産業別会議

たばこ産業におけるディーセント・ワークの欠如に対処する総合戦略の実行及びさらなる展開に関する意見交換の促進技術会議

 世界全体で6,830億ドルの市場規模を示すたばこ産業は、タバコの葉の栽培と加工、たばこ製品の製造と関連する家内産業、そして最後に流通と販売といったバリューチェーン(価値連鎖)で成り立っています。タバコはアジア、米州、アフリカを中心に124カ国で生産され、世界全体で約6,000万人がタバコの栽培、葉の加工に関与しています。タバコの栽培は労働集約的であり、多くの農作物がそうであるように栽培作業のほとんどに危険が伴います。タバコ栽培農家は家族経営の小自作農が大半を占め、いまだに多くの国で脆弱な社会集団に属することが多い何百万もの人々の生計を守る安全弁として機能しています。タバコ栽培農家や労働者の貧困率は高く、タバコ栽培コミュニティーではこれが主たる経済活動である場合が多く、簡単に代替できる作物は存在しません。世界全体で1億5,200万人と推定される児童労働者の7割以上が農業で見られ、タバコ栽培に関するデータはないものの、貧しいコミュニティーでは無償の家族労働を中心に児童労働が多いことが調査から判明しています。

 ILOはタバコ栽培コミュニティーやたばこ産業と長い関わりの歴史があり、90年代後半から米国労働省や、たばこ会社を資金源とするスイス内務省監督下の非営利財団である「タバコ栽培における児童労働撤廃財団(ECLT)」、欧州委員会の資金協力、JT(日本たばこ産業株式会社)インターナショナル社との官民パートナーシップ事業を通じて、ケニアやインドネシア、ザンビア、ブラジルなどのタバコ栽培地域における児童労働問題に対する取り組みを支援してきました。

 2013年に国連事務総長によって設けられ、世界保健機関(WHO)の下に置かれている「非感染性疾患の予防と管理に関する国際連合機関間タスクフォース(UNIATF)」が2016年10月に、たばこ産業の介入を防止するモデル政策の採用を検討するよう国連諸機関に呼びかけたことを受けて、ILOも2017年から理事会でたばこ産業との関係について検討を始めました。日本も受諾するWHOのたばこ規制枠組み条約に沿ってまとめられたこのモデル政策は、「たばこ産業の商業的その他の既得権益からたばこの管理を保護する取り組みが、国連システム全体を通じて一貫性があり、包括的で実効性があるよう確保する」ことを目的としており、たばこ産業との実際のパートナーシップもしくはパートナーシップと見られるものを一切避け、相互作用を制限することを目指す、拘束力のない措置の例の一覧を示しています。2017年6月に国連経済社会理事会で承認されたこのモデル政策は、「たばこ産業との関係は国連システムの目的、基本原則、価値に反する」との前提に立って、すべての国連機関に向けて「自らの高潔さと評判を保ち、開発を促進するに当たり、一体となって活動し、自らの活動とたばこ産業の活動の一貫した実効的な分離を確保すること」を呼びかけています。

 しかし、たばこ産業からの資金受け取りを即座に停止すると、支援している多くの共同体に深刻な害が及び、関係する児童の最善の利益にならないことは明白なように見えるため、理事会は、現在進行中の児童労働撤廃に向けた取り組みを短期的に通常予算補足勘定その他の公的資金を用いて継続し、適切な防御措置を備えた上で、官民両部門の様々な持続可能な資金源の動員努力を続けることを決めました。その上で、就労に関わる基本的な原則と権利の侵害、劣悪な労働安全衛生水準、低賃金、労働者のスキルアップと就労能力促進の必要性といった、たばこ産業におけるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の欠如に対処する総合的な戦略を実施することとし、直接影響を受ける関係者の参加を得て、戦略の策定とさらなる実施に関する意見交換を促進する政労使三者構成の会議を開くことを事務局長に指示しました。

 このような背景の下で開かれるこの会議には、マラウイ、タンザニア、ウガンダ、ザンビアといった直接影響を受ける国の政府とたばこ産業の労使代表各8人が出席し、事務局が2019年10~11月の第337回理事会に費用計算とスケジュール案を添えて改めて提出する総合戦略の基礎となる話し合いを行います。2019~22年を期間とする総合戦略は、1)タバコ栽培国におけるディーセント・ワークを可能にする政策環境の促進、2)社会対話の強化、3)タバコ栽培コミュニティーによる児童労働などのディーセント・ワークの欠如に対する取り組み及び代替的な生計手段への移行の支援の三つの柱で構成されていますが、会議ではこれに関連し、効果的であった介入策やさらなる必要事項、経済多角化を促進する事例研究、事業計画の整合性や施策の有効性を確保する方法など幅広い事項に関する話し合いが行われる予定です。


詳しくは会議のウェブサイト(英語)へ---->
たばこ産業におけるディーセント・ワークの欠如に対処する総合戦略の実行及びさらなる展開に関する意見交換の促進技術会議