)
[8]2000年の母性保護条約(第183号)第3条
[9]第155号条約第18条
[10]多国籍企業宣言第44項
[11]第155号条約第19条(a)及び(b)
[12]第155号条約第20条、第170号条約第16条
[13]多国籍企業宣言第44項
[14]第155号条約第19条(c)及び(d)、第170号条約第15条
[15]第155号条約第19条(c)及び(e)
[16]第155号条約第19条(f)
[17]多国籍企業宣言第46項
[18]第155号条約第17 条
[19]多国籍企業宣言第46項
[20]多国籍企業宣言第45項

<危険物質への曝露>

Q7:労働者が発がん物質にさらされることを防ぐためのILOの指針として何かありますか。

A7:化学物質に関する特別の対策として、その物質が何であるか分かるように、仕事で使用されるすべての化学物質に標章を付すこととされています[1]。有害な化学物質については、それらの物質の分類、それらの物質の有する有害性及び遵守されるべき安全上の予防措置を労働者が容易に理解できるように、ラベルを付すべきです[2]。化学物質の情報資料も労働者及びその代表者が利用できるようにしておく必要があります[3]。

経営者は、労働者が権限のある機関又は同機関により認可若しくは承認された団体が国内基準及び国際規準に従って定めた曝露の限界、又は作業環境の評価若しくは管理のための他の曝露の基準を超えて化学物質にさらされないことを確保しなければなりません。

また経営者は労働者の有害な化学物質への曝露を評価し、労働者の曝露を監視及び記録する義務を負います。この記録は労働者及びその代表者が利用できるようにする必要があります[4]。企業は適当な期間に記録を保存及び維持するための適当な制度を確立する必要があります[5]。

企業はがん原性物質及びがん原性因子に関して特別な措置をとり、そのような物質を非がん原性物質若しくは非がん原性因子又は有害性の一層低い物質若しくは因子で代替させるようにあらゆる努力を払わなければなりません[6]。また石綿の防止及び管理のため特別な措置をとる必要があります[7]。

曝露を受ける労働者の人数、及び曝露の期間及び程度は、安全と両立し得る最小限まで減少させる必要があります[8]。さらに、がん原性物質又はがん原性因子にさらされた労働者、又はさらされるおそれのある労働者に対し、そのもたらす危険及びとられるべき措置に関するあらゆる関連情報が提供されなければなりません[9]。

労働者は雇用期間中及び必要であればそれ以後も、健康診断や生物学的検査その他の検査又は調査を受け、曝露の程度を評価し、労働災害に関連した健康状態を監視される必要があります[10]。適格な医学的助言が推奨する場合、当該労働者を曝露を伴う作業から除外し[11]、代わりの雇用、又は所得を維持する他の手段を提供する必要があります[12]。

健康を害する可能性のある物質、因子、又は工程への曝露などの危険な業務を行うことのできる最低年齢は18歳です[13]。

[1]第170号条約第7条第1項
[2]第170号条約第7条第2項
[3]第170号条約第10条第1項
[4]第170号条約第12条
[5]1974年の職業がん条約(第139号)第3条
[6]第139号条約第2条第1項
[7]1986年の石綿条約(第162号)第3条
[8]第139号条約、第2条第2項
[9]同上、第4条
[10]同上、第5条
[11]1960年の放射線からの保護に関する条約(第115号)第14条
[12]第115号条約脚注20、一般的意見(1992年)第32項、第162号条約第21条第3項
[13]1999年の最悪の形態の児童労働勧告(第190号)II第3項(d)

<ウランによる被ばくの保護>

Q8:ウラン鉱山に関する国際的な核燃料サプライヤーのために労働条件を設定する場合、どの国際労働基準を参照すべきでしょうか。

A8:好ましい慣行の詳細な手引きとしてはBSS(電離放射線に対する保護及び放射線源の安全のための国際基本安全基準 )を参考にすることができます。BSSは1996年に発表され、ILO(国際労働機関)、FAO(食糧農業機関)、IAEA(国際原子力機関)、OECD/NEA(経済協力開発機構原子力機関)、PAHO(全米保健機構)、及び WHO(世界保健機関)が共同で提供しています。BSSにはウラン鉱山と核燃料サプライヤーに関する特別な要件が定められています。

BSSでは、放射線からの保護に関する条約(第115号)及び放射線防護勧告(第114号)を補完し、これに基づいて促進される調和のとれた放射線防護基準のための世界標準を提供しています。またBSSはIAEA安全基準の一部でもあり、IAEAはその放射線保護インフラ向上に関する技術協力モデルプロジェクトを通じ、この基準を100か国以上で促進しています。

加盟国がBSSの要件を適用できるようにするため、IAEAとILOはウラン鉱山に適用できる以下の安全指針及びその他の手引きを作成しました。これによりさらに詳細な安全基準を提供できます。
  • 鉱山における職業被ばく保護と原材料の加工:安全指針、安全基準シリーズNo.RS-G-1.6(ウィーン、2004)。IAEAとILOの共同提供
  • 職業被ばく保護:安全指針、安全基準シリーズNo.RS-G-1.1(ウィーン、1999)。IAEAとILOの共同提供
  • 放射性核種摂取による職業被ばくの評価:安全指針、安全基準シリーズNo.RS-G-1.2(ウィーン、1999)。IAEAとILOの共同提供
  • 外部放射線源による職業被ばくの評価:安全指針、安全基準シリーズNo.RS-G-1.3(ウィーン、1999)。IAEAとILOの共同提供

<建設現場での安全管理監督者>

Q9:高層ビルの建設現場では安全管理監督者は何名必要ですか。

A9:使用者は「労働者が安全衛生に対する相応の配慮のもとで労働できるようにするだけの監督を行う」ことが奨励されています[1]。

安全管理監督者の人数の規定はありません。人数は単なる一要素に過ぎないからです。監督者の適性、及び明確な責任と権限を与えることも同様に重要な役割を持ちます。

その規模に関わらず、すべての建設会社は安全担当役員を任命する必要があります。これは適切な資格を持つ(1人又は複数の)人物で、主な責任は安全衛生の促進です[2]。

さらに、建設の安全のためには明確な責任を持つ一次レベルの監督者(「現場監督」などと呼ばれます)が欠かせません。彼らは自分が監督する労働者集団の安全を担っており、現場では少なくとも関係する各企業がこのような監督者を置く必要があります。監督者は以下を確保する責任を負います[3]:

  • 労働条件と設備が安全であること
  • 職場の安全が定期的に点検されていること
  • 労働者が行う予定の作業について十分訓練を受けていること
  • 職場の安全対策が実施されていること
  • 利用可能な資源と能力を用いて最良の解決策が採用されること
  • 必要な個人保護具があり、使用されていること
監督者には現場の管理担当者による直接のサポートが必要です[4]。監督者は各作業の安全な遂行のため、適切な訓練並びに十分な知識、経験、及び技能等に関して適切な資格を有することが必要です[5]。

2人以上の使用者が同一の建設現場で同時に活動を行う場合、建設現場での活動の全体を実際上管理し若しくはそれについての主要な責任を有する主要な請負業者は、所定の安全及び健康のための措置を調整する責任及びその措置の遵守を確保する責任を負います。主要な請負業者が現場にいない場合、調整及び遵守確保のために権限のある者を指名する必要があります(全体的な安全監督者又はコーディネーター)。ただし各使用者には依然として、自らの管轄下にある労働者について、定められた安全対策の適用の責任があります。現場で同時に活動するすべての使用者又は自営労働者は協力する義務を負います[6]。

よりおおまかな意味で「監督者」とみなすことができるもう1つのグループは、労働者及び労働組合により、その代表として任命される労働安全衛生代表者です。労働者の安全衛生代表者がいるときには職場がより安全であることが繰り返し証明されています。その役割の大きさは強調されすぎることはありません[7]。安全な建設現場には定期的検査と是正策が必要です。労働者を訓練することにより、仕事にどのようなリスクがあるか、またどうすればそれを克服できるかを理解させることができます。労働者は仕事をするための安全な方法を示される必要があります[8]。使用者は労働者と経営者側の代表による委員会を設置するか、国内法令に基づく他の適切な仕組みを作ることにより、労働者が安全な労働条件の確保に参加できるようにする必要があります[9]。

要約すると、高層ビル建設現場のように複数の請負業者が同時に活動する現場では、全体的な安全コーディネーター又は監督者がいなければならないということです。個々の請負業者は、コーディネーターの監督のもとで、自らの支配下にある労働者と下請業者の安全と健康について責任を負います。その責任には、情報提供、訓練、安全講習(主要な請負業者が行わない場合)などが含まれます。現場では全体のコーディネーター、主要な請負業者、及びその他の請負業者の間で双方向の調整を行う必要があります。現場で他の安全監督者が必要かどうかは、多くの条件によって決まります。
  • 作業現場の規模と複雑さ
  • 現場で活動する他の会社の数(そのすべて又は一部が、現場に常駐するか、又は他の現場も担当する場合には常時滞在はしない人物として自前の安全監督者を持つ可能性がある)
  • リスク評価(これが行われたと仮定して)により何が必要とされるか(例:リスク評価により特定のエリア及び時間に安全監督者の存在が必要とされる可能性)
  • 個々の企業の監督者(現場監督)の存在とその適格性
  • 安全文化の存在とその発達の程度
  • 労働組合の安全代表者の関与の程度
国の使用者団体と労働者団体も、建設現場での安全要件に関連した国内の法令、労働協約等に関するきわめて重要な情報源です。

[1]「ILO Code of Practice on Safety and Health in Construction(建設業の安全衛生に関する実務規程)」(1992年)セクション2.2.7.
[2]「ILO Safety, health and welfare on construction sites: A training manual(建設現場における安全衛生と福祉:訓練マニュアル)」(1995年)セクション2.2.1
[3]訓練マニュアル、セクション2.2.2
[4]訓練マニュアル、セクション2.2.2
[5]1988年の建設業における安全健康条約(第167号)第2条(f)
[6]第167号条約第8条
[7]「The role of worker representation and consultation in managing health and safety in the construction industry」19~23頁の経験的証拠についての検討を参照
[8]訓練マニュアル、セクション2.2.2
[9]実務規程、セクション2.2.3

Q10:果物プランテーション労働者をヘビの事故から守る保護具について基準があるかどうか知りたいのですが。

A10:ILO農業安全衛生実務規程(英語)には農業労働者の個人保護具に関する指針があります。ヘビにかまれることに対する具体的防止策については触れていませんが、作業中は脛当てと膝当てのついた滑らない長靴や安全靴を着用することを推奨しています。プランテーションの医療サービスでは、有毒で地域に多く生息するヘビやクモなどに対する解毒剤を用意する必要があります。

より一般的な指針は2001年の農業における安全健康条約(第184号)と2001年の農業における安全健康勧告(第192号)に見られ、野生動物や有毒生物との接触に対する予防策を含め、農業における予防対策に対する総合的なアプローチが示されています。

Q11:レジ係や窓口係に椅子を提供することに関する要件は何ですか。


A11:1964年の衛生(商業及び事務所)条約(第120号)は、労働者には十分かつ適切な椅子を供給すべきであり、労働者はそれを使用する合理的機会を与えられるべきであると定めています。

Q12:航空会社で働く人々(キャビンアテンダントや客室乗務員、パイロットなど)に適用されるILO規則や規定に関する情報が欲しいです。高い高度、放射線、気圧などを伴う職務のタイプに関連した規範があるのかどうか、またこの仕事において彼らが働く時間について適用される規範があるのかどうか知りたいです。


A12:1960年の放射線からの保護に関する条約(第115号)及び1960年の放射線防護勧告(第114号)では、健康と安全の観点から、すべての労働者が電離放射線から効果的に保護されるための適切な対策が定められています。

1964年の業務災害給付条約(付表Iは1980年に改正)(第121号)、及び「ILO職業病の一覧(2010年改定)(英語)」も客室乗務員やパイロットの保護に適用されます。

1987年に刊行された「労働者の放射線(電離放射線)からの防護(英語)」では、客室乗務員やパイロットを含め、労働者が職場で電離放射線にさらされるあらゆる活動に関する指針を提供しています。

さらに詳細な情報は、国連食糧農業機関(FAO)、国際原子力機関(IAEA)、ILO、経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)、全米保健機構(PAHO)、及び 世界保健機関(WHO)が共同で提供した「放射線に対する防護及び放射線源の安全:国際基本安全基準‐暫定版」に示されています。

Q13:規則によると、内勤者が会社のビルにおいて与えられるべき最小スペースはどのくらいですか。どこでその規則を見つけることができますか。


A13:1964年の衛生(商業及び事務所)勧告(第120号)は第VII章において、労働スペースを以下のように定めています。

26. (1) すべての作業場の設置及び作業部署の配置は、労働者の健康に有害な影響を及ぼさないようにすべきである。

(2) 各労働者は、健康に対する危険なしに作業を行なうことができるように、妨害物のない十分な広さの作業区域を有すべきである。

27. 権限のある機関は、次のものを定めるものとする。
(a) 周囲を囲まれた建物の中で常時労働する各労働者に対してその建物内で割り当てられる床面積

(b) 周囲を囲まれた建物の中で常時労働する各労働者に対してその建物内で割り当てられる最低限度の気積

(c) 作業が常時行なわれることとなる周囲を囲まれた新築の建物の最低限度の高さ

Q14:70歳の男性がペルシャ湾内の、湿度が時には100%に達し、気温が30~40℃になる洋上で働くことは安全ですか。


A14:国際労働基準の安全衛生規定における2つの一般原則は、1) 作業環境に固有の危害を合理的に実行可能な範囲で最小化すること、そして2) 作業を労働者の身体的及び精神的能力に適合させることです。高齢労働者が特別な配慮を必要とするのであれば、それを提供する必要があります。

Q15:農業労働者の労働リスク防止、及び保護と健康促進のための計画をどのように立てれば良いでしょうか。


A15:農業における安全と健康に関する主な国際労働規範は2001年の農業における安全健康条約(第184号)と2001年の農業における安全健康勧告(第192号)です。新たな農業安全健康実務規程(英語)もあります。

Q16:うちの会社で働く労働者は4人1組のチームで作業し、90kgの袋を持ち上げて1人の肩の上に立てて乗せ、その労働者がそれを積み込む車両まで運びます。ILOの基準では1人の労働者が安全に扱える最大重量はどのくらいですか、また最大重量を定めたILOのガイドラインはありますか。

A16:労働者が自分の健康や安全を損なう可能性のある人力による荷物の運搬に従事することを要求され、又は認められてはなりません。成人男性について認められる最大重量は55kgであり、若年者と女性はこれよりかなり少なくなります(最大重量条約(第127号)及び最大重量勧告(第128号)第14項を参照)。企業はできる限り適切な技術的手段を用いることが奨励されます(条約第6条)。

農業の安全と健康に関する実務規程にはさらなる指針が示されています。重い物体(重量23kgを超えるもの)を1分間に3回を超える割合で2時間を超えて扱う(持ち上げる、運ぶ、及び据える)労働者は、物体の重量、作業の方法、頻度、時間、その他直射日光のもとや、発電機、エアコンプレッサ、内燃機関などの熱源の近くで働くなどの環境的影響との組み合わせにより、腰部損傷、全身疲労、熱中症などを経験するリスクがあります。荷物の運搬による個々の労働者の健康影響評価では、重量だけでなく、初期動力と持続力、持ち上げる物体と体との距離(矢上面)、持ち上げる位置の差(床から指の関節までの高さ、指の関節から肩までの高さ等)、作業の頻度、労働者の性別などの要因も考慮されます(第9.2.1.5項及び第9.2.2.1項を参照)。

国際人間工学連合とILOは農業における人間工学上のチェックポイントを公表し、重い物体の運搬に関する指針を提供しています(チェックポイント7を参照)。荷物の持ち上げと運搬における最大重量も参照してください(ILO OSHシリーズNo.59)。


Q17:ILOの基準によると、社員8~12名程度の会社には安全衛生担当官が必要ですか、それとも防火責任者と応急手当を行う人がいれば十分ですか。


A17:安全衛生に関する国際労働基準の原則はこの質問には直接対応していません。しかし有用と思われるいくつかの指針は提供されています。

原則では、「国内法及び国内慣行に従って、職場の段階において、安全及び健康に関する政策の策定、安全及び健康に関する共同委員会の設置並びに職業上の安全及び健康に関する労働者代表の指定」を奨励しています。2006年の職業上の安全及び健康促進枠組勧告(第197号)第5項(f)を参照してください。

実際には、多くの国で安全衛生委員会設置要件が課せられる境目となる従業員数が具体的に決められています(通常は20名)。小規模の職場(従業員5~19名)について、予防を中心とした労働安全衛生の基本的知識を持つ安全担当代表者の任命を義務付けている国もあります。

重要な点は、危害の識別、リスク評価、並びに安全プログラムを作成及び実施する効果的システムを確保するため適切な訓練を受けた人物を置くことです。特に労働安全衛生リスクの防止に関係するあらゆる要素について十分な訓練を受けた人物であることが必要です。また原則では、従業員の人数に関係なく、企業レベルでの対話と協力の重要性も強調されています。ILO-OSH労働安全衛生マネジメントシステム・ガイドライン(2001)を参照してください。

Q18:携帯型X線撮影装置は技術的に職場の医療検査に適していますか。それとも固定式のX線装置を使用すべきですか。


A18:各国の権限ある当局により、胸部X線検査及び医療用に使用できるX線装置のタイプが定められています。いくつかの国では、このような検査にデジタルX線撮影装置(DR)とコンピューターX線撮影装置(CR)のいずれも使用することができます。携帯型機器に国の管轄当局から胸部X線検査に適していると認定されたDR装置がついている場合には、医療機関における固定式X線撮影装置による胸部X線検査(CR又はDR)に加え、そのような機器も使用することができます。

医学用語の定義とデジタルX線撮影に関する情報については「ILOじん肺X線写真国際分類使用のガイドライン(2011年版)」第6章をご覧ください。